8.高嶺の花と爺さんと
よろしくお願いします!!
初めてボルクと訓練してから二週間がたった。
あれからも二人は二日に一回程のペースで訓練をおこなっている。
戦歴は今のところ6対2でボルクが勝ち越している。初戦闘の後、ボルクは遠距離からの攻撃と風魔法を使った速さで戦うスタイルに変えたため、ロムは一気に4連敗した。
しかしここ最近は戦闘にもなれてきて、新たな戦略などを使いつつボルクに善戦できるようになり、2勝目をもぎとった。
「今日も第三ホールいくか?あんちゃん。」
「いや、今日は地研に行くんだ。」
「そりゃまたなんで?」
「測定してまた、新しいのならいに行くんだよ。」
「何を習うんですか?」
ロムはボルクとは全く別の声が聞こえたためガバッと振り返った。そこには天使が舞い降りていた。マリィだ。
いつも下ろしている髪の毛を今日は低めのサイドテールにしている。
シュシュもちゃんと彼女のきれいな黒髪を引き立たせ、さらに美しいものへと昇華させている。
(その髪飾りよ、誉めて使わすぞ!!)
そんな馬鹿なことを考える。
「はい。新しい魔法を学びに行こうと思いまして。」
「そうだ、マリィさんも一緒に来るかい?あんちゃんもその方が嬉しいだろ!」
(うおぉ!たまにはやるじゃないか!!あとでなんかおごってやるよ!!)
(マジか!じゃあ肉な!)
(高いのなしで!!)
「そうですか?じゃあ、私もついていっていいですか?」
「本当ですか!?いつも誘っても生徒会が忙しそうなので、今回もダメかと……」
「はい。今日はたまたま休みだったので、いつものお詫びに遊びに誘おうかと思ったんです。」
(なに!?だったらデートだったと言うことか!?)
ロムは絶望した顔になる。そしてボルクに耳打ちでささやく。
「おごりなし。」
「そうなると思ったぜ、ちくしょう。」
そして二人はマリィの方に向きなおす。
「俺たちは行く準備できてますが、大丈夫ですか?」
「はいっ!」
「じゃあ行きましょうか。」
本館から別館への渡り廊下を歩いているとき彼らは思い出した。
地研の部屋の汚さを。
足の踏み場はほとんどなく、人間の方が石よりも形見の狭い屈辱を。
(おい!やべぇんじゃねぇか!?)
(どうにかしておれらのどちらかが先に行った方が言いと思うぜ!)
(そうだな!じゃあボルクたのむ!)
(俺かよ!?)
(そりゃそうだろ!?お前がいなければもともと二人でデートだったんだからな!)
(でもそもそも俺は地研じゃねぇぞ!)
(ほとんど入ってるようなもんだろ!?)
(いーや、ちがうな、あんちゃん。これはあんちゃんが掃除していなかったからだぜ!)
(あー!そんなこと言っていいのか!?)
(なんだよ!?なんかあんのか!?)
(貸し作っといてやるよ!)
(別に何かあるわけじゃねぇのか!!)
「あのぉ、お二人とも先ほどからどうしたんですか?」
「「えっ!?なんでもないっすよ!!」」
「そうですか?でも、そろそろですねっ。私楽しみです!」
「「あ、あははぁ」」
(もうしょうがねぇ、諦めようぜ。)
(くっ、ここまでか)
ここで地研のドアの前に到着する。いつも道理の寂れた雰囲気がぷんぷんしている。
「じゃあ開けますね。」
ガラッ
「おっ、来たかお前さんたち…、とおめぇマリィか?」
「おじいちゃん!!」
そう声をあげながらマリィはロービヒの方へ走っていく。
「「お、おじいちゃん!?!?」」
「昔、マリィさんの家で魔法について家庭教師として教えていたと。」
「そんで8年前に先生がここに来たってことか。」
マリィとロービヒの話を何とか噛み砕いて頭で処理していく。
ここで繋がっているとは思っていなかった二人は、驚いて最初は思考を放棄するほどであった。
「おじいちゃん、また部屋汚くしてる!何にも変わってないじゃない!」
家庭教師の頃は住み込みだったようで、その頃から部屋はこの状態だったとのことだ。
「まぁまぁ、ここはわしの城なんじゃよ。怒らんでくれよ」
「もう~、おじいちゃんったら」
頬をプクーっと膨らまして腰に手の甲を当てる。腰から上半身を少し前に倒し、怒ってますよ~といった雰囲気をだす。
(か、可愛すぎる!?天使がだめよっ!めっ!と言っているようだ。はぁ、俺も怒られたいぜ)
「よし、それじゃあ測るぞロムよ。」
「はい!先生!」
ビシッと返事をして、ロービヒの前に進み出る。
「ホントにおじいちゃんが、先生やってるんだね。私驚いちゃったよ。」
「そうっすよね。」
「ロム君はいつもここで魔法について学んでいるの?」
「そうですね、あんちゃんは、ここと訓練ホールを行き来してますね。」
「へぇ~、訓練ホール行ってるんだね。地魔法だと戦闘も難しいんじゃない?」
「そう思うじゃないっすか。あんちゃんの地魔法は強いっすよ。」
「そうなの?」
「はい。ここ最近だと俺と五分五分になってきたところですね。」
「え!?すごい!ボルク君は学年でも上位に入っているって言われてるじゃない?」
「そうなんすか!?いやぁ、過大評価っすね。」
「そうでもないと思うけど。」
そこに測定を終えたロムが帰ってくる。
「なんの話してんだ?」
「あんちゃんの地魔法はすごいって話だよ。」
「私もみてみたくなったよ!」
「そ、そう?えへへぇ。」
(あんちゃん!)
「おっと。あ、そういえば、マリィさんの適正はなんなんですか?」
「私?私は水と光」
「「「光!?」」」
ロービヒも共にそこで驚く。
光属性とは、初代アーブ国王の妻であった王妃がもっていたと言う、特殊魔法である。
特殊魔法をもっていると、ほとんど将来は約束されたも同然で、なにもしなくても生きていけるとさえ言われているのだ。
「そうだったんですね。」
「うん、でも、あんまり周りには言ってないの。おじいちゃんとロム君とボルク君だったら大丈夫かなって。」
「マリィ、国からは何て報せが来とるんじゃ?」
(そうだ!光属性何てもっていたらマリィさんは王族のお嫁さんにされて俺との結婚がなくなってしまうではないか!?)
「どうなんですか!?マリィさん!!」
「あっ、うん。国からはなんともないよ。私のお父様が、今の国王の友達だったみたいでね。私には恋愛させてあげたいっていうお母様の意向で国王様に進言してくださったんですって。」
(えっ!?マリィさんのお父さんって偉い人なの!?)
「なんじゃ、知らんかったとでも言いたそうな顔をしおって、マリィは公爵家次女、マリィ·シュールトじゃよ。」
「こ、公爵家!?!?」
「なんだい、あんちゃん知らないで友達やってたんかい?」
「そうなんですか?」
「知らなかったよ!!なんだよ。僕だけ知らなかったのか。」
「大丈夫ですよ。それに今まで通りに接してくれた方が、私は嬉しいです。」
「あ、そうですか?」
「はいっ!」
(かわいいぃぃぃいいい!!)
「ほれ、坊主。測定の結果じゃ。」
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