13.僕と高嶺の花と相棒と先生と
よろしくお願いします!
運動会の種目が決まり、ボルクと二人連携の練習をしていた。
運動会まで一月は練習出来る時間があるのだが、あそこまで啖呵を切ってしまい、簡単には負けられなくなったため本気で練習に取り組んでいる。
「剣主体で来られたらどうする?」
「あぁ、それなら…」
「おいっ!」
後ろから声をかけられる。
振り向くと身長160ほどのいかにも自信ありますといった表情の男が立っていた。
「お前がロムだな?」
「あぁ、そうだが?」
第一声で怒鳴られているので、ロムもボルクもいい気はしていない。また、二人は周りに配慮しながらだ訓練していたため、文句を言われる筋合いもない。
「ペア戦出るみたいじゃないか、地魔法ごときの才能の分際で!」
この言葉にロムはイラッとする。
地魔法のちの字も知らないようなやつに、地魔法をバカにされたくはないからだ。
「俺は2組マルスだ!俺もペア戦出るからちょっと見に来てやったんだよっ!」
「お前は、ボルクだろ?才能あるらしいじゃないか。残念だったな!お荷物背負っちまって!アハハ!」
その言葉に、ロムより先にボルクがキレる。
「おいっ!お前…」
それをロムが手で制した。
「お前いつもそんな感じで話してんのか?」
「そうだよ!なんか悪いか?」
「いや?お前友達いないだろ。良くペア戦に出れたな。余り物ってやつか?小さい犬は良く吠えるというが、お前にぴったりだと思うぞ。」
ロムは考えていたことを一息に言いきった。ここでボルクに言われていては格好がつかないのもあったが、言い返すことができた。
「あぁ!?そんなことねぇから!調子に乗んなよブスが!!」
(カッチーン、言っちゃったね?)
「貴様ころしてやろうか?あぁ!?」
ロムは先ほどまでとは一変し、オラオラしてマルスに詰め寄っていく。
右手に爆石、左手に水魔法を作り出した。
「あ、あんちゃん!やめろ!ホントに死んじまうって!」
そう言いながらなんとかロムを引き離す。
「おいっ!そこの馬鹿!今は帰れ!本当に殺されたくなかったらな!!」
「コロスコロスコロスコロス」
(俺がブサイクだとぉ!?んなこたぁしってんだよ!このハゲェ!ふざけんなよ?あぁ!?)
「なんなんだよ!そいつ!マジでキモいな!!」
「やめろよ!死にてぇのか!」
(プッチーン、キレちゃったよ。キレちゃいけないところがキレちゃいましたよ!?)
突然、反応のなくなったロムを、ボルクが心配そうに覗き込む。
「離してくれ、もう大丈夫だ。」
「一応聞いとくぜ、何が大丈夫なんだ?」
「殺す覚悟はできた。」
「ダメじゃねぇか!!」
ボルクがいうとすぐにまた、暴れだす。
「はなーせー!離せよ!俺はあいつをぶっ殺すんだ!!」
そう言いながら暴れているロムを見てマルスが怯える。
「ま、まぁここは引いてやるが、運動会では潰すからな!待ってろよ!」
声は大きいが、後ずさりしながら言い切り、走ってその場を離れていった。
「ほら、もうあいつはいねぇぞ、あんちゃん。」
「ごめん。」
突然謝るロムに大丈夫か?とボルクは心配する。
「何がだ?」
そう言うと、ロムは落ちた。そして落とした。
ボルクはロムを押さえつけるために首をしっかりと掴んでいた。そのため気絶したのだ。
そして、どうして謝ったか気づいたのはもうそれはどうしようもない状況だった。
彼の左手の水の魔法によりできた水溜まりに、気絶したため握っているものを落としてしまった。
チュ ドォォォォォォオオオオオン!!!!
二人は仲良く十分ほど気絶した。
「マジで死んだと思った。」
そう言いながらボルクは猫背になって渡り廊下を歩く。
今日はもともと連携の練習のあと久しぶりに地研にいく予定だったため、ロムとボルクは二人疲れはてているが、地研のある別館へ向かった。
「失礼します。」
「おう来たか2人ともって、なんじゃぼろぼろじゃのう。」
「はい、それがかくかくしかじかで。」
「なるほどの、気を付けろよロム。」
「すみません。」
そう言って素直に頭を下げる。あそこで武器を出したのは自分でも良くないことであったと理解しているからだ。
「早速じゃが、新しい石を教えようと思うが、1つ先にいっておかねばならんことがある。」
「なんですか?」
「わしがお前に教える石はこれが最後じゃ。」
その言葉にロムとボルクに衝撃が走る。なぜなら、彼らはこのまま教わり続けるものだと思っていたからだ。
「な、なんでですか!?俺、何かしたのなら謝ります!お願いします!」
「いや、そう言うことじゃないのじゃよ。わしが戦いに使えそうな石をこれ以上知らんのじゃ。」
「えっ?」
「わしとてこの研究を始めたのは十年前、ちょうどマリィの家庭教師をやっていた頃じゃ。そこから十年。わしは自分の足で探した。その結果があの本なのじゃよ。」
そう言いながら感慨深そうにするロービヒ。
「別にもう会わなくなるわけではない。わしが教えられることがなくなったと言うことじゃな。普通の魔法についてはまだ教えられるが、そなたの欲する様なものはもうないのじゃよ。」
ロービヒはとても申し訳なさそうにポツリポツリと話していく。
彼は自分にはもう教えることがないため、もう彼らはここには来ないだろうと思って話した。
今まで、この汚い地研に毎日のように足を運び、先生と呼び慕ってくれた生徒はいなかった。
たった二ヶ月ほどの関係でも、彼にとっては嬉しいものだったのだ。
すると、ロムが意を決したように口を開く。
「俺だって教えられてばっかじゃいられませんよ、先生!こっからは自分の足で、自分の魔法を作り上げて行きます!」
ロムはここまでほぼ毎日のように教わってきたことを思い出す。
(なんだよ、先生はそんなこと考えてたのか!)
「先生、まだここにいるんですよね!?なら、俺が先生の手となり足となります!俺がいろんな所へ行って探します!」
「お主を、ここに縛り付けておきたくはないのじゃよ。」
彼は本気でそう言った。
しかし、そう言うロービヒを元気づけるように、彼は歯を見せてニコッと笑ってこういった。
「正直ロービヒ先生といるほうが、マリィさん誘いやすいんですよ!俺はいつか彼女と結婚してやるんです!絶対に!」
そして、先を見据えるようにしてロムは続ける。
「そんときに、先生がいた方が親御さんに許してもらえる確率高まるでしょ?」
いたずらをする子供のように笑った。
「あんちゃん。」
ボルクは友が決断したことをしっかりと理解し名を呼んだ。
「ボルク、俺はこっからあんまり訓練には出れねぇかも知れねぇ。けど、お前はお前でやれんだろ?」
ロムがボルクのほうを向いて言う。
「なに言ってんだ?あんちゃん。俺はお前といた方が楽しいに決まってんだろ?ついていくぜ!」
そう言ってボルクは右手の甲をロムにつき出す。
「そう来なくっちゃな!」
ロムもボルクの手の甲に向かって左手の甲をつきだしコツンと当てた。
そうして、声を出して笑った。
その光景を見ていたロービヒはそれらがとても眩しく見えた。
(あぁ、若いっていいのう、わしも昔は……)
そう思いながら物思いにふけっていると、ロムとボルクがロービヒのほうに向いて笑いかける。
「なぁに辛気臭い顔してんだ?先生よ!」
「先生こそこっから頑張ってもらわなきゃ困るんだからな!!なぁ、あんちゃん。」
「おう!何せ俺ら二人が手足になってやるんだから!チームだぜ!俺ら三人は!」
ロービヒは嬉しくて泣きそうであった。良い生徒を持ったと。そして、この年にして仲間を持ったと。
「そうじゃの!そうじゃ。わしはこっからじゃい!!」
そう言って上を見上げる。ただの天井なのに、これまで一人で研究してきた過去と、これからあるであろう楽しい未来を見据え、今までいた天井とは思えないほどきれいに見えた。
ガランッッ!
「何なに!?ちょっと立ち聞きしてみれば私をのけ者にしようとしてるの!?」
目を少し涙で濡らし、目の下が赤くなっているマリィが勢い良く中に入ってきた。
「私だってその仲間にいれてよ!ねぇ、いいでしょ?先生!!」
目が赤くなっているというのに、これまでで一番綺麗な笑顔で笑う。
また、初めてロービヒのことを先生と呼んだマリィを見てまたロービヒの涙腺が緩む。
「あんまり年寄りをいじめないでくれやぁ。」
そう言うロービヒを三人は目を見合わせて、出合ってから一番気持ちの良い笑顔で笑いあった。
どうでしたでしょうか。
後半は先生主体の話となりました。
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