18.決勝戦!!②
決着つきます!!
よろしくお願いします!!
「よし!倒しきれ!!」
横目で見ていたレインがドリーに言う。
「あんちゃん!!」
魔法を止めることはできないボルクは、声だけでロムを案じた。
ここでみすみす逃すほど優しくはないドリーは、彼を追撃しようとする。
だが、風を纏った身体でも弾き飛ばされたロムに追いつくことはできない。
逆にどんどん引き離されている感覚がある。
そこでドリーは疑問に思う。
(どうしてこんなに弾け飛んでいるんだ!?)
そしてドリーは飛んでいるロムの顔をよく見る。
(わ、笑っている!?)
「今倒しきるんだ!」
疑問に思うもそうすること他、仕方がない。
「ボルク!!」
吹っ飛んでいるロムから声が上がる。
「な!?普通ならあそこで気絶するはず!?」
レインが信じられないといった顔をして驚く。
ロムからの声に応じて魔法を撃つのを切り上げその場から離脱。
もともとボルクがいたところに氷槍が突き刺さる。
「いまだ!!あんちゃん!!」
ロムは着地すると同時に左手に大きな石、右手に爆石を作り出す。
しかし、ドリーはすぐそこまで迫っている。
それを受けるのも厭わない。
「おぉりゃぁぁあ!!」
ロムはレインのいる方へ目一杯の力で爆石を投げる。
一直線にレインの足元に到達。
「な!?この試合、まだ水魔法は使っていないはず!」
しかし、どうしてか自身の足元に水が。
彼の思考が追いついたのは、既に彼の足元に爆石が落ちた瞬間だった。
ドォォォォォォオオオオン!!!!
レインがその場から吹っ飛ぶ。
(僕とボルクの魔法によってできた水を狙ったのか!?)
「おらぁぁああ!」
爆石を投げたロムだが、既に目の前にいたドリーに殴り飛ばされる。
ロムはその拳を左手に作り出してあった大きな石で受け止める。
「なっ!?」
殴ったのはドリーである。
だが、両者ともに跳ね返るように吹っ飛んだ。
(石が、柔らかいだと!?)
「ひゃっほーーーう!!!」
何が起こったか理解しているロムは笑顔で吹っ飛ぶ。
彼は巨大な跳石を作り出し、クッションのかわりや距離を取るための道具として用いたのだ。
だが、ドリーのほうが身体能力が高いため、綺麗に着地。そして追撃に出ようとする。
しかし、彼の横には既に風魔法で身体を覆い、右手に火を纏ったボルクが振りかぶっている。
即座に防御するため!腕をクロスして受けるも、ロムの近くに吹き飛ばされる。
「しまった!!防御されちまった!!すまねぇ!」
予定ではここでドリーを倒しきる作戦だった。
今回は綺麗な受け身を取ることができないドリーは既に立ち上がっているロムのほうへ飛んでいく。
「くっ!まけるかぁぁあああ!!」
ドリーは飛びながらももう一度風を纏い、なんとか応戦しようとする。
「ぐはっ」
そして、ドリーは背中で着地。早く立ち上がろうとするもそこにロムの手が襲う。
「すまねぇ!」
なぜか謝りながらロムは右手の石をドリーの顔面につける。
「おぇっ!!??」
臭石を直に嗅いでしまったドリーはひどい臭いに襲われ吐き気をもよおす。
しかし、やめることはできないため、ロムはドリーの口を塞ぎ鼻の前に臭石を押し付ける。
ロムは息を止めているが、即座に対応できないドリーは鼻呼吸をしてしまう。
一秒して、ドリーは泡を吹いて気絶する。
その間にも吹っ飛んだレインの方へ追撃をするボルク。
爆発によって起こった砂塵のなかからレインが飛び出してくる。
「こっからは俺の仕事だ!!!」
ボルクは叫びながらレインに接近。
「負けない!!」
レインは魔法を唱える。
「僕の出せる最大級の魔法だ!!くらえ!!」
レインは魔法を唱え始める。
「受けてたつぜ!!!」
応じるようにボルクも魔法を唱える。
「氷魔法 氷雹!!」
「火、風魔法 炎陣!!」
レインからは百を越えるほどの氷の矢じりが、ボルクからは炎が風によって螺旋状になった特大の火炎放射が飛び交った。
「「うぉぉぉおおお!!」」
お互い一歩も譲らない特大の魔法の競り合いは、レインに軍配が上がった。
「うぁぁぁぁあああ!!」
ボルクは吹き飛んでいく。
しかし、先ほどのロムによる爆石の影響でまだ意識が完全に覚醒していないレインは膝をつく。
そして、下を向いて意識を取り戻そうとするレインの視界に、ある男の足が映る。
「くそっ、まだ君がいたのか。」
そう言って視界をあげると、彼の身体の半分もあろうかという巨大な岩を持ち上げるロムがいた。
「降参してくんねぇと、これ、落とさないとなんないんだけど。」
申し訳なさそうに言うロムにレインは笑う。
「それは、やめてほしいなぁ。それに、もうやり返す体力は残ってないよ。」
「そうか、なら良かった。」
そう言ってロムはレインに右手を差し出す。
それを見て、笑いながらレインは掴み返し、それをロムが引き上げた。
それを見て、審判がこの試合に幕を落とす。
「試合終了!!!ドリー戦闘不能!レイン降参により、勝者、ロム&ボルクチーーーム!!」
ゴォォォォォォォォオオオオオオオオ!!!!!!!
今日一番の歓声と拍手で会場は満たされたのだった。
気絶から覚めたボルクとドリーを含む決勝戦参加者は、すぐに自分達のクラスには帰らずに、その後におこなわれている2年と3年の試合を見ながら、決勝の感想を言い合っていた。
「準決勝で彼らが苦戦していたのはあの臭いだったか…。もう一生あれは嗅ぎたくないな。」
ドリーはロムにジト目で言う。
「ははっ、すまんっ。あれしかあのときは手段がなかったんでな。」
「どんな臭いなんだ?ドリー。」
興味ありそうに聞くのはレイン。
「うーん、便所の臭いを何倍にも濃くした感じか?」
「うわ、想像しただけで辛いな、それは。」
受けていないレインは、ドリーに同情を禁じ得ない。
「それで、あの爆発する石の水は作戦だったのかい?」
「そうだ。」
「なるほど、だからか。」
レインは理解したが、ドリーは未だ理解に及んでいない。
その事を察してレインが説明する。
「最初にロムが僕に、ボルクがドリーにという構図になっただろ?普通ならロム達からすれば当たり前の戦法なんだ。」
「ロムは近接戦闘ではドリーには渡り合えないが、僕だったら遠距離でやりあえる。逆にボルクが僕とやったら、魔力の量でいつかは僕に軍配が上がるけど、ドリーだったらやりあえたかもしれない。」
うなずくドリーを見て続ける。
「だから僕たちはそれを阻止するために動いただろう?」
「そうだな。」
「だが、そのせいで僕とボルクによる魔法で水ができた。そしてそれによって、爆発、一時僕が離脱している間にドリーは2人を相手しなければならなくなったんだ。」
「あぁ、あれがなければ勝っていたな。」
「うん、それで彼らはそれを作戦だったと言った。じゃあ例えば2人が最初から自分達の不利な僕とボルク、ロムとドリーで戦おうとしていたらどう思った?僕なら怪しんだな。なにか裏があるんじゃない勝ってね。」
「そうだな。特に今までの試合を見て頭が切れると分かっていたから、そんな変なことされたら俺も怪しむだろう。」
そこでドリーはやっと理解する。
「うん。だから怪しまれないようにそうしたんだろう。そうだね?ロム、ボルク。どちらが考えたんだい?」
とても興味深そうに聞く。
「俺だ。」
「やっぱりー!そうだと思った!これまでのも皆君が考えたのかい?」
すごいよと目を輝かせる。
新しいおもちゃを見つけた子供のようにはしゃぐ。
「あんちゃんだぜ。俺は言われた通り動いていただけだからな。」
「なるほどね。じゃあ、例えば僕たちが一番最初に戦う相手を入れ換えていなければどうなったと思う?」
レインは気になってしょうがないと矢継ぎ早に聞いてくる。
「うーん。それはないと思ったな。なにもしないくらいの頭ではないと思っていたから。だけど、こちらの作戦に気づかれていたのであれば、確実に負けていただろうな。」
「そっか、僕も同じ意見だ。はぁ、始まる前に決着は着いてたってことか。悔しいな。」
そう言ってレインは頭を垂れる。
「よしっ!練習しないとな!ドリー!!」
それを待っていたかのようにドリーは笑う。
「おう!こんなに楽しかったのは久しぶりだ!またやろうな2人とも!」
そう言って2人は席から立つ。
(次戦うときは今日以上に苦戦するだろうな。)
「あぁ、僕たちも席に戻るよ、行こうボルク。」
「よしゃ、次やるときは魔法でも負けねぇからな!!」
レインにボルクが挑戦的な笑みを浮かべる。
「それはまだ負けられないよ!」
といって、お互いを認めるように笑った。
「今度は作戦ごと塗り替えられるくらい強くなってやる。ここで満足して強くなるのをやめるなよ!次は強くなったお前らを倒す。」
「ははっ、受けて立つよ。」
ドリーとロムも異色ではあるが、戦って思うところがあったのか、友情に近いものが生まれる。
「じゃあな!」
「おう!」
「またな。」
「うん。」
4人は解散し、自分のクラスに向かったのだった。
自分としては結構熱い展開となりました!!
皆さんはどうでしたでしょうか。
作者は、魔法ブンブンで倒すよりも、頭が切れる軍師タイプが好きなのです。でも、ボルクも大好きですよ。
感想や評価、ブックマークいただけるととても嬉しいです!!よろしくお願いします!




