番外編・「羊毛フェルトで作るバーゲスト/製作記」
・簡単な注意書き
※今回の番外編の扱いは活動報告・あとがきに準じます。作中のキャラクターは出てきません。
※写真を使用しているため、縦書きPDFなど、イラストに対応していない読み方を想定していません。
※その場合、なんか話の流れからしてここにそういう写真があるんだな、ぐらいの感覚でお読み下さい。
※番外編って言えば何してもいいのではと思い始めました。
なんとなく1章につき番外編は1回だったのですが、実はそんなルールは、自分ルールとしてさえ存在しないのです。
番外編がない時もあるでしょうし……今回のように1章に2回更新の場合もあるでしょう。
そんな訳で、本日ご紹介するのはこちらの品。
※このポーズで高さ約15cm。
「一度挑戦してみたい技法」はこの世界に数限りなくあり、しかし、適性に予算に何より時間。際限なく手当たり次第に手を出すという訳にはいきません。
とりあえず予算に関しては、私は低予算構築が大好きなので、そんなに大きな問題にはなりません。
これは私の財布の中身が可哀想とかそういう理由とは、多分関係なくて……。
低予算ならば数を作る方向にもシフト出来るし、何より、ベーシックなアイテムかつ低予算でまとめれば、「誰もが挑戦出来る」のです。
なので私が「百均で作る~」「ホームセンターで揃える~」「プチプラ」「低予算DIY」とかそういう響きが好きなのは、「自分がそれを出来るのではないか」と思わせてくれる感覚そのものなのでしょう。
なお、それと私の財布の中身が可哀想なのは、また別の話です。
ちなみに使用額は今回よく分からなかったり。
よく分からないのは、そのためだけに買ったものではない商品や、家にあったものが含まれているから。(このために買った素材もかなり残っていたり)
このために買った物で言うなら、羊毛フェルト用ニードルを筆頭に500円ぐらいかな……。
使用した素材分で言うなら、200円ぐらいでしょうか?
羊毛フェルトは、いっぺん試してみたかった技法の一つ。
羊毛の質や作品サイズやカラーバリエーションにもよりますが、低予算ルートも存在し、他の技術との親和性も中々のもの。
何よりもふもふ。この質感は中々他の技法では出せません。
しかし、カラーバリエーション多彩な作品は初心者には難しそうだし、何より何を作るのかとか、何のために作るのかとか……。
繰り返しになりますが、ただ作りたい気持ちだけで、手当たり次第に手を出すという訳には、いきません。
だから、その理由を与えてやればいいという結論に達したのは、至極当然……だったのか、それとも悪魔のささやきのせいだったのかは、定かではありません。
ただ、私の中の何かが、こうささやいた。
ほら、そこに黒単色で、もふもふで、作品を作れば番外編として公開出来そうな子がおるじゃろ?
オペレーションの単純化を図る事で効率化するのはファストフードでも定番の技法ですよ。
黒一色なら、混色とかの手間が必要ないのです。
さて、このバーゲストさんは、「基本的に」羊毛フェルトで出来ています。
「ほぼ」羊毛フェルトの技法で作られていて、「おおむね」羊毛フェルト作品に準じます。
ただ、私はこの技法を使った事がない。
書籍や動画などで手順は理解しているものの、これが「本人の立体センス」及び「手作業のスキル」に左右され、「膨大な時間を使う」事ぐらいは理解出来る。
これは習熟を必要とする類の技術であり……素人が手を出していい技術なのか、分からなかった。
分からないものは、分かる所まで引きずりおろしてやればいいのです。(暴論)
まずは、改めて紹介がてら何枚か。
そういう訳で行って参りました野外ロケ! (どういう訳だ)
リュックに水筒とバーゲスト詰めて公園に行く日が来るとは思いもよりませんでした。
※このポーズで鼻先から尻尾の付け根まで約17cm。
基本の直立ポーズ。
くつろぎポーズ。縦長構図は難しかったので苦肉の策。
上目遣いポーズ。あざと可愛い。
お腹見せポーズ。あざと可愛い。(2回目)
遠吠え風。割と野性味ある。
ラブリー。思ったよりバーゲストは花が似合う。
御衣黄桜だそう。
……あれ、桜ってこんな花びら多かったっけ?
多分八重桜系。
頭に浮かぶ言葉は南国美人。
……ツツジ?
花よりもお前の方が可愛いよ!
……これもツツジに見える。
葉っぱも似合うバーゲスト。
カエデ系の分かれた葉っぱは風情があってよいですね。
なんかやり切った感ある……。
……これを読んでいるあなたは、羊毛フェルト作品を見慣れているでしょうか?
私が、この作品を作る前にこれを見たら、多分「ん?」となっていたでしょう。
いや、今でも普通に思いそうですが、とりあえずそういう話ではなくて。
通常、羊毛フェルト作品は、可動に適していません。
「羊毛を専用のニードルで刺し固める事でフェルト化する」という羊毛フェルト(ニードルフェルト)の技法と「可動」という要素の相性が、よくないためです。
首だけや、テディベア方式のような可動に留まるのが一般的です。
でも、私は思うのです。
1ポーズだけでは、撮影のバリエーションが足りなくて寂しい、と。
そして、こうも思うのです。
フル可動はたしなみ。
・本体制作編
さて「基礎は大事」という言葉があります。
「困難は分割せよ」という言葉もあります。
この二つを私なりに解釈すると「基礎フレームをブロックごとに分割せよ」となります。
可動の問題を、一般に素体ガイドとして採用されるテクノロートよりも柔軟性に優れる「ガーデンソフトタイ」を仕込む事により解決!
羊毛フェルトのコスト問題を、「メラミンスポンジ」を仕込む事により解決!
可動部分はなるべく長毛で隠せ! そのためのバーゲストだ!!
実はこのガーデンソフトタイを使う機会を、かなり前から狙っていたのです。
ホームセンターにて入手したものですが、ふと動かしてみた所、非常に感触がよかった。(2.5mm×10m)
いつかどこかで、何かのメインフレームに採用しようと思うぐらいには。
常に新技術を投入する機会を窺っていて、最近番外編と銘打てば何をしても許される風潮が(私の中で)蔓延しているので、それに乗じた形になります。
メラミンスポンジは……自分でもよく分かりません。
前の番外編で、金属表現の塗装に使ったぐらいで、普段は台所が活躍の場なのですが。
ただ、コストが安く、加工が容易で、一定の強度を持ち、ニードルと接触しても針先にダメージを与えない柔らかな素材……という事で、採用された理由を聞けば、納得して頂ける事と思います。
基礎設計はこんな感じ。
妙にメカメカしいですが、メカも好きなので問題ない。
右上は展開図。なお、バッテンされてるのは、設計段階から製作にあたって廃棄された部分です。
本品は、おおむね三つのパーツで構成されています。
ガーデンソフトタイとメラミンスポンジで構成された「基礎フレーム」。
手芸用の綿と、黒のフェルトシート(百均)による「ぬいぐるみ内装」。
最後に、羊毛フェルト(主に毛糸)で植毛された「羊毛フェルト外装」。
……で、もう1枚あった「ぬいぐるみ内装」の設計図……つまり基礎フレームを覆う、ガワの基礎設計がですね。
設計通り切り出してみると、どう見ても尺が足りないっていうか……。
元から足りない感じなのに、中綿を詰めるとさらに足りないっていうか。
心の設計担当が「ちゃんと設計してるんだから足りないはずないでしょ? まあ足りないなら足りないで、そっちでなんとかしてよ」などとのたまう光景がふっと頭をよぎる。
………………。
…………。
……。
まあ設計したのも現場も自分なんですけどね。なんか、設計段階の尻ぬぐいをさせられている気分になるのです。自分だけど。
余りにタイト通りこして現実が見えていないクソ設計すぎるので、恥ずかしい上に役に立たない設計図を公開するのは差し控えさせて頂きますが、まず、生き残った基礎フレームはこれぐらい動きます。
ただ、前足、後ろ足の先端パーツが細すぎた。
メラミンスポンジは所詮スポンジであり、加えて、ワイヤーならともかく「ガーデンソフトタイ」……ソフトビニールにてワイヤーを覆う事で、独自の柔軟性を持たせる構造が、開けた穴を通すのに苦労する欠点になるという、泣ける事態に。
なのでとりあえず、後ろ足はガーデンソフトタイででっち上げ、前足はフェルトを棒状に縫い合わせて綿を詰めたり、強引に羊毛フェルトそのもので補った……のですが、芯がソフトビニールなので色々とギリギリ。(写真は改修前)
なのにポーズと撮影に支障はないぐらいの自立性は確保出来ている不思議。
……全ての現場の苦労が報われますように……。
そして、「ぬいぐるみ内装」までがこう。
「ドレーピング」という服飾の技法をご存知ですか?
型紙を使用し、平面で布を裁断するのではなく、本人やトルソーなどに当てながら、立体裁断していく技法です。
なんかこう、そんな感じで作られています。
……胴体は足りないくせに、頭のガワが適当に縮めてもなお大きかったりするのは何故だ。
設計担当(本人)が、今回は速度を優先して、現場(本人)での修正を任せたのも分かる……分かるんだけど……。
これが他人の設計だったら殺意が湧いていた所だった……危ない……クソ上司は私だった……。
なお、お耳ですが、フェルトシート2枚重ねで基礎を作り、後で羊毛フェルトを少し刺し付けています。(頭の基礎フレーム写真はオマケ)
……羊毛フェルトの作品を見ていると「羊毛をニードルでフェルトシート状にします」というのがよくあるんですが。
それ、最初からフェルトシートじゃ駄目……? と、思ったのが発端。
混色の問題とかあるのですが、うちの子は黒一色なので問題ない。
ピンク部分には、ちょっとだけ朱色の色鉛筆で赤味を足したり。イラスト的にはベースはもう少し薄い茶色でも良かった説がある。
・植毛(と素材)
語るべき事が少ない。
見えている部分はかなりまっとうに作られています。
見えてない部分には、新技術と手抜き工事が詰まっています。
素材もそうで、羊毛の純正品が地味に高いのと、最終的に量がどれだけ必要になるか分からなかったので、ある程度自作する事にしました。
そこで登場するのが「スリッカーブラシ」。(百均)
もふもふを求めるあまり、ブラシをかける相手もいないのにエアブラッシングすべくペット用ブラシだけ購入した……なんて事はもちろんありません。
これでフェルトシートをブラッシングしていくと、表面がもふもふします。
これだけでなんとかなる作品もあるような気がするのですが、限界まで毛玉を取られた暗幕のごとく透けて薄くなっていくので、基本的には、この毛の方を取りましょう。(ちなみにぬいぐるみ内装の方は、効果があるのか分かりませんが、ニードル作業をはかどらせるべく、これで表面を荒らしています)。
これでもなんとかなると思うのですが、広範囲をガンガンやっていかないと量が取れなくて、一応シート状のフェルトを温存しておきたかったのもあり、植毛用のフェルトは他の所から取っています。
ここに、いつ手に入れたかも定かではない黒い毛糸玉がございます。
それを、10センチ間隔に切って、よりをほどいて、引っ張ってほすぐだけの簡単なお仕事です。
量は↓ぐらいになる。そこそこ大量に必要。
植毛自体は、ざっくりイラストにするとこんな感じ。
中央を刺し、折り込んで、また刺す。
適度にカット。
基本はこの繰り返し。
書籍や動画でも紹介されている、リアル系羊毛フェルトにおいておそらく一般的な技法の一つ。
ちょっとだけアレンジを加え、中央で折り込まず、少し上の方で折り込んで刺し、重層的にもふもふさせるという技法も使っています。どこかで。
多分足かなあ。(うろおぼえ)
長毛なのもあり、植毛の手順は、トタン屋根をふくイメージで重ねていきます。
足、腹側を首まで、胴体の上を、首から背骨(があると想定して)の線で、頭の目元、おでこ、鼻面、耳の裏側に追加、最後に尻尾かな?
写真がないのは、作業中は両手が塞がるから……。
なおカットですが、少しずつ切っていくのが基本。
足りなくなったら一応足せますが、重ねていく都合上、やり直しになる可能性もあります。
ハサミを直角に当てない、一回に切る量を少なくするという基本に加えて、重なっている下側の毛を刈り込むのもあり。
また、羊毛フェルトシートで、一度ぬいぐるみを作った上で植毛しているので、多少……いえ、かなり地肌が見えても許されます。
フェルトシートが白だとダルメシアン疑惑。
肉球はフェルトシートのかけらを刺し付けましょう。耳と同じピンク。リアルならもう少し薄い色でもいいんですが、目立った方が可愛いので。
爪も含めて、リアルだけど全部再現するにはサイズがきついので、可愛い要素を抜き出していくのだと割り切ります。
口は開閉させたかったし牙とか舌とか仕込みたかったんですが、度重なる設計変更に耐えられず消滅しました。悲しいがよくある事。
口元は、縒った羊毛を刺し付けています。
目は市販のグラスアイで、顔の周りやる前に、目打ちで開けた穴に刺し込んでボンドで固定。
実は予算の半分近い高級品。
鼻はフェルトシートを適当にカットし、マニキュアでつやを出しています。濡れてない犬の鼻なんて。
鼻はノーズパーツというのが売られているので市販でも良かったのですが、2個セットとは言え、目と同じ値段と言うのが。
……余らせた鼻の使い道が、バーゲスト試作一号機に次いで、試作二号機を作るしか思いつきませんでしたし。
最後にブラッシング。大きめのブラシと歯ブラシを併用しています。
さらに目打ちの先っぽ、それに手でいい感じに整えます。
ブラシの使用は、毛が抜けるのでやりすぎ注意。
一応フル可動を謳ってはいますし、可動自体は行えますが、それによって羊毛フェルト部分に掛かる負荷は大きいです。
撮影、及び飾る時に、お気に入りのポーズを探せる、ぐらいに思っていた方がいいのかもしれません。
・オマケ
ランタン……バーゲスト……もふもふ……。
頭の中を稲光が走るように、あるいはニュータイプ音が響くように、ひらめきが降ってきました。
もふもふランタン! すごい! 心があったまる!!
こんなものを人類の革新と呼んだら怒られるでしょうし、そもそも私は完全にオールドタイプですが、大体のニュータイプ専用機はオールドタイプが作っていて、つまりそういう事です。
でもクダギツネ的な、隷属させたバーゲストを召喚する呪いのアイテム感もちょっとある。
まあバーゲストはイギリスの妖精(妖怪?)の一種ですしね?
次回から5章です。
・使用した素材について、一部、当日の活動報告に追記しています。
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