表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

1、妹は弟である

よろしくおねがいしまーす!

「――うぃずは"あくやくれいじょう"なのです」


 大きな黒い瞳に涙を浮かべた幼い少女が黒髪の少年へと訴える。


「うぃずは、しにたくありません」

「私もウィズを死なせたくないよ」


 少女を落ち着かせるように少年は少女の頭を撫でようとして――巻かれている包帯に目を細め、優しく肩を抱いて落ち着かせるようにぽんぽんと軽く撫でる。そして、言葉には頷きを返した。

 泣き止むどころかますます少女の瞳から涙が溢れ、それを少年が優しくハンカチで拭う。


「おにいさま、うぃずはけっこんをしたくないのです」

「うん」


 要領を得ない少女の言葉に、兄である少年は問いただす事はせずに続きをおだやかに促した。

 妹は一度うつむいて、それから何かを決意したかのように両手でこぶしを作り、もう一度兄を見上げる。


「うぃずは"おとこのこ"なのです」

「……うん?」


 突拍子の無い、そして突然話が飛んだように思えて、兄は首を傾げる。


「うぃずは"うぃずになるまえ"は、"おとこのこ"でした」


 兄は言葉が妹の言葉の意味を測りかねているのか、目を白黒させていた。

 が、だからといって怒ったり、意味がわからないと妹を問い詰めようとする気配はない。

 言葉の意味を知ろうと頭を巡らせ、たどたどしい話し方をする妹の言葉に耳を傾ける。


「うぃずは、うぃずがうまれるまえのきおくがあるのです」

「ウィズは女の子だけど、男の子としての記憶があるのだね」

「はい。おにいさまは、しんじてくれるのですか?」

「もちろん。ウィズは私に嘘をついているのかい?」


 生まれる前の、前世の記憶がある。

 頭がおかしくなったか、幼児ゆえの妄想か。

 そう判断されてもおかしくない内容に、不思議そうにはしていても否定をせずに頷く兄。

 兄の様子に、妹は驚きに涙をとめて目を見開いた。

 自分だったら到底信じないであろう内容であることを妹は自覚していたのだから。


「いいえ!いいえ!ほんとうのことです。うぃずはうそをいっていません」


 頭をぶつけて前世の記憶を思い出したウィズべリア三歳と、その兄であるワードルド八歳。

 雲一つなく晴れた、ある春の日。


「おにいさま、うぃずがしなないように、きょうりょくをしてください!」


 運命というものがあるならば、まさにこの時、二人の運命が変わったと言えるだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ