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4.地魔法研究室へ行こう!!

よろしくお願いします

二人は別館を歩いていた。


教室が多くある本館とは違い別館では先生たちの研究室や、執務室、訓練ホールなどのさまざまな実践施設がある。


本館と変わらずきれいではあるのだが、先生たちの実験のせいか、所々に傷や、すすのついたあと、えぐれてる部分などロムを怖がらせるには十分な要素満載の建物であった。


地研は三階の一番奥の部屋であった。


「なんか地研だけ暗いな。」


呟いたのはロムだったが、それに全面的に同意したようにボルクはうなずいた。


他の研究室は人が多くいて生徒と先生が談笑しているのが見てとれた。それに比べ地研は外からだと誰もいないような雰囲気さえあるのだ。


しかし、入らない訳にもいかないロムはドアをノックするが返答はない。誰かいれば何かしらの反応があるはずだが、それさえもないのである。


不思議に感じた二人は、恐る恐るドアを開けていく。


「あの~、誰か、いますかぁぁ。」


こういうときなぜだか声が小さくなる。いつもは豪快なボルクでさえ縮こまっていた。


ドアを開けるとそこはごみの山とでも呼ぶべきだろうか。石や砂、岩石などがそこらじゅうに散乱していた。


触っていいのだろうかと思案する二人はとりあえずそれらを避けてなかに入っていくことにする。


なぜかほとんどスパイごっこである。







「こりゃいねぇかもな。」


なかで探したが、誰もいないため、しびれを切らしたボルクがそう漏らした。また、いないということについて、ロムも同意見だったためうなずく。


「そうだな。一回でるか。」


そのときだった。岩石やら石やらが山のように連なる部屋の左角が、ごろっと音を立てて崩れた。


すると、中から70くらいの爺さんだがでてきた。身長は145くらいで猫背。白くなった髪と髭がほとんど連なっており、獅子のようなたてがみ状になっていた。顔はしわくちゃで、服もいつから着替えてないんだといった様子である。


「なんじゃ、お主たちは。」


でてきた老人に驚きすぎて声がでない二人はさながら箸が箸立てにおかれたように二本の棒と化した。


その様子を見て彼は、ほっほ、と笑いながら


「まさかここに来るやつがおるとはのう。」


と、髭を触りながら呟いた。


その後すぐに状況を理解した二人は、ここの現状について矢継ぎ早に質問をする。


しかし、爺さんはそれを華麗に無視して部屋のおくに二人を招き入れた。









そこは石やら砂やらの山のおくに小さなスペースがあり、ここで三人は腰を落ち着けて話し始めた。


「わしはロービヒだ。もうここ10年ここでけんきゅうしておるの。」


最初に彼が自己紹介を始めた。それに続いて二人も慌てて返す。


「あっ!自分ロムといいます!」


「俺はボルクです!」


二人の焦ったような姿に若さをみたロービヒは、しわくちゃの顔にさらに皺を増やしわらった。


「そうかいそうかい、それで二人は見たところ新入生のようだが、地研に入りたいのかい?最近だと地属性は人気がないから人が減っておるんだけどの。」


それに対してボルクは


「自分は違います!ロムの案内で来ました!」


それを聞いたロービヒは、ロムを見て子供かいなと、笑った。


そこから、地研でどんな研究をしているのかや、入ったらどんな生活になるのかについて話した。









「それじゃあ、この地研では、ほとんど自由ということですか?」


話を聞くと、ここでは何かしないといけないとかの決まりはなく、自由にここの施設を使っていいそうだ。


「そうじゃの。」


この返答はロムにとってはいいものだった。彼は何かに縛られたくないし、強制されるのも好きではない。そのため、この環境は彼にぴったりだと考えたのだ。


「どうだ?ここにすんのか?あんちゃん。」


「そうだな。ロービヒ先生。ここに入らせてください!」


「いいぞぉ」


ハキハキとした受け答えにロービヒは満足したようでさらっと受け入れてもらえた。


そこから、ロービヒにロムが強くなりたい等のことを伝えると、


「強いといっても様々じゃが、どうなりたいんじゃ?」


「好きな人を守れるくらい強く!」


「恋か!淡いのぉ!そうかそうか。それで、ボルクよ、こやつの好きな娘はどんな娘なんじゃ?」


「学園の高嶺の花っすかね?」


「おうおう!夢見とるじゃないかロム!ほっほっ」


「別にいいでしょうが!」


「わしも昔はなぁ…」


「何年前の話ですか!?」


「ざっと60年くらいかのぅ。わしも夢見ておってなぁ。」


「それでどうしたんですか!?」


ロムは自分と似た境遇ならなにかヒントになるのではとくいぎみに聞く。


「猛烈にアタックしたわ!」


「それで!?」


「その頃モテモテじゃったわしの友達と結婚したわ」


それを聞いてやっぱり顔か、顔なのかと、落胆するが、


「じゃが、お主ならなんかあるかもしれんの。」


「え!?なにか見込みがあるんですか!?隠れた才能的な!」


「いや、それはないの。」


「なんだよぉ…」


「頑張れよ、ロム。お主は面白そうじゃからな。」


「ボルクと同じこと言うじゃないですか!!」


それを聞いてボルクとロービヒは二人でニヤニヤとロムを見た。


「あんちゃんそんな感じしますよね!先生!」


「うむ!お主良い友を持ったの。これで学園生活は笑って過ごせるじゃろうな。」


「やっぱそうっすよね!」


「ほめてんの!?けなしてんの!?」










そして30分程話をして、帰り際ロービヒが、話を本筋に戻すようにして口を開いた。


「うむ、強くなりたいのならば地の属性についてよく知るべきじゃな。わしもまだまだだが、地の属性は他のものよりも奥が深いものだと思っておるよ。」


そう言いながら、地と、大きくかかれた分厚い本を渡された。厚さは10センチにとどくかくらいあり生半可な気持ちでは読みきれるとは思えないようなものだった。


それを見て、ボルクはまじか、と呟き、ロムの方を見ると目に炎が宿ったような表情であった。


「気が向いたらこの本を読んでみなさい。何かプラスになると思うぞ。」


曖昧な言葉で濁したが、ロムにとっては、強くなるための第一歩であったため、必ず読んでやろうと心にきめた。


「はい!ありがとうございます!」


「うむ、気持ちいいのぉ。若いもんの威勢のいい声は。」


そう言いながら髭を触り、ほっほっほ、と笑う。


それを見てボルクはこれで一件落着かと思い、肩をすくめながら安堵する。また、ロムはこれからの地研での生活に思いを巡らせながら本を愛おしそうに見つめていた。



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