3.授業一日目
よろしくお願いします
聞いて驚け!!!
我が姫、マリィさんはこの俺と同じ3組だったのだ!
しかし、この前友達になるという許可をもらったとはいえ、同じクラスなのに声が未だにかけられていないのである。なぜかって?
(イケメンと他の女共が姫のまわりをかこんでいるのだぁぁぁああああ!!!!くそがぁあ!!!)
心のなかでいくら叫んだところでなにも変わらないのが現実である。
(今俺が何をしているかって?当然机に突っ伏してますとも!えぇ!?それが何か?インキャですよ!不細工ですよ!しょうがないだろぉお!!)
(しかもあのイケメン、噂によると相当なエリート貴族で、魔法も既にお手のもの。それでいて先代剣聖の息子だってさ!!なんだよそれ!ずるじゃん。女の子まわりにたくさんいんのに我が姫までも毒牙にかける気か貴様ぁ!)
「どうしたあんちゃん、寝不足か?」
「なんだ、ボルクか。」
ボルクが、ロムの背よっかかりながら話しかけてくる。
(お、重い)
そしてボルクが一方的に話すのを受け流しながら、マリィをみつめる。
そして、ロムの視線の先に気づいたのか、にやにやしながら彼を見てくる。
そして背中を指先でチョンチョンしながら
「あんちゃんまさか、マリィさんかい?」
ロムはばれたのが恥ずかしいだけでなく、普通にうっとうしいため手でボルクを振り払う。
そしてもう一度突っ伏し直す。
「うるせぇよ。別にいいだろ!?」
「なんだよ、そんな好きなのかい。でもそろそ……」
そこからは彼の声はロムには聞こえなくなっていた。
視線の先にはまわりに女子や、イケメンの取り巻きに囲まれた彼女の姿がある。
茶色一色の教室の中にいてもなお、クラスの空気を爽やかなものに変えてしまうのは彼女の美貌だけではなく、愛嬌によるものでもあるのだろう。
どれ程時間がたっただろうか。彼はか
バシィ!!
「いってぇ!!」
ロムは休み時間が終わってもなお突っ伏していたため、教師が来て、教科書で頭を叩かれたのだ。
「だらけるのが早いなぁ?ロム?」
教師に睨まれ、蛇に睨まれる蛙のごとく固まり、ちじこまった。
後ろからボルクのクスクスとした笑い声がする。
「あんちゃん、やっぱおもしれぇわ」
「起こせよ!」
後ろを振り向きながらボルクに文句を言いつける。ちなみにボルクはロムの後ろの席であった。
バシィ!!
「っっくぅぅ!!」
「静かにしろ!」
教師の目はガチであった。
次はない、という目の意思を細かく察知し前に向き直る。
すると教師は教壇の前に戻っていった。
「全員昨日の測定に参加したと思うが、あれは始まりにすぎん。あそこから毎年延びるやつもいれば、なにもせずに全く延びないやつもいる。この学校で学ぶ全てを身に付け、糧にし、強くなれ。これから世のため国のため、いや、そんな大それたものでなくてもいい。いずれできる愛するもののためでも、家族のためでもいい。守れるようになりなさい。親に守られる時代はもうあなたたちには戻って来ない。しっかり理解するのはまだ先だと思うが、かんがえておくように。」
「ではまず、今日は魔力の使い方、操作について教えていく。」
そう言って教師、こと、これからロムの担任となるエナ·ミールは魔法の授業を始めたのだった。
「なぁ、魔力扱えるようになったか?」
一日の授業が終わり、クラスの全員が帰る準備をするなか、ボルクは鞄に教科書などを詰め込んだようで、リュック型の鞄を背にしょってロムの前まで歩いてきた。
「まだまだだな。ありゃ難しいわ」
「だよなぁ、こっから一週間は魔法についてだけ授業やるらしいから、形になるといいけどな。」
「でもそのぶん皺寄せが来るらしいぜ。」
うへぇっと、ロムは嫌そうな顔をして机にもたれ掛かる。
この学校では、最初に魔法の基礎の魔力の扱いを教えることにより、生徒による魔法の事故を、なるべくださないようにしているのだ。
そんな他愛のない話をしていると、なにか気づいたようにボルクが話しかけてくる。
「そういや、あんちゃんはなんの部活に入るんだ?」
「部活か、決めてないな。そう言うボルクはどうなんだ?」
答えるとすぐに待ってましたっ!とばかりに胸を張り答える。
「俺は単騎格闘術研究部だ!」
「なんだそれは?名前なげぇな」
「んー、なんかタイマンの闘い方の研究してるらしいぜ。ほら、俺ってばたっぱと力だけはあるからよ!そんでもって魔法の測定の結果がどっかから漏れたらしくてな。先輩からスカウトされちまった!」
(なるほどな、やっぱり自分にあったところの方がいいのだろうか?)
「なるほど、詳しいのか?部活について」
「人並みだと思うけどな。あんちゃんは知らなすぎだぜ!」
「別に興味なかったんだって。で、俺に合うやつ見繕ってくんね?」
「保護者じゃねぇか!はぁ、でもそれなら部活じゃなくて地研にいけば?」
「なんだよそれ。」
ロムは聞いたこともない言葉に疑問を呈する。
「4属性の専門の先生が学校に常駐してるだろ?それの、地の先生が持ってる研究室だ。」
「なんで学校終わってからも先生といなきゃなんねぇんだよ!」
「でも、あんちゃんは地の魔法で成り上がりてぇんだろ?」
(そうだ、忘れていた!俺はマリィさんのために強くなるんだ!!)
そう思いながら決心したような顔でボルクの方をバシバシ叩く。
「そうだ!俺はそこにいくぞボルク!案内しろや!!」
「全部俺任せかい、あんちゃんは…」
とほほ、といった顔でため息をつく。
その反応に、ふっ、と笑みをこぼし自分も帰る準備ができたと、ボルクに目配せをする。
「じゃあいくか。」
「おう!」
そうして二人で教室をでようとすると、出入口では、また、マリィが囲まれていた。その中にはやはりあのイケメンもいる。
「そういえばベリルも生徒会に入るらしいぜ。」
「誰だその嫌な感じの名前は。」
(嫌な予感がする。)
「あの取り巻きの中心でマリィさんと話してるやつだよ。」
「なぁんだとぉぉおお!?」
「剣聖の息子だからってのはあると思うけどな。だが、あの二人は絵になるなぁ。」
そう言って腕をくみながらうなずく。
(くっ、このままではあのずる男に先を越されてしまう!!)
彼の心は焦りで満ちていた。
そう思ってすぐボルクの方に振り向きながら、
「俺ちょっと身削ってくるわ。」
いってる言葉と言い方がちぐはぐなロムに、何をいっているのかわからないボルクはポカンとしている。
そしてそのままロムはその集団に単騎で突撃したのである。
(陽キャとリア充という、俺にとって宿敵といってもいい存在!このままではいられない!!例えこの身が砕けようとも、心は挫けんぞぉぉおおお!!)
「お、おい!あんちゃん!」
ボルクの心配はむなしく、ロムの体は集団の端から反発を受けて教室の端まで飛んでいく。
「あんちゃぁぁああん!!!」
目を真ん丸に見開きながら、何が起こったか理解できないといった表情で、ロムの飛んでいったところまで駆け寄る。
「大丈夫か?」
「さすがに一筋縄ではいかないか、リア充共め!だが、俺は諦めないぞ!」
瞳孔をギラギラに開きながら集団を見るロムを見て、ボルクは一気に笑った。
「ははははっ!あんちゃん、やっぱりおもしれぇな!よっしゃ!俺に任せろ!」
そう言うと、彼は腕を捲りながら集団に歩いていく。
それはさながら一人で魔王城に立ち向かう勇者のように。
「おっ、おい!!」
(なにか秘策でもあるのか!?さすが、俺の学校生活最初の友達だぜ!)
そうして、期待した目でボルクの進軍を見守る。
すると、俺は力では負けないゼェぇええ!と、集団の中に入り込んでいく。
「まさか力でいくのか!?いや、だが、あいつなら!」
すると、ロムではたどり着けなかった集団の中心近くまでいったかと思うと、牙を剥いたように取り巻きの女子の猛攻を一斉に浴びる。
「ぐはぁぁぁあ!」
集団リンチである。
「しねぇ!でかいの!」
「邪魔だぁ!でかいの!」
「くせぇぞ!でかいの!」
「「「「マリィさんのために!!!!」」」」
「くっ、女って強ぇのな……」
ボロボロになって帰ってきたボルクを見て、
「これは近づくためにも作戦が必要だな」