6.憎きイケメンゆるさんぞぉぉ!
よろしくお願いします!
「うむ、石をどこまで定義するかについてなんじゃが、ちょっと待っておれ。」
そう言い、ロービヒは積み上げられた石や岩の中から二つの石を持ってくる。一つは黒く、もう一つは白いものだ。
「ほれ、この二つはボルクならなんと呼ぶ?」
「黒い石と白い石?」
「そうじゃの。わしもなにも知らなかったらそう呼ぶであろうな。まず、黒い石は川原でとってきたものじゃ。そして白い方は、山じゃな。」
「なるほど。別のものだと言うことを言いたいんすか?」
そうボルクが答えると、ロービヒは笑顔になる。
「そうじゃ。見ておれよ。」
そう言ってロービヒは二つの石を別の手元にあった大きな石で叩き割った。
ガシャン!!
部屋中に響き渡るほどの音で割れた。
「見てみなさい。」
ボルクとロムはそれに応じて身をのりだし砕けた石を見る。
「黒い方は断面がきれいだ。白い方はバラバラに砕けてるっすね!」
「そうじゃ。色だけではなくこの二つの石には割れかたにも違いがある。であると言うことは、固さにも違いがあるじゃろ?」
「はい。」
「でもどちらもわしらは石として定義しておる。」
「なるほど……」
ボルクはそう言うと少し思案する。その様子を見てロムとロービヒは面白そうにボルクを見る。
二人はボルクに石の面白さについて知ってほしいのだ。
「でも、これくらいなら別に関係ないのでは?」
ここでかかった!とでもいいたそうにロムが乗り出す。
「そうだ!だけどな!鉱石だって宝石だって石じゃねぇのか?」
「そんなむちゃくちゃな。」
ボルクはそんなことはないといったようにロムの言葉をあしらう。
それは当然である。それを言い出したらこの世のほとんどのものが石と呼べるではないか。
しかし、ここでロービヒが口を開く。
「わしもな、最初はそう思っていたのじゃ。だが、こんなこともできるようになったぞ。」
そう言いながら彼は集中していく。
周りの空気が張りつめたように感じられた。
自信の感じたこともないほどの威圧感を二人は知った。
これがこの学校で地魔法を専門とする魔法使いなのだと。
「ほいっ!」
その掛け声で赤く透明な小さな石がでてきた。
それは、貴族の女性がつけるような高価な宝石のようであった。
「なっ!?」
「すげぇぇえ!」
「ほっほっほ、わしくらいになればこれくらいできるようになるわい。」
「先生!俺にもできますか!?」
ロムは興奮しながら叫ぶ。
ロムは目の前に夢があるかのようにはしゃいでいるので、もう周りが見えていない。
「おちつけ、おちつけ。これができるようになるためには、それ相応の知識、イメージする力、魔力の量も出力も、操作する力もそなたじゃ足りんよ。」
たしなめるようにロービヒは言う。
「くっそぉぉ!強くなりてぇ!」
「まずは石などに関する知識、そして魔力の量を増やすことじゃな。」
「どうやったら増えるんすか!?」
「とにかく使うことじゃよ。そうすれば自然ともろもろがついてくるの。まぁでも、今のお主でも使えそうな石を見繕ってやるかの。」
そう言うと席を立ちまた、山の方へ歩いていった。
それに興奮するロムと驚いたまま赤い石を見つめていたボルクもついていく。
彼の魔力でも作ることのできるものを3つ現物とその説明書受け取ったロムは軽い足取りで地研をでていった。
そして、地魔法の汎用性の片鱗を見せられたボルクは、自分も頑張んないとと、自身を鼓舞しながら部活に向かうのであった。
「あっ!マリィさん!!」
ロムは、地研からの帰り道、下駄箱でマリィを見つけたため、走って近づいていく。
彼が犬であれば超速で尻尾を振り回していただろう。
近くまで来ると彼女の後ろに別の人影が見えた。
「ロム君、部活の帰り?」
マリィはとても自然に話を始めた。
(ロム君だってぇぇ、えへぇへぇぇえ)
ここにボルクがいたのなら顔が溶けていると言いながら突っ込んだであろう。
「いやぁ、地魔法研究室の帰りなんだ!」
「そっか、ロム君は部活じゃなくて研究室なんだったね!」
「そうそう!」
(いいぞ!いい感じに話せている!!ここで週末遊びに行きませんか?何て聞いてやれば押しに弱いマリィさんなら承諾を得られるはず!)
「あの、今週末遊びに行き―」
「マリィ」
ここで先ほどの人影の正体を知ることとなった。
「ベリル君、あっ、紹介するね。こちらはロム君。それで、こちらがベリル君ね!」
マリィがロムとベリルにお互いの紹介をした。
しかし、その時の二人の態度は正反対で、方や余裕のあるベリルと方やグルルと唸るように睨み付けるロムである。
しかし、ロムの態度をなにも気にしないかのようにフランクに笑顔を向けてくるベリルが口を開く。
「よろしくね」
それに対してなにも返さないのもマリィに失礼だと思ったロムは
「夜露死苦ぅぅ!」
と返す。
それを見てベリルは腹を抱えて笑った。
マリィは二人を見てもう打ち解けたのかと勘違いして笑顔で二人を見守る。
バカにされて笑われているのだと思ったロムはキッとベリルをにらむ。
そして、先ほど切られた話に戻すようにロムはマリィの方に向きなおす。
「今週末、遊びにいきませんか?」
満面の笑みで誘いを受けたため断りずらそうに言う。
「今週末は生徒会の仕事があって…」
ここで今までの満面の笑みは、待てをされて耐えたのにも関わらず、ご飯を持ち越しにされた犬のような顔に変わった。
それでも、何とかして動揺を隠そうと明るく振る舞う。彼にはそれしかできなかった。
「あ!そうなんだねっ!いいよいいよ、気にしないで!頑張ってね!」
そう言いながらこれぞ負け犬いったように走ってその場から去った。
「あっ、なんか悪いことしたかな?」
「どうだろうね?今度マリィから誘ってみたら?」
「うーん、そうしようかな。」
ベリルいいやつなんよ本当は。
比喩に犬を盛り込んでみました。
今回だけですけどね~