表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート5月~

私のお墓

作者: たかさば

お墓にやってきた。

ここは私のお墓。


ずいぶん久しぶりに来たな。


前に来たのは、いつのことだったか。


私のお墓は、私の記憶の中。


埋めたのは、私の悲しみ。

埋めたのは、私の怒り。

埋めたのは、私の気持ち。

埋めたのは、私の心。

埋めたのは、私の過去。

埋めたのは、私の勇気。

埋めたのは、私の正義感。

埋めたのは、私の恋心。

埋めたのは、私の望み。


埋めたものは、埋まったまま。


お墓の前で、私は手を合わせる。



あの日、私が埋めたもの。


あの日私が、埋めたもの。


あの日私が埋めた、もの。



埋めたものは、どこかへ還っていったのだろうか。


違うものに、変わっていったのだろうか。



埋めたものを、掘り返す術を、私は持っていない。


埋めた事実を、ここに来て、ただ、確認するだけ。



私は今日、言葉を埋めにここへ来た。


今、必要ない、言葉を、埋めに来た。


今、埋めたくてたまらない言葉を、ここに、埋めた。



しばらく、ここには、こない。


いつかまた、何かを埋めたくなったとき、私はここに言葉を埋めたことを思い出す。


いつかまた、埋めた言葉を取り戻したいと願う日が来るかもしれない。



埋めたものは、埋める前の状態で掘り返すことなど、できないというのに。



埋めた事実から、目を背けるなと、お墓が私に語りかける。


お前の埋めたものは、ここにあるのだと、お墓が私に語りかける。


埋めたものは守ると、お墓が私に語りかける。



いつか私が灰になり、どこかに埋められたそのときに。


私は必ず、ここに来るから。


ここに埋めたすべてのものを、必ず、私は、抱きしめるから。



そう、約束をして、私は、私のお墓の前から、立ち去った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] なんか肯定されてる感じがして好きだな。
[良い点] やっぱり心に響きます。なんでだろう? [気になる点] ここが墓場だったり? でも、ここは埋めたままの状態を維持してますから。 [一言] 過去の自分の言葉を思い出して鬱ったり悶えたりしてます…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ