番外編・ブリジットのガントレット/製作記
・簡単な注意書き
※今回の番外編の扱いは活動報告・あとがきに準じます。作中のキャラクターは出てきません。
※写真を多用しているため、縦書きPDFなど、イラストに対応していない読み方を想定していません。
※その場合、なんか話の流れからしてここにそういう写真があるんだな、ぐらいの感覚でお読み下さい。
※新技術に挑戦したら、沢山の新しいミスに出会いました。
西洋甲冑で、どの部位が好きですか? (挨拶)
私は、ガントレット……籠手が好きです。
他の部位も、もちろん大好きです。
美しい胴鎧を横から見たラインは尊いの一言でしか言い表せませんし、脚鎧のふくらはぎパーツなどあまりに女性的すぎて、可愛い女の子にしか似合わないと思ってしまうほど。
膝関節を鎧う部分がハートみたいで可愛かったり、ふとももを覆う装甲はときめかせるために積層しているとしか思えない。
洋ゲーにありがちな馬鹿でかい肩鎧も嫌いではありませんが、リアルな控えめ肩鎧の慎ましさに敵うものではありません。
腕鎧や首鎧の、最低限の装甲にすると省かれる、けれどそれあっての全身甲冑というバランスもまた。
鉄靴とかも、履いてみたい靴の筆頭。
他に履いてみたいのは……藁で編んだ草鞋とかですね。
兜はバケツヘルムとかも好きですが、やはり面頬付きの兜が好き。
昔、遠い図書館へ行き、貸し出しされておらず閲覧のみだった古い本に載っている鎧をスケッチした時に知った、勝手に開かないように固定するフックが、私の心を捉えて放さないのです。
フックだけに。
そして、ガントレット/Gauntlet。
こう……これだけは籠手ではなく、ガントレットと言いたい。
ゴーントレットという表記も目にした事がありますが、私が最初に見た表記はガントレットで……つまり刷り込みです。
これにも色々ありますが。
ミトンタイプだって大好きなのですが。
やはり、五指があるタイプ。それも、限界までの薄さによる軽量化と強度を同時に達成するための折りや彫りが、美しさを一段引き上げているタイプのものが好きです。
十六世紀ドイツのゴシックプレートより美しい鎧が、この地上にあるだろうか……と言いたいのですが、同時期、あるいは十五世紀辺りのイタリア、ミラノの甲冑の有機的なラインの美しさこそが、西洋甲冑を芸術品として存続せしめたのではないかと思わせる尊さなので、甲乙つけがたいです。
……私には選べません。
なのでブリジットの鎧は、シカゴ美術館にある、とある鎧をモチーフにしつつ……時空を超えて各種好きなデザインをちゃんぽんした上に、ファンタジーデザインを少し足しています。
そして、右と左、どちらが好きかと聞かれれば……躊躇いと共に左の籠手だと答えます。
そもそも左腕は"盾の腕"、右腕は"剣の腕"とされてきました。
盾はバイキングにとって神聖な物であり、武器を捨てても盾だけは捨てなかったと言われるほどです。
そして欧州の騎士にとってはそれは紋章を描くキャンバスでもあり、家名を背負うための覚悟であり……もっと単純に、自分の命を守ってくれる防具だったでしょう。
古い西洋甲冑は、左右非対称の物が多くありました。左は"盾の腕"と言う通り、左側の装甲の方が分厚くされる事が多かったのです。
そして時代が下るにつれ、西洋甲冑は一つの完成系に達します。
完全な『左右対称』。そして、盾を持たない事すら、当たり前になった。
金属加工の極致であり、芸術。
装甲が、刃を通さない事が当たり前になった。
最終的に銃に屈したと言われる事もありますが……実際の所、しばらく銃弾は、対応して分厚さを増していった甲冑を貫通までは出来なかったと伝えられます。
ただ、人の命が安くなりすぎた。
銃は剣よりも強く……剣よりも、遙かに簡単に人を殺せる。
甲冑を着なくとも、剣よりも遙かに短い訓練ですむ銃を持たせれば、命そのものを銃弾として扱える。
その結果として、甲冑を着せるだけの価値が、兵士に……人に、存在しなくなった。
いずれ突き進む、『総力戦』と『非正規戦』の未来。
人の命と尊厳が、鉛玉よりも軽くなった世界。
今も、きっと、地球のどこかで。
っていうシリアスなのとはあんまり関係なく、"盾の腕"という響きから、左のガントレットが好きなんですよ。
武器や防具が好きというのと、必然として付随する、割と陰惨な歴史は心の中に棚を作って分けるべきですよね。
ちなみに左手に装着する方が、右手でカメラを構えやすいというのもあったり。
・ブリジットのガントレット
製作全体を通して使用したラフ。
色が淡いのは、濃い色だと線が見えないから。
メモ書きで、立体はこんな感じかなー? という勘で書かれています。
リベットの数は正確。
これに基づいて作られています。
割とイメージ通りに出来たかな?
光の加減で結構色は変わります。
置かれた状態から……。
指を通すと、表情ががらっと変わるのが好き……。
装着出来るように作った甲斐があるというものです。
ピースサインも可能。原作再現にぬかりはありませんとも。
きつねさんだって問題ない!
……装甲妖狐とか枕詞付きそうですけども。
空に手を伸ばしてみると、赤系の装甲なので青空が割と似合う。
以降は製作記です。
その前に全体の予算ですが……400円~ぐらい?
この「~」とあやふやなのは革手袋部分のせい。
上記はレザー抜きの価格です。
プレート部分はいつも通り低予算。
塗料代も抜きですが、そこまで多くもありませんし、アバウトな価格なので入れてもいいかも。
金属加工は憧れ……ですが、憧れのままに留めて置く方がよい、という事ぐらいは理解出来ます。
確かな鎧鍛冶の技術で作られた西洋甲冑は珠玉の芸術であり……お値段も芸術品並。
イギリスの、某馬術槍試合サークルの着ている西洋甲冑は、私の目が節穴でないなら、サイズも合っていてデザインも素晴らしい品。
……高級車ぐらいするんじゃないかなって……。
ていうか、甲冑着て馬に乗れる時点で……貴族かな?
あるいはガチの人。どちらにせよ、今後も写真をたくさん撮影して公開してほしい所です。
私は少なくとも貴族ではないので、材質は紙を使用。
ええ、紙ですよ。厚紙です。
厚さ0.5mmの黒厚紙。(以前のランタンと同じ)
金属風の塗装をした装甲板(厚紙)を、革手袋にリベット(カシメ)で固定します。わあ簡単。
字面だけは。
中身の手袋である「レザーグローブ」、装甲板である「プレート」の2つに分けて見ていきましょう。
・レザーグローブ
2パターンあります。
パターン1。丁度いい革手袋を買う、以上!
見た目・質・値段が折り合えば一番楽ですね。
革製にこだわらないならなおさら。
パターン2。丁度いい革手袋を縫う! 以上!
サイズを自分にぴったり合わせられるのと、(人件費を無視すれば)革代だけで済むのがメリット。
今回は欲しいのがロンググローブという事もあり、パターン2で。
そんなわけで豚革のスカートを用意しました。
ぶたがわです。
……え、普通の一枚革?
……いいですね。憧れですね。こだわって革から選びたいですね。
出来る人はそうして下さいませ。
うちは予算がないので、今回はありもので。これは予算計上なし。
フリマだかリサイクルショップだか。多分100円ぐらい。
とりあえず解体から始めます。もちろん人件費など予算に入っていない。
さくさくと糸切りバサミで縫い糸を切断して解体。何かを作るのに比べれば壊すのは楽なものです。
そんなわけで、型紙を自作。
装着して動かしたいので自分の手に合わせていますが、ブリジットサイズと言ってもいいと思います。
※B4。ただしA4までしか印刷出来ないので延長して対応するためのメモが書いてある。
※手の甲は実はちょっとだけ違うがおおむね左右反転。後、指の隙間の深さがプラス一センチ。
※A4。指パーツ。
……実は型紙作ったのは初めて。
今まで設計図はあっても、基本、布に直接定規を当てて、ラインを引いて……と、やっていたので型紙使った事ないなあって。
ちょっと新鮮。
そもそも革はちゃんと使うの初めての素材。新素材は静かにテンション上がりますね。
白色の色鉛筆でラインを引きます。(青色の色鉛筆は修正用)
そして裁断。ハサミ入れるのは緊張する……。
フォークと目打ちで縫い穴をあけていきます。
……ええと、丈夫な針と、丈夫な身体をお持ちの方はダイレクトで縫ってもいいですよ。
私は、それをするのにSTR足りないのでちまちまと穴あけ。フォークで等間隔にするのがコツ。
縫製に入ります。茶色いジーンズ用糸と普通の針を使用。
さて、ある程度、親指部分を縫い進めたところで気が付いたのです。
この縫い方おかしいな?
………………。
…………。
……。
どんなに……それに、どれだけの時間を掛けていようと、どれだけの損失が出ようと……それでも、自分の納得のいくようにしたい……。
そうしないと、自分を許せない……。
『半端物』を許せば、頭に描いた絵を自分で汚せば、何のためにこんな事をしているのかさえ、分からなくなる。
これ以上の妥協はない。予算と素材は分相応の物。ゆえにここで労を惜しめば、お前は今から駄作製造装置だ。
リテイク決定。ほどけ。そしてやり直せ。
……正しいやり方を見つけるために必要なコストだった。……そう思わないとやってられない……。
縫い直した結果は、ちゃんと満足いくものになりました。
めでたしめでたし。
さて、立体縫製の極致、親指の根元。
これもまあ、ちょっと余分を切って現物合わせ。
そして親指だけだけど、はめてみる!
……親指が……長い……?
………………。
…………。
……。
畜生……この駄作製造装置め……!
妥協は……ない。それだけは……。
たとえ、元凶(本人)を殺った方が早いのではないかと思い始めたとしても。
色鉛筆でラインを引き直し、糸を途中まで抜いて結び直し、裁断。
紆余曲折ありつつ完成! 試着!
試着失敗。
……手首……ほっそーい。
無理。私関節外せない。
ロンググローブの弊害……。
あんまり伸縮率の高い革ではないのでー……。
ポクポクポク……。(思考中)
とりあえず端を折り返してみる。
……でも入らないぐらいタイト。脱臼か骨折しないと無理。
諦めて途中までほどいて、指が入るかテスト。
……うん、いい風情。
でも、入らないのよね。
……徒労感がする……。
表情が抜け落ちて、「ふーっ……」と息を吐いて、しばし放心し宙を見る。
新技術の試験とは、失敗するもの。数多く失敗するものであり、失敗していい。いや、むしろ失敗するべきものなのです。
予算と機会の許す限り、技術を蓄積する事が目的とさえ言えるから。失敗時には、単純な成功よりも得られるデータが多い事さえあるから。
……って理論武装しても、失敗自体は辛い。
……当初予定していた技術が一つポシャれば、下手をすると基礎設計にまで関わる……。
後、弱小で零細だと『失敗出来る回数』……言い換えれば体力とか余裕に限りがある……。
自分のしてきた事が……徒労だと認めざるを得ない瞬間は……どこか切ないですね。
人は何故……過ちを繰り返すのでしょう……?
寝よう……。
明日になれば……明日になれば、解決策が思いつく……。
そう信じないと、生きるのが辛い……。(もそもそと布団に潜り込む)
――そんなわけで『二号機』がこちらになります。
……え? 一号機? 奴はサンプルデータ収集という任を完全に果たしました。
いつか観賞用ガントレットのベースに再利用される日まで、サンプルとして眠る予定です。
……ええ。裁断と縫製にどれだけ時間を掛けていようが、無理なものは無理です。革を足したり、解決策はいくつかありますが、強度が不安。
一から再設計した方がいいという結論に達しました。
型紙作りからやり直しという事で、当然裁断もやり直し。
穴あけも、縫製も、何もかも……ですね。
実は解体からやり直し。……次は……もう失敗出来ない……。(豚革スカートから取れる所が尽きた)
……まあ、二号機も例によって順風満帆でスムーズに完成とはとても行かず。
二号機は、ミシンで穴あけをしています。
指を縫いそうで怖いのと、急かされてる感がしてミシン苦手なのですが、スピードと正確性は捨てがたく。
ここらで巻き返さないとロスがきついのです。
ミシンで縫うのは……革は『逃げる』ので……。
あれは上級者向け。
なので今回は穴あけのみ。もちろん怖いので最遅で。
それで、親指を縫い付け、前ブカブカだったからとちょいと詰めたら、何故かギリッギリなタイト感に恐怖を覚えつつ、両端を縫って行くと気が付いた事が。
……なんで人差し指だけこんな余ってるの?
明らかにおかしい……。
裁断ミスか? と思うほど。
しかしハサミを入れれば取り返しが付かないので、まずは色々とチェック。
……「型紙はおかしくない」。よし。
……「型紙とぴったり合う」。よし。
しかし致命的にずれている。……ん?
……意味が分からない。エッシャーかよ……。(だまし絵と言いたい)
……推測するに、手袋の端、折り返し部分が、元々スカートの折り返しだった部分を生かしているため、微妙にズレていて、縫って行くうちにそのズレが致命的なレベルに……という事だと思うのですが……。
未だに意味が分からない。
しかし、型紙の合理性に(多分)問題がなく、型紙との整合性にも問題がないならやる事はたった一つ。
リテイク決定。ほどけ。そしてやり直せ。(もう何回目かも分からない)
……次は指を先に縫おう。
ちなみに親指の時も、一号機と同じミスをしました。
同じミスってお馴染みって読めますね。あはは。(もう笑うしかない)
疲れてるのかな……。
お腹減った状態の作業が悪いのかな……。(※主に作業は寝る直前)
……うん、まあなんとかしましたよ。
他にも人差し指が妙に長くて先端を縫い潰したりしましたけど。
……型紙通りよりも、切った方が良かったのか?
とりあえずレザーグローブは完成。
開いたり、ぎゅっとしたりするだけでしわが寄るのですが、それがまたいい感じ……。
クリスタルなど持ってみる。(セリアにて久しぶりの衝動買い。見えないようにライトを持っています)
ああ……もう、これでいいのではー……?
ファンタジー感するよ。はめてポーズ取るだけでめっちゃ楽しいよ。
それでも私は装甲板のついた手袋が……ガントレットが見たいんだ。
・プレート
雰囲気ありますね。
途中で何かが辛くなってきたので現実逃避気味に作ってみました。
一応、配置やサイズ感を俯瞰して見るという意味合いもあるにはあります。
設計図はこちら。
※設計図1。プレート。
※設計図2。プレート、手の甲。
※設計図3。プレート、指。同じサイズに同じアルファベットを振って管理。
この設計図を作る前に、テスト品が作られています。
私は大体、最低限のテストを済ませてから作っているので、テストに脱落して闇に葬られる物もあります。
ちなみにレザーグローブの『最低限のテスト』は、『なみぬいができる』です。最低限すぎる。
テストはコピー用紙で出来てます。
本番の素材は前述の通りB3黒厚紙0.5mm。3枚100円の品です。
切って並べるとこんな感じ。
ハサミとカッターを駆使して。
ちなみに、親指を覆う装甲板は、接合してみるとちょっと大きかったので塗装後に裁断しています。
後、蝶番ですが設計図がありません。
……ダイレクトに図面を引いて蝶番作れるスキルを手に入れている事に気が付いたので。(特殊かつ普段使えないスキル)
で、蝶番の作り方は? って人は、ランタンや、杖用の収納木箱などを参考にして下さいませ。
穴あけは、以前にも使用した革用の穴あけ機。カシメサイズに応じて径を変えています。
『折り』と『曲げ』を入れていきます。
焦りは禁物。紙は一度『折れじわ』がついたら戻りません。
そんで仮組み。
手が足りないのでクリップなどを使用。
黒系もいいなあ。
・塗装
ここからは塗装。
記憶が曖昧な所がありつつも、おおむね以下。
相変わらずメラミンスポンジ頼り。最後に筆使ったのいつだっけ?
1. メタリックコッパー&メタリックブラックを混ぜた物を塗る。
2. 蛍光レッドを塗る。
3. 水性ニス(透明)を塗る
4. ニスを塗ったら質感から金属感が消えたので1に戻る。
5. 2に戻る。
6. (組み立て後)黒アクリル絵の具をぽんぽんと。
……ニスは強度面で役に立ってくれてると思うんですよ。多分。
↓のように変わっていきます。
※多分1
※多分2
※多分5。6の黒アクリルは組んだ後にやるのでまだ塗ってない。
……こんな風に書くと、結構順調に見えるんですけど。(見えないかもしれない)
……若干大きめだったので「色ムラ沼」にはまる。やめて。
その前に「混色沼」にもはまる。誰かたすけて。
……ああ、そんな「誰か」はいないんだった、と、一瞬どうすればいいか分からず思考停止しかけたところを、色々諦めて再起動。
……重ね塗りしていく形なので、結局の所積み重ねた経験に頼るしかないのですが、そんな経験はなかった。
切れ端を塗装のテストピースに使ってああでもないこうでもないと試していくのを、自分が納得出来る回数繰り返すだけの簡単なお仕事ですよ。
……実戦でテストせざるを得ないのが弱小の辛い所、かもしれません。
さあ、いよいよ組みます!
レザーグローブの「完成したと思ったらオールリテイクだった」という悪夢による恐怖が消えてくれないのですが、まあぼちぼち。
現物合わせしつつ、色鉛筆(白)で印を付けて、目打ちで穴あけ。
ここから、リベット打ちです。
鋲にはカシメを使用。6mmと10mm、各100組、200組で約1000円。1個5円計算。
56個で280円計算……していいのかどうか。
……いや、まずテストに使うでしょう?
次に、失敗分がありますよね。
……私、カシメ打つの初めてですし。
というか手袋作るのも初めてですので、このガントレットが私の初めての「てぶくろづくり」という事になりますね。
カシメ打ち……なのですが、グローブの形になった物に打つので、全体的に未経験者なのにオーソドックスな知識が通用しない。え?
台を……どこに置こう? とか。
装甲板が干渉して(ゴム)ハンマーを使えない、とか。
よーし、ペンチ持ってこーい。
目を閉じて、静かに、ゆっくりと息を吐いて、深く吸い込み、全力を込めてペンチのグリップを握り込み、丸みを潰さぬように革の端切れを当てているために逃げるパワーを、カシメに集中させる。
カシメが固いのもあるけど、そもそもSTRが足りない疑惑もある。
とはいえ、そんな怪しげな技ばかりでもなく。
オーソドックスなカシメ打ちももちろんあります。
台の上にガントレット(になる予定)を置いて、打ち棒を当てて、ゴムハンマーで叩いてく。
コンコン、コン、コココン。
コンコン……ココン。
コン、コ、コン。
夏の夕方に、まどろみながら聞くあまだれのような。
なんかこう、眠くなります。
探せば、「カシメを打つヒーリング音声」ありそう……。
もちろんたしなみとして何個か失敗してひしゃげさせつつも、まず指を終え、手の甲……。
……手の甲。
……パーツ一つ挟み忘れた……。(絶望)
……『ひしゃげた』カシメは、簡単に取れます。ちゃんと入っていないので。
しかし『完全に入った』カシメを『外す』のは困難を極める。これはそういう固定の道具です。
よーし、一番強いニッパー持ってこーい。
物理による破壊。それが私とカシメに残された、唯一の共通言語でした。
どうにかこうにか破壊。……うん、気を付けてたのにな……ごめんカシメ……。
しかし反省も虚しく、手首の革ベルトのサイズが短すぎて、すぐに第二の犠牲者が出る。
だから、私手首外せないんだってば……。
デザイン重視しすぎだお前ぇぇぇ……。(怨嗟の声)
金具で締めるタイプのベルトにすべきだったかもしれない。でも今の私にそんな技術はない。(今回はやり直して長さをシンプルに延長)
さらにその後、『ひしゃげて入った』カシメをニッパーで破壊し、ペンチで捻り外し……と、どんどん技の引き出しが増えていく。
人はろくに学ばない生き物だし、学んだってミスをする生き物なんだよ、と諦めたような悟ったような事を言いたくなる。
私に出来るのは、だからどうしたと言う事だけですね。
多くの犠牲を出しつつも、全てのカシメを打ち終えて……完成!
……させたと思った瞬間、ころりと転がり落ちるカシメ。
それも2組。
……ゴールが、直前で逃げた経験ありますか? 私はよくあります。めっちゃよくあります。
幸い普通にひしゃげて入っていなかっただけなのでシンプルにリテイク。
……それを材料費に入れるかどうかは……人によりますね。(今回は基本的に入れてない)
試着。成功。
基本動作をチェック。問題なし。
カシメががそのままだと明るすぎるので、メタルプライマー塗って、残ってたメタリックコッパー&ブラックの混合塗料を塗って、アンティークメディウムで軽く汚しを入れて馴染ませています。
最後に金ラインをペンで引いて……完成!
・おわりに(デジタル針供養)
長い戦いだった……。
(しなくてもいい)辛い思いを沢山したような気もするけど……私の手に、ここではない、遠い世界の暗黒騎士団長のガントレットがはまっているのを眺めて、指をわきわきと動かしているだけで、全てを許せる気がする……。
――世界を器用さんと不器用さんに分けたら、私は多分、器用さんの方に入るとは思うんです。
ただ、もう一度分けたら不器用さんの方にいる。そんな気がする……。
とりあえず、作業中に針を二本折りました。ごめん針……。
……STR足りている疑惑。
DEXを願うべきでしょうか……。(この場合器用さ)
でもVITこそ願うべきかもしれない。
ラブコメの定番中の定番ネタ「え、この手の絆創膏? なんでもないよ」みたいな事になりまして。
絆創膏はしてませんけどね。そもそも見せる相手もいませんけどね。
作業中に、指を刺してしまったのです。
糸切りバサミで。
……何をどうやったら糸切りバサミで指を刺せるの……?
意味が分からない。
ああそっか、足りてないのはINTか……。
品性は金では買えないとは、よく言ったものです。
・次回予告
――箱も自作です、よ?
そんなわけで次回は「聖櫃風ガントレットケース/製作記」でお送りします。
……足りてないのSAN値なのでは?
・活動報告に【ガントレットをはめた手で無限にわきわきするだけのgif動画】を追加しました。
リンク:
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1492231/blogkey/2747740/




