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病毒の王  作者: 水木あおい
6章

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364/577

番外編・「"病毒の王"の杖/製作記」

挿絵(By みてみん)






・簡単な注意書き



※今回の番外編の扱いは活動報告・あとがきに準じます。作中のキャラクターは出てきません。



※写真を多用しているため、縦書きPDFなど、イラストに対応していない読み方を想定していません。



※その場合、なんか話の流れからしてここにそういう写真があるんだな、ぐらいの感覚でお読み下さい。



※以前は迷いがありましたが、今は番外編って言えば何してもいいと確信するようになりました。





 ファンタジーな魔法使いの杖は好きですか? 私は大好きです。(挨拶)



 私は、何かを作る事が好きです。


 割と幅広いジャンルの、製作系の記事や動画なども好きです。


 やっぱりいい記事は、見ると、相応の感想を抱きます。



「そんなやり方があったんだ」


「え、あれってそんな簡単に出来るの?」


「おお、こんな低予算で」


「これにこんな使い道が!?」


「一つ一つの作業は真似出来るレベルなのに積み重ねがえぐい……」


「何故それをしようと思った?」


「お前は何を言ってるんだ」



 ……などですね。


 そういう感想を自分で抱くような物を目指して何かを作っています。


 混ぜてはいけない物があったような気がするのは……気のせいですね、うん。



 まずは画像を何枚か。



挿絵(By みてみん)


※デフォルト。全部入れると小さい……。




挿絵(By みてみん)



※暗くすると光る。




挿絵(By みてみん)



護符(アミュレット)と。




挿絵(By みてみん)



※バーゲスト羊毛フェルトと。可愛いが黒すぎて写真だと埋もれる……。




挿絵(By みてみん)



※ランタンと。光り物コンビ。




挿絵(By みてみん)



※色々のせていくスタイル。




 ――ファンタジーアイテムは、闇の中で光るべきですよね?




 いえ、光らないのも好きですけども。


 ……光るのが……こう……とにかく、好きなのです。




 なんでこれを作ろうと思ったのかというと、それは2章連載時にまでさかのぼります。


 9~10月ぐらい。正確な時期はもう定かではありませんが、おおむねほどよい気温で、散歩にはよい季節です。


 お気に入りの散歩コースの一つに、とある公園があって、そこは桜の木が植わっていて、春には人気のない桜を楽しめる素敵な公園です。


 それ以外も人気がなく、静かに緑の中を歩けます。



 ……なんで人気がないかというと、小さいとはいえ山の上なんですよねー。



 そりゃ人気(ひとけ)人気(にんき)もなくて当然だわ……。(春はたまに人を見ますが)


 ちなみに4章完結時のバーゲスト羊毛フェルトを撮影したのも同じ公園だったりします。


 ……ほら、さすがに撮影してるの見られたら恥ずかしいですよね。



 折からの大風で折れた枝が遊歩道の真ん中に落ち、特に片づけられていないのも辺境クオリティ。



 とりあえず山の中にでも放っておくかと近付いてふと思ったのです。


 ……こことここをぶった切ってくっつければ……うちのマスターの杖に形が似てるな?


 さっそくお持ち帰り。


 縁というのは、大事にしたい物ですね。



挿絵(By みてみん)


※定規は25cm。赤線部で切断。




 これをまあ色々やると、冒頭の杖になります。


 「スタッフ」「クリスタル」「チェーン」の3項目で見ていきましょう。



 予算は、相変わらず正確な所が不明ですが、多分1000円ぐらい……?



 クリスタルが700円ぐらいで、チェーンが300円ぐらいだと思うんですよね……。


 もう少し安いかもしれないし高いかもしれない……。


 スタッフは拾い物とありもので済ませたので0円計算です。


 時給も0円計算です。





・スタッフ




挿絵(By みてみん)



 キノコに巣くわれていて、このままでは"毒茸の王ロード・オブ・マタンゴ"の杖になってしまうので、とりあえずキノコにはお引き取り願います。


 次に、枝をノコギリとナイフで落とします。


 そして、ナイフで皮を剥ぎます。


 時系列が前後しますが、桜ってやわらか! 優しい! クロガネモチに比べれば天国! 作業が楽!!



 ……それが後の悲劇に繋がるとは……その時の私は気が付いていなかったのです……。



 まあそれはさておき、皮剥ぎまで完了です。



挿絵(By みてみん)




 多少時間は掛かりますが、難しい事はなく。



挿絵(By みてみん)



 赤線の所に色鉛筆で線を引いて、ノコギリで切断します。


 そしてドリルで穴を空け、反対側にも穴を空け、ダボ(固定用の木の棒)を入れて接合! という流れになるわけですが……。



 ……ダボマーカーとかないなあ。(片方の穴にはめて、それと合わせると尖った先で跡がつくというアイテム)



 ふむ……つまり、穴と同じ径の何かをダボにはめて、反対側に印が付けばいいわけだ……。


 そしてひらめいた手法がこちら。



挿絵(By みてみん)



 短くなった色鉛筆を差し込み、それを、そのままダボ代わりにしてしまうというアイディア。


 なので、この杖の中身には古い色鉛筆が一本入っています。


 接合は木工用ボンドで。



 接合が終わった後、尖っている部分を削ったりちょっと形を整え、サンドペーパーでやすりがけ。


 番手は……覚えてない……。


 まあ粗めのでざっくり、細かめのでさらり、が基本です。



 白木をやすりがけする……それを幸せだと感じない人がいるでしょうか。


 すべらかで官能的でさえある感触は、「あれ? もうこのまま白木の杖でいいのでは?」と血迷わせそうになるぐらいでした。



 さて、そして塗装……ですが。


 ……塗料……買いたくないなって……。



 なので、今回は『鉄媒染』にて染色しています。



 媒染液の作り方は簡単、お酢にスチールウールを浸けるだけ。


 放っておけば溶けきります。酢の量とスチールウールに溶けた量で染色時の濃度が決まります。


 ちなみに使用した酢は黒酢。最早賞味期限とかそういう概念を超越しているような気もするお掃除用だったりしますが、特に問題はなく。


 さらに『紅茶染め』を併用するといい色が出る……という記事を見て、色合いが好みだったので、ティーバッグの紅茶を一つ一緒に入れています。



挿絵(By みてみん)



 ジャムの瓶にスチールウールがそこそこ浸かるぐらい入れて、ほぼ24時間。


 塗る道具はスポンジ(写真右端)。


 見た目通り、スポンジを割り箸で挟んだだけですが、染み出した液が手に付かず、塗り味も良好。

 チープな見た目ですが、見た目に似合わず出来る奴です。



 材料費もお手軽ですが、臭いがかなりきついです。酢がさらにきつくなった臭い……なのですが……。


 くらっとする。


 時間経過で抜けていき、今ではどことなく黒糖かりんとうっぽいような。



 鉄媒染のメリットは、これが化学反応によって木材表面の色が変化する(黒ずむ)ので、経年劣化に対して強く、経年変化で味わいが出る、という事です。


 ……スタッフ部分しか完成せず、急遽「レベッカの羽根ペン」をぶっ込んだのは覚えているので、この杖はそろそろ10ヶ月ぐらいでしょうか。


 ただ、染色直後からしばらくは風合いが変わりますが、一度馴染んだ後はそれほど変わっていないように思います。



挿絵(By みてみん)



※2019/10/24撮影。おそらく染色後表面が乾いたぐらい。



 直後はかなり薄いですね。それを念頭に置いて塗装しないと、濃くなりすぎる可能性があります。


 逆に言えば、媒染液自体も一週間置くなどして、かつ重ね塗りすれば、かなり濃い色を作れるようです。(ウォールナットのような)


 色々細かくテストしている人達もいて、参考になりますが、最終的にはテスト染色を重ねるしかないと思います。


 私は先の、角度を付ける際に切断した切れ端を、染色テストに使用しました。



 スタッフ本体はここまで。






・クリスタル。




 例のごとく設計が二転三転しました。


 さて、使用されている技術ですけども。

 以前、ランタンでもクリスタルは作りましたしね。



 当然のように違う方式を採用しています。



 いやだってほら。

 ロボットアニメだって、次々と新型機を投入しないと、視聴者に飽きられるじゃないですか?


 『永遠の基幹技術』という果てなき理想を目指して、隙を見て技術開発にいそしんでいる以上、枯れた技術と新技術をバランスよく混ぜていくのが大事だと思うのです。


 後、あのクリスタルユニットは素材と構造上耐久性に難があり、それゆえにランタンユニットという外装を必要としている、という事情もあります。


 ゆえに今回は新技術! それも新素材!!



 高度焼成レアアースを使用しました!



 見た目は薄緑がかった白い粉。


 末端価格でなんと、一部では中毒性も指摘されている白い粉の四十倍する品ですよ……。


 なお↑の粉は砂糖ですけど。


 10g/400円、100g/4000円いってしまう品。さすが希土類(レアアース)。レアの名は伊達ではない。


 蓄光顔料なので、光る部分はこれが担当しています。




 クリスタル本体は、前回の護符(アミュレット)(円盤)に引き続き、グルースティックの可能性を探るべく、グルー製となっています。



 グルースティックを「鋳型」に入れて「溶かす」方法を考えていました。



 鋳型の素材は工作程度で済む、クッキングシート+厚紙が望ましい。

 となると過度な熱を加える手段……具体的に言うとトースターやオーブンは好ましくない。

 ヒートガンはそこそこ良さそう。(でも持ってない)

 ドライヤーでは足りないか。

 ホットプレートやアイロンはクリスタルを作りたい以上、平面にしか熱を加えられない性質が足を引っ張る。

 ハンダゴテを突っ込む? リスクの方が大きい。

 真剣に考えた「湯せん」は鋳型の強度問題が悩ましい。

 単純にグルーガンで溶かして流し込むのも途中で硬化する可能性を考えればシンプルとはいえ大型のクリスタルには向いているとは思えない。

 しゅうまい食べたい……。



 ……今なんか混ざった。


 ――思考に混在するノイズ。瞬間的に垣間見えるビジョン。


 多分それを、人は時に……ひらめきと呼びます。



 そして、そろそろとそれを捕まえて、ノートの端に書いてみる。


 「蒸す……?」と。



 そんなわけで、相変わらず台所用品密着型の製作手法でお送りします。


 鋳型はクッキングシート+牛乳パック。


 熱源はガスコンロでもいいのですが、今回は電熱器を使用。


 こんな感じになります。



挿絵(By みてみん)



 細長いピラミッドを二つ組み合わせたような設計ですね。


 トマト缶の上部を気持ち断熱するためにアルミホイルで覆い、水を入れて電熱器の上に。


 ……あっついなー。(クリスタル製作時期は、まだ夏)


 しかもトマトのいい匂いが食欲を誘う……。



 割と順調ではあったのですが。


 途中でふと違和感が。



 ……音が変わっ……た?



 どうしてだろうと思ったのは一瞬。

 『そんな馬鹿な真似』をするはずがなかった。少なくとも台所では。



 水が蒸発しきっている。――空焚き。



 電熱器だろうと空焚きは空焚き。慌てて作業を中断。鋳型を外して、水を補充……。


 したところで、さらに悪い事に気が付くコンボ。


 妙に膨れた鋳型。



 たわんでいる。



 ――水蒸気で、牛乳パックの型を固定していたマスキングテープが剥がれて、型崩れし、重量を支えきれなくなっている。


 まだ冷め切っていないのを利用して、床に押しつけて強引に形を戻し、マスキングテープをガンガン使い、再形成。ことなきを得ました。



 ……しかし、ここでまた問題が。

 問題ばっかだなという感じですが、トラブルやアクシデントとはそういうものですし、行程を一つ止めれば、次の問題が出てくるのはむしろ当然です。


 ……そう。



 この作業は、途中で止める事を想定していない。



 水蒸気を中心とした熱のみでグルーを溶かすのは難易度が高いと判断したゆえの「グルーガンで絞り出した温度をなるべく落とさずに行き渡らせる」という手法。


 ……この『温度をなるべく落とさずに』部分が、作業の中断と再形成で、もう取り返しのつかないレベル。



 水の補充ぐらいならどうとでもなったと思うのですが。

 ……まあ、なんとかなる事を願ってもう一度火に掛けるしかないっていう。


 お祈りしながら眺め、上部空間にどうやって熱を伝えるか考えます。


 グルーは熱を伝える性質を持っているはずなので、時間を掛ければ再溶融も可能だと思いつつ、正直暑い。


 そこで頭をよぎる目玉焼き。


 少しフライパンに水を入れて、蓋をする事でひっくり返さずに上面に火を通す手法――



 熱の逃げ場をなくして空間内の温度を上げる。



 ……ふむ。

 そっと牛乳パックの底など、蓋代わりに載せてみる。


 ――果たしてこれが効果があったのかは分かりませんが、しばらくすると溶けました。


 二個目は一個目の反省を踏まえ、水を多めに、型をマステでがっちりと固定。



 一回目では計っている余裕がなかった作業時間は、余熱5分を含め55分。


 グルースティックの使用本数は26本と25本。やっぱたわんでる分多いかも。


 1本6円ちょいの計算で……まあ300円ぐらい?


 塗料代の推定が400円です。



 しかし、テスト時から気付いていたのですが、「透明」グルーなのに、普通に乳白色だなーって。


 グルースティックで普通に出しても同じなので、加熱しすぎたせいとかではないと思います。



挿絵(By みてみん)



 二個合わせるとこんな風。



挿絵(By みてみん)



 接合は迷った結果ホットプレートで……。


 ↑写真の後、クッキングシートごと引き上げ、水平な場所で冷まして底面を平らにします。カッターで端を切断。


 再びホットプレートで両者共に軽く溶かし、くっつけ、冷めたらまた端をカッターで切ります。



 その後、小さなアイロン……「パッチワークこて」という物で表面をなるべく滑らかに。


 さらに、紙やすり240番と砥石で表面をなるべく滑らかに。


 ただ、正直軟質のために紙やすりで削りにくく、熱を加えると鋭角が溶けるので、多分表面を完璧に滑らかに仕上げるのに向いてない。


 冷凍したり、耐水ペーパーなので流水で洗い流したり、こまめに砥石と本体に水を掛けたり、摩擦熱を軽減する工夫が必要でしょう。



 なんかちょいちょい混ざってくる妙な言葉(といし)は……ええと、ほら、刃物を研ぐって、要は金属を削っているわけで。



挿絵(By みてみん)



 『非食品用マイ砥石』にて、


 効果はほどほど。削る効率は普通ですが、面が大きく、時折水を掛けて冷却し、削りかすを流せるというのがメリットです。


 削りかすの出方は、消しゴムに似ていますね。



挿絵(By みてみん)



 完全な平面は難しいですが、これぐらいにはなります。




 塗装に入ります。


 青マジック(水性顔料)で軽く下地を塗り、薄め液で、辺と頂点を中心に落とします。



挿絵(By みてみん)



 その後、蛍光ブルーのラッカー系塗料を塗ります。


 ……ただ、テスト時には上手く混ざっていなかったらしく、色が濃いめ……。


 光るとむしろイメージに近くなったぐらいなのですが、どっちを重視すべきなのかは難しい所……。



 その後、蓄光顔料(高度焼成レアアース)をネイル用トップコートに混ぜ蓄光塗料にして、二回重ね塗りし、さらに辺と頂点にも一筋追加。


 ……ただ、写真のような光り方をするには足りないみたいで、撮影前にライトで蓄光させる際、辺と頂点をなぞるようにブラックライトペンを当てています。


 本来裏面が白だと蓄光塗料(顔料)としてはベストだというので、そういう意味では光り方は控えめかもしれません。



 その後、塗膜の保護のためにネイル用トップコートを二度塗り。


 主にサンドペーパーで表面処理に入ります。



240番

 ↓

400番

 ↓

800番

 ↓

1200番

 ↓

砥石

 ↓

2000番

 ↓

コンパウンド(車用)



 となっています。


 ……いやほら、ちゃんとしたコンパウンドを買うのは結構高くて。


 ネイル用トップコートは、日常生活を前提とした爪の保護用アイテムなので、耐水性はあります。


 砥石耐性もあると言えばあります。



挿絵(By みてみん)



 数少ない自然光下での撮影。綺麗です。


 ……異世界っぽい絵面と言えるかもしれない。




 ……全体を通して、やすりがけが辛い戦いだったので、もしも時間を巻き戻せるなら、やらないような……。


 各種実験データが手に入った上で、ならですが。


 仮説を立てて、それを実験・実証し、新技術とし、それを搭載した試作機を作る……その繰り返しだけが、人の技術を高めてくれます。



 そして極論すれば、試作機とは、試作機を作るために存在します。



 そして試作機で得られたデータは次の試作機の礎に。

 次の試作機で得られたデータは次の次の試作機の礎に。

 次の次の試作機で得られたデータは次の次の次の試作機の(以下繰り返し)


 次の試作機のために。

 新しい設計のために。

 新しい技術のために。

 常に二世代先を目指して。

 いつかの基幹技術のために。

 全ての技術を枯れた技術にする事を目指して。



 創作とは、永遠に試作機を作り続けるだけの、簡単で楽しいお仕事ですよ。



 終わり? 終わらない開発に心が折れるまでありません。

 なので強いて言えば、永遠に完成しない何かを、永遠に完成しないからこそ追い求められる人向けかもしれません。


 でも、一区切りはありますしね。


 データさえ得られればいいので、何か分かりやすい成果を求めるよりも、優しい世界です。

 満足感重視でもいいですよ。

 全部枯れた技術で完コピだっていいのです。


 本人の腕に刻み込まれた技術もまた、次の試作機の礎です。



 「小説家になろう」向けの文章ではないような、むしろここでこそ必要とされるような……。






・チェーン




 ええと、塗装中は基本的に両手が塞がりまして。


 つまり何が言いたいのかと言うと、あまり写真がありません。



 百均のプラチェーン(細)×2を、4分の3ほど使っています。



 ポリプロピレン製なので……色々やりましたが、結局プライマーに頼りました。何かに負けた気がする。


 そして、ラッカー系の黒を二度塗り。


 塗装方法は薄め液多めのどぶ漬けです。こう、ぼちゃんとくぐらせて。


 そして吊り下げて乾燥……なのですが、ここで薄め液が揮発していくので溶剤臭が大変きついです。


 しかも、たまにチェーンを揺らしてやらないと重なり部分がくっついて固着します。(1回目そうなった)


 塗装の下準備のプライマーも大変きつい溶剤臭がします。



 なので、換気はかなり強めに必要です。


 私は外でやりました。9月とはいえまだまだ暑く、蚊の対策のために長袖長ズボン、塗装のためにマスク・手袋……。


 蚊が来るのに、動けば手元が狂うから蚊が来ても作業の手は止めず……。


 ……狙撃手かな?




 そんなこんなで基礎塗装完了です。


 チェーンの配置を改めてイラストと照らし合わせて決めていきます。



挿絵(By みてみん)



 木の枝というのは、二股に分かれて成長していくだとか、ある程度の法則性を持ちつつも、基本的には環境で変化します。


 前の枝を避けて、なるべく葉が重ならないように、それでも太陽の光を一杯に受け止めるために伸びていく……その果てに培われた枝振りが、その枝の事を何も知らないひとが書いた小説の中の、魔法の杖に似ているというのは、不思議ですね。


 ある日の大風に耐えかねて折れ、捨てられたり腐ってボロボロになる前に拾われるという事にも、縁というものを感じざるを得ません。



 ……え? よく見ると結構イラストと違う?



 そりゃあまあ、自然界の産物ですからね。仕方ないですね。(手のひら返し)


 鎖が金属塗装の方向性(ランタンを踏襲)により暗めに、クリスタルも未発光状態では青が濃かったり、違う所も割とあります。



挿絵(By みてみん)



 固定金具(クリスタル側)はこんな感じ。


 ランタン時の厚紙(残り)を糸で縫っています。グルーで固められますが、一応布ガムテープでも補強。



 さて、位置決め……なのですが、イラストと違うので、現物合わせですね。



挿絵(By みてみん)



 一本ごとに長さを決め、接合です。


 金具側はニッパーで一部を切り欠いてグルーでくっつけた……。



 作業中、クリスタルの耐久試験(らっかじこ)を何度か行いました。


 高度60~80センチ程度までの落下耐久試験をクリアしました。


 肉抜きや、中にライトを仕込むなど色々考えていましたが、強度重視でよかったとすごく思います。



挿絵(By みてみん)



 スタッフ側は、目打ち→ピンバイス→電動ドリル……のドリルを手動で使用という三段活用で穴を開け、グルーで。


 チェーンの固定後になりますが、グルーで、木を一周する金具(風)の作り方のコツを少し。


 グルーをまず盛った上で、さらにグルーガンの先端を盛ったグルーの中に突っ込み、足していきます。


 後は少しずつ杖を傾けて重力をコントロール。



 クリスタルが約200g、杖全部では約700gほどあるようなので、大変重いです。



 さらに両手がふさがり、作業特性上手が離せないので、消費の激しいグルースティックの装填時は、膝にグルーガンを挟み(熱対策に、汚れてもいい長ズボン・スカート・膝かけなど保護具推奨。かつ、グリップ部分を挟む事)


 私の使用しているグルーガンは構造上、引き金を引けなくなってから次のグルーを出すためには、新しいグルースティックを装填し、それで押してやる必要があります。(使い切りたい時は、同じ太さの棒などでも可)


 そして左手は杖、右はグルーガンでふさがっているので、グルースティックを差し込みながらさらに顎でグルーガンの引き金を引けるようになるまで押し込むという、あまり人様に見せられない体勢になります。


 ……相方さんに「グルー入れてくれる?」と頼める人は、手伝ってもらえばよいのではと思いますよ?


 私は手が四本欲しい。




 作業中は、チェーン自体にはグルーが付かないようにしたい所です。



挿絵(By みてみん)



 なので、クリスタル側金具やスタッフのチェーン根元などの作業時は、突っ張り棒やら糸やらを駆使し、作業環境を整えます。


 ガレージとかにあったりする吊り金具と同じ発想ですね。


 ちなみに上の金具は糸に繋がり、糸は突っ張り棒に下げられた金具を通り、クリップで挟んで長さをフレキシブルに調整出来る優れもの。フェライト磁石(ランタン製作時の余り)で重さも足しています。


 どこか涙ぐましさすら覚える現場の工夫。



 やっぱり相方さんがいれば解決するのでは? とも思いますが、割と地味な作業が延々続くので、たとえそんな相方さんがいようとさすがに付き合わせられない気もします。


 ……その地味な作業も相方さんと会話しながらなら楽しいのでは? と思ってしまいましたが。


 わ、私作業中はトリップするタイプだから……。(震え声)


 作業中はいいのですが、一区切り付いた瞬間疲労がガクンと来るのはどうしたものやら。



 ……それが、悲劇の切っ掛けだったのかもしれません。



 それは杖を運んでいた時の事。


 脚に、何かが、絡んで。


 足下で、何か、音が。




 ぽきん。




 ……?


 …………。


 ………………。



 ぽきん……?



 いや待て私。今のは私の脚の骨が折れた音だ。(大惨事)


 杖が軽いような気がするのは、な? お前の右腕の筋肉が今この瞬間に肥大化したんだ。(異常事態)



 そして足下を見ると、中途からへし折れた杖の姿。



挿絵(By みてみん)




 畜生! 誰が……一体、誰がこんな事を……!! (←)


 トゥル~~~ン……と、気の抜ける音が聞こえるような気がするなー。


 代わりのない素材なのになー。



 ……寝よう。




挿絵(By みてみん)




 「"病毒の王"の杖/製作記」完!


 俺達の戦いはこれからだ!


 "病毒の王ロード・オブ・ディジーズ"の杖先生の来世にご期待下さい。











 ……っていう現実逃避はこのぐらいにして、そろそろと折れた面をチェック。


 合わせてみる。


 砕けては、いない。


 ……よし、悪くない。よーし! (少し元気になる)


 ……ポジティブに考えよう。



 杖が長すぎて作業効率が悪い状態から解放されたと考えるんだ。



 補修は明日に回す事に。




 ――翌日。


 実際、短くなったので、チェーン部分も石突き部分も割と作業が楽。


 塗装が一段落し、乾燥時間の間休憩しようと立ち上がって、一歩を踏み出して。




 ぼきん。




 …………。


 ぼきん? (二度目なので少し復帰が早い)



 あー……ちょっと砕けてるね……。


 ……人間とは……所詮……過去から学ばない生き物……。



 まあ、この程度で杖はともかく心を折っていられないので速やかに復帰。


 ……昨日より折れ方がアレですが、大丈夫、グルーを信じろ。


 ポジティブに考えよう。


 ほら、この状態まで砕けた木材をくっつける必要性に駆られる事なんて滅多にない! 補修実験が出来るよ! (割と無理のある励まし)



挿絵(By みてみん)



 私が言える事はただ一つ、グルーを信じろ!


 クリスタルのと同じ透明(という名の乳白色)。硬化中の手持ちぶさたに記録写真を撮ったので、まだ透明度が高めですね。これぐらいの透明度が良かった。


 通販画像ではこれぐらいだったような……硬化中を撮ったのかな……。


 実は贅沢して、グルーガン二丁持ちです。黒と透明を一つずつ装填してあって、使い分けられるって寸法ですよ。


 硬化後、丁寧にカッターで削り欠き、他の所と一緒にごく少量のアンティークメディウムで汚しを入れて誤魔化します。




 さて、チェーン塗装は、ラッカー系基礎塗装の上から開始します。


 まず、プラチェーンの工業製品感を減らし、ランダム感を出すために、グルーを適当に盛っていきます。


 たまーに塗装が剥げ、下地の黄色いプラが見えているのでそこらもカバーです。


 グルーはこの瞬間は塗料です。



 一カ所溶剤が強すぎたか、負荷が大きかったか、ひび割れ掛けている所があったので、徹底的にグルーを盛ります。 


 グルーはこの瞬間は補強材です。


 強い。



 百均のグルーは糸を引きやすいと言いますが、百均じゃない透明のグルーも糸を引くので、もうそういうものと思った方がいいかと。


 ちょっとしたコツは、糸が引くのは仕方がないと割り切る事。


 焦って手で払おうとしたりすると、余計ひどい事になります。


 グルーガンを離すのをゆっくりにしたり、納豆の糸を箸で巻き取る要領でくるくるとグルーガンの先端に巻き付けるのでも大分軽減されます。


 硬化してしまえば、ハサミだろうとカッターだろうと切れますし、まあ大抵はなんとかなるものです。




挿絵(By みてみん)



 そして、金属部分の塗装はアクリル絵の具を中心に。


 相変わらずメラミンスポンジ塗装。

 バーゲスト羊毛フェルト時に補充してあるので、メラミンスポンジの貯蔵は十分です。


 マスキングテープでクリスタルをしっかりガード。

 トップコートは問題ありません。



 色を入れる順番は……。



1、アクリル黒をぽんぽんと。(濃いめでもOK)


2、アクリル銀をかすれさせるようにこすりつけたり、ぽんぽんと。(ティッシュや新聞紙でこすりつけてもよし)


3、アクリル金を銀よりは少ないぐらいでこすりつけたり、ぽんぽんと。


4、金にかぶせるようにしてアクリル茶色をこすりつけたりぽんぽんと。


5、一部は茶色にかぶさるようにアンティークメディウムをこすりつけたり。


6、それら全てをアクリル黒でぽんぽんと潰していく。



 2~5で情報量を増やし、6で大人しくさせるイメージです。


 最後の黒の濃さによっては、1も省略出来なくはありません……が、後からは足せないので、その辺は手間と塗料の節約と、完成予想に合わせて臨機応変に。




 さて、中々イラストに描かれない石突きを作っていきます。


 描写はたまにあります。石畳と仲が悪く、火花を散らしています。



挿絵(By みてみん)



 たまたま手元にあった、ポリプロピレン製の「マイクロテストチューブ」が丁度いい塩梅だったので。


 メラミンスポンジの、塗装にすら使えなさそうな切れ端(バーゲスト羊毛フェルトの残り)を詰め込み、錆び釘(護符(アミュレット)のディスプレイ額から抜いた物)をグルーで固定、ピンバイスで開口しておいた杖の端に差し込み、グルーを上からたっぷりと。



 ポリプロピレンは、あらゆる塗装を弾き返す無敵にさえ思える素材……。


 しかしグルーなら容易く接着させる事が出来る……そう、グルーなら!


 このまま高笑いを上げたいような気持ちで生き埋めにした後は、グルーをちょいと出し、ランタン時にも使った厚紙製ちびリベットを4つ貼り付けます。



挿絵(By みてみん)



 後は「こて」でちょっと形を整え……。


 なお、塗装はチェーンと同じ。同時進行です。


 石突きは杖本体の保護のための部位なので、底は錆び(茶・アンティークメディウム)を強めに。


 銀も強めにかすれさせて、表面が削れた風も出しています。


 そもそも、この杖の鉄(?)部分錆びるのかなー? とも思うのですが、魔法がない世界では少し錆びたり汚れたりしてる方が「らしい」ので、ランタンと同様に金属風塗装しています。


 ただ……ランタンと違って物がデカすぎるせいか、遠くからみるとのっぺりするんですよね……。



挿絵(By みてみん)




 何はともあれ、マスキングテープを剥がして完成!



 ……三回目は折ったりしませんよ?


 期待しても何もないんですからね!?



 ……この先……この狭い部屋で、この大きくて脆いアイテムが果たして何日無事でいられるのか……。



 先の事は神ならぬ身には分からぬ事……。


 それが人間に許された『状況から予測した未来』の話だろうが、現実から目を背ける権利を人間は有しているのです。



 でもやっぱり……どこ置いても死にそうな気がするな……?



 お亡くなりになった時は、活動報告辺りで追悼報告でも。


 ……あ、遺影を再利用すればいいのか。エコですね。






 さて、そんなわけで、「"病毒の王の杖/製作記」でした。



 製作系番外編のスピードで本編(小説)が書ければいいのになあ、とよく思います。(文字数と時間で言えば、2倍ぐらい。写真の紐付けさえなければ3倍)


 まあ、これは現物があるからなのかもしれません。


 私にとっては、イラストやこういった製作物は、小説の世界を自分に理解出来る形に落とし込むために必要なプロセスと考える事も出来ます。



 ……でも、まずその世界やテキストがないと製作自体が……あれ、鶏と卵が見えるような。

 どこから最初のイメージって来てるんでしょう。



 ――ギリシャ神話には芸術を司る女神様、ミューズが(複数)いますが、それを受けて、創作時に必要なひらめきの事を「ミューズのささやき」と言ったりもするそうです。

 ちょっとロマンチックな言い回しですね。




 でも、うちのミューズ様バグってるような気がする……。




 「ミューズ様のせいにすんな!」という声がどこからか聞こえたような気が。


 きっと、幻聴ですね。


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[良い点] 作者さんは本当にとても美術が上手くて、大好きですね!いつもいつも作品中のアイテムを超一生懸命で創り上げますね!特に詳しくないですが、とても凄く感心しています!
[一言] あの杖実は折れて、接着剤でくっついただけの物だと知れば人間はさらなる絶望へ…
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