12.運動会種目決め
よろしくお願いします!
第三訓練ホールから、四人は生徒会室までやってきていた。
「ロム君の戦いすごい面白いんだよ!!」
生徒会室にはルルイエ、ワン、ベリルがいた。
ワンは強面の三年生だ。体格もよく、15才にして身長は180あり、肩幅も広い。見るからに強そうである。
「そうなのか、俺もその戦い見てみたかったな。」
想像通りの低い声でワンが答える。
生徒会室に入ってすぐは、ロムもボルクも冷や汗が止まらなかった。
しかし今はなれてきて、普通に会話が出来るほどである。
「地魔法主体の戦いだったら、もうロム君の右に出る人はいないね!」
「ほう、そこまでか。」
シスの過剰ともいえるその表現に、ワンは興味ありそうにロムを見つめる。
「それにボルク君も一年生だったら火力一番あるんじゃない?」
そう言われると、ボルクは頭をガシガシと掻きながら照れる。
「でも、一年にはベリルもいるだろう?」
「僕も戦ってみたいな。」
ベリルも物欲しそうにボルクを見る。
ベリルは親が剣聖であるからして、怯えて入学してから一緒に訓練してくれる同級生がいなかったため、そんな人材を探していたのだ。
その視線にボルクは体をブルッと震わせながら冷や汗を流す。
「いや、今日はもうつかれてるから…」
なんとかそこから逃げ出したいボルク。
「でも、地魔法か。面白いな。どんな戦いかたをするんだ?」
「あのねっ!ビチャァってやって、石投げて、ドーンって感じ!!」
彼女は身振り手振りで伝えようとするが今一つワンには理解できない。
また、この部屋でそれを理解できるものはいないだろう。
「うん、わからん。」
ワンは困惑する。
「シスは説明が苦手だものね。もう少し言葉を学んでほしいのだけど。」
ルルイエがシスに優しく語りかける。
「えー、私はわかるんだけどなぁ」
(うわっ、シス先輩なぞ理論だな!こりゃ生徒会の仕事あんまり出来ないだろ。)
「まぁ、書類仕事は誰よりも速くて正確だから別に問題はないのだけれど。」
(ええぇ!できるのぉ!?やはり人は見かけによらないのか。いや、だけど……マジか)
ルルイエはそのまま話し続ける。
「それで、シスは満足したのかしら?」
「うん!でも私には出来ないな、あれは。」
「あら、それはどうして?」
「きっとロム君試合の最中相当考えながら戦略立ててやってるもん。私とはタイプが違うよ。」
そう言いながら少し真面目な顔をするシスにロムは驚く。
(しっかり人のこと見えてるんだな。あとこの人は天才肌なのか。確かに俺は試合中ずっと考えているし、よく周りが見えていると自分では思うけどな。)
「なるほどね。シスはなにも考えないで戦うものね。」
「うん!身体が勝手に動くんだ!!」
そう言いながらシスは変なダンスを踊る。身体が勝手に動くということを彼女なりに伝えようとしているのだ。
「それでいうと私は考えているわね。」
とルルイエ。
「俺は考えないな。」
とワン。
「僕は半々かもしれない。集中すると身体が勝手に動くんだ。」
とベリル。
「私は、考えますかね?」
とマリィが続く。
「俺も半々だが、あんちゃんはどんくらい考えてんだ?」
生徒会メンバーに注目されてたじたじになるロム。
「俺は、最初にに3つのプランを頭にいれますね。1つは最初から自分の土俵で戦えたときの理想的なプラン。2つ目は状況が拮抗しているため自身の土俵になかなか持ち込めないときのプラン。そして最後が、完全不利の状況となったときどう建て直すかのプランです。」
そこまで話すと周りのメンバーが次の言葉を催促するようにうなずく。
「えっと、試合が始まったら相手の出方を見るのではなく何をするかある程度予測立てて行動します。それの繰り返しですかね?自分でも考えてないときはないですね。未だに皆さんの言う集中して身体が動くという体験はありません。」
そう言いきると皆口々になるほどなと口にする。
「僕もそのやり方やろうと思ったことはあるけど実践になると出来ないんだよね。」
「ベリルはもっと身体動かした方がいいよ!」
とシスがベリルに言う。
「そこまで考えているのは疲れないか?」
「はい、疲れますけど、そのぶんその作戦で勝ったときただ勝つよりも自分としては気持ちいいんです。」
ワンの疑問に自身の思っていることをストレートに言うことが出来た。
(なんか、俺コミュニケーション能力あがってね!?こりゃマリィさんを口説き落とすのもあと少しか!!!)
ニヤニヤしながら妄想にふけるロムをよそにベリルが口を開く。
「この分なら前期運動会は3組が優勝できるかな?」
「そうか。お前達皆同じクラスか。」
「はい、この分だと圧勝かもしれませんね。」
「ベリル君、そういうこと言ってると足元すくわれちゃうからね!」
とマリィがベリルに指摘する。
ここでボルクは疑問に思ったことを口にだした。
「運動会って具体的に何をするんですか?」
「そうだね、でもそれはたぶん明日決める日だからそこで説明を受けると思うよ。」
「そうね。この分だと1年生に話題取られちゃうかもね?ワン?」
「それなら目立てばいいんだろ?それに、今年こそルルイエに勝つからな。」
「ふふっ、どうかしらね?」
(あそこ、バッチバチなんだな。あそこまでなるってことは、相当派手な運動会なんだろうな。)
「じゃあ、マリィさん、よろしく。」
「はい。」
翌日、午後の授業はなく、運動会の種目決めとなっていた。
生徒会であるマリィが司会となり、話を始める。
クラスの皆は、なにに出るかなど口々に言い合っていたが、彼女が前に出るとしんとなった。
「それでは出場種目を決めます。」
個人戦 3
ペア戦 4
集団戦 全員
障害物競走 2
剣術戦 3
魔法戦 3
狙撃戦 3
「個人戦、ペア戦はなんでもありの総合ルール。障害物競走はゴールを目指して障害物を突破しますが、破壊しても可。剣術戦は剣のみ。魔法戦は異色で、魔法による美しさや、規模、いかに魅了するかによって順位が決まります。狙撃戦は指定された的を魔法を使い壊していくというものです。何か質問はありますか?ないようですので決めていきますね。」
(うぉ、いきなりだな。でも周りは決めてるみたいだしどうすっかなー。)
「では個人戦に出たい人はいますか?」
(うん、障害物競走にするか。魔法で壊していいなら、爆石使い放題だしな。)
そうロムが考えてる間にもどんどん決まっていく。
「はい。では次、ペア戦ですが?」
「はい!」
後ろから耳が割れるような声で返事をしたと思うと、ロムの右腕が掴まれ挙手させられる。
「あら、ボルク君とロム君ですね。あとは…」
(おいっ!何かってにやってんだよ!!)
(あんちゃんと一緒に出たかったんだって!いったろ?パーティー組もうって!)
(今じゃなくてもいいだろうが!!)
(もう無理で~す!!)
「あの~」
いつもマリィの取り巻きの中心にいる女が口を開いた。
「はい、イズナさん。」
「ボルク君はわかるのですが、そこのホーリン君に関しては実力を知らなくて。一応クラスの代表なので勝ってほしいんですけど」
(おっ!いつも囲んでるから嫌なやつだと思っていたがいいやつじゃないか!!!えっと、名前なんだっけ?あっ、)
「そうです!もっといってやってください!イズモさん!」
「イズナです!!あんなやつで大丈夫なんですか!?」
名前間違えられて心外なんですが!?といった様子で抗議するイズナ。
「はい。私は大丈夫だと思いますよ。」
「おう!俺も大丈夫だと思うぜ!だってこいつがダメなら俺はダメだからな!」
(おい!やめろよ。)
「それはどういう意味ですか?」
何をいっているのかわからないといった様子でボルクに疑問を呈する。
「昨日あんちゃんに負けてんだわ俺。」
この言葉でクラス中がどよめいた。ボルクは魔力の出力で言えば学年でも上位にいる。
また、火と風と言う戦闘に超特化した魔法を使い、それだけではなく近接戦闘も得意としていて、総合ルールではベリルと同格とまで噂されていたからだ。
この様子にベリルはとても楽しそうにニヤニヤしていた。
(この流れは)
「え!?ホーリン君は地魔法使いですよね!!??」
ロムが地魔法使いであることもボルクが負けたことを信じることが出来ない要因の1つでもあった。
イズナはあり得ないといったように机を叩きながら席を立つ。
「おう!だが、めちゃ強い地魔法使いだがな。」
(よくない流れだぁぁあ!)
ロムは絶望する。
「私もその場で見ていましたが、どちらも全力で戦い接戦の末ロム君が勝利しましたね。決して二人とも手は抜いていませんでした。」
(マリィさんまで!?おいっ!イズコ!諦めんなよ!!)
「マリィさんがそういうなら。あんた!足引っ張んないでね!!」
(おぉぉぉおい!!!)
「イズコ諦めんなよー!」
「イズナですぅっ!!」
そこで後ろの席からちょんちょんと指でつつかれる。
そして、ボルクが耳元でささやいた。
(活躍したら、マリィさんに…)
「やるよ、やるやる!まかせてよぉぉ~。なんだそっか、忘れてたよ!俺やる気しかないんだった!てへぺろ☆」
そんなこんなで運動会の種目が決まっていくのだった。
マリィに対するロムのアプローチが弱くなってきている気がするので、加速させようかなと思います。
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