2.魔法力を測定するぞ!!
よろしくお願いします
二日目、ついに体力、魔法力測定の時間がやってきた。
まず、体力測定は、基礎体力である瞬発力、持久力、腕力、背筋力、握力などの測定を行う。
そして二つ目は魔法力の測定である。
魔法力とは、魔法に関する事項をまとめた総称である。
魔力容量
一個人が蓄えることのできる最大の容量。これが多ければ多いほど、持久戦や、戦争などにおいて有利に働く。
魔力出力
一度に出すことのできる魔力の最大量。いかに上記の魔力容量が多くても、出すことのできる出力が小さければ有効打にはなりづらい。一般的に出力が大きい魔法が強い魔法とされている。
魔法速度
魔法を出す速度。魔法はイメージを明確に固めることにより発動するが、これは速度に個人差がある。これが速いと、一対一のときに有利に働く。しかし、これはある程度魔法が使えないと測定できないため、今回は測定されない。
魔法適正
適正のある魔法の属性を測定する。魔法の属性は、火 水 風 地 の4種に加え、概念的な魔法属性もある。例えると、初代アーブ国王の魔法属性は重力制御魔法であった。基本4種の魔法属性は誰でも使うことができるが、概念魔法は適正のあるものしか使うことができない。また、基本4種についても、適正がないと習得が適正のあるものと比べて成長しづらいといわれている。
「俺はどうなるかな~」
ロムは生まれてから一度も魔法力を測定したことがないため自分でもどうなるかわからないのだ。
普通、子供の頃から魔法力を測るのは貴族のみであるからだ。
そして、この学校では、貴族と平民が分け隔てなく在籍するため、人によって測定にたいして考えることは違うのである。
「お、あんた測ったことねぇのか?」
後ろから話しかけられ振り向くと、身長175近くある男がそこにいた。ちなみに、ロムは160である。14歳近くだとロムは平均だ。
「おう。俺は騎士爵の家だからな。大貴族様たちとは違って測ったことないな。」
「そうなのか、俺もなんだよ!」
そう大男が言うとバシバシと、ロムの肩を叩く。
「痛って!ちからつぇぇ!」
「おっ、悪い悪い!ははっ!」
大男はガハハと笑う。
「俺はボルクっつーんだ!よろしくな!」
「あ、あぁ、よろしく」
ロムは肩を抱え、猫背になりながら、少し嫌な目をして答える。
「俺はロムだ。」
「ロムか!いい名前だなっ!」
(はぁ、マリィさんと同じ台詞なのに全く心に響かないぜ)
「それでっ、なんの属性がいいなとかあんのか?あんちゃん?」
ロムの呼び方はアンちゃんで決まったらしい。
そして、別に魔法について考えていなかったロムは、属性についても考えていなかった。
「ねぇな」
「おいおい!夢がねぇぜ!もっとこう俺が最強になる的なのねぇのか?」
「なったらどうなんだよ?何かいいことあんのか?」
話すのも億劫そうに答えるロムに、
「強かったら好きな女の子とか振り向いてくれるかもよ?あっ、でも、あんちゃんそういうのなさそうだな!ははっ!」
(す、好きな女の子が振り向いてくれるだとっ!?マリィさんもやっぱり強い男に引かれるんだろうか!?こうしてはいられない!)
「強い魔法の属性ってなんなんだ!?」
「おっ、あんちゃん好きな女でもいんのかいな?」
「今は答えん!早く教えろ!!」
ロムは一回りもでかいボルクにたいしてぐんぐんと詰め寄っていく。
その形相はさながら鬼のようだ。さすがのボルクも、少し引いている。
「おっ、おう。そこまで言うなら教えてやんよ。まず攻撃面で言うと火だな。火は魔法としてもそうだが、剣にまとわせたり腕や足にまとわせて使うと強さがあがるんだ。でもそのぶん相当な魔力の出力が必要だけどな。」
「なるほど、才能にものを言わせるタイプと言うことか。」
「そういうこった。機動力でいったら風だな。風は攻撃にも使えるが、どちらかと言うと牽制に使う魔法だな。あとは火と同様体にまとわせることで追い風にしたり、相手に風をおくって相手の機動力をおとしたりもできるな。これは火よりも使い勝手がいいから、適正がなくても覚えて損はしないと思うぞ。」
ボルクは腕を組み、目を閉じながら、うんうんとうなずいている。
「あいわかった。他のはどうなんだ?」
「サポートに水だな。回復や相手の足場崩し。遠征にいったときに水が出せるのも大きい。あとは相手のかおにぶつけて息止めさせるとか、そんな感じだ。」
「今までで一番汎用性が高いということか。」
「その通り!ひとつのグループに一人はほしい人材だな。」
「なるほどな。あんまり食いっぱぐれなそうだ。」
ロムは、水に適正があったら戦わずにすむのでは?と少し魅力を感じた。
「地はどうなんだ?」
「これは学生には微妙だな。まずひとつの要因として形にするのが難しい。相当な魔力の操作技術が必要だ。他の属性は単に出したり、まとわせたりという単純だが、こいつは地形を歪ませたりするのに魔力も多く消費する。だが、戦争時は、一夜城とかを、作る時役に立つから、地になったら戦争行きも考えるかな?俺は」
ロムは地にだけはならないでほしいなと心で呟いた。
「戦争なんてまっぴらごめんだな。俺は水がいいな。」
「あんちゃん水かい?だったらパーティー一緒に組まねぇか?」
それにたいしてロムは笑いながら言葉を返した。
「まだ、測定もしてねぇよ!」
「次の人~」
「おっしゃ、俺だ。あんちゃん先行ってくんぜ」
ニカッと真っ白な歯を見せながらボルクは測定をしているお姉さんのところに歩いていく。
周りの生徒がオラオラ歩いていくボルクに引いているが、彼は鈍感なのか、注目されていると勘違いしているようだ。
「次の人!」
今度はロムが呼ばれる。顎の辺りに傷がある初老の爺さんだ。
ロムは、ビクッとしながら小走りに彼のもとへ赴く。
「次は貴様だな。えー、ロム·ホーリンだな?」
「はい!」
「おう。いい返事だ。近頃の若いもんは礼儀を知らん。どうしたもんか。」
「は、はぁ」
そう言うと、初老の爺さんはこっちに体を向き直し、ロムの腕をとった。
「今から測定するぞ。準備はいいか?」
「はい!よろしくお願いします!」
他のところで測定している人にも聞こえるくらいの声で返事したことで、周りからクスクスと笑われる。しかし、その目は冷たいものではなく、面白いクラスメイトがいるな程度なので、そこは気にしないでおく。
「よっしゃ、行くぜ。………………よっし!これでオッケーだ。今から紙に結果写すから、それもって体力測定行ってこい。」
「はい!ありがとうございました!お爺さん!」
「おう!」
そう言ってロムは測定部屋を退室する。
するとドアの裏でボルクが待っていた。彼は笑いながら
「あんちゃん、そとまで声聞こえてたぜ?で、どうだったんだよ?あんだけ気合い入ってたんだから面白いといいな!」
「面白いってなんだよ!」
そう言いつつ部屋のドアのを閉め、爺さんから受け取った紙にを開く。それに応じて、ボルクも俺の紙をみてくる。
ロム·ホーリン
魔力容量 2341
魔力出力 253
魔法適正 地
召還魔法(微弱)
「何て言うか、微妙だな。」
ロムもそれに関しては同感であった。そもそも地属性しか適正がないのに加え、あるのが珍しいとはいえ微弱なんて言葉がついているため期待ができない。
「ボルクはどうなんだよ?」
「俺かい?ホラよっ」
ボルク·トゥルスト
魔力容量 1986
魔力出力 547
魔法適正 火 風
「なんだよこの魔力出力!それに火なんてすごすぎだろ!」
「そうなんだよな~、俺もビックリしちまったぜ。そんでよ、正式に俺とパーティー組まねぇか?あんちゃん。」
ロムはその言葉に目を剥きながらつっこむ。
「ばか野郎!そんな才能あるやつについていけっかよ!」
「でも、俺が組みてぇんだ。何か面白そうなことがある気がすんだよなあんちゃんは。」
(なんだよそれ)
ロムは彼に少しだけ嫉妬した。自分に持たないものを持つものというのは人に嫉妬心を持たせるものである。特に自分の欲しかったものに関してはなおさらだ。
だが、何よりも、ボルクがかっこよく見えた。自分の言いたいこと、したいことがはっきりと言えることに、彼は羨んだのだ。
「わかったよ。だけど俺はお前に依存しねぇかんな!俺は俺で強くなってやる!」
「そうか!ありがとな!これから楽しくなりそうだぜ!」
二人は手の甲をぶつけ合いそして気恥ずかしそうに笑いあった。