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クリエイター少女の奮闘記  作者: 前川
中学生編
15/41

15 気持ちと気持ち

「「「「えっ?」」」」

「えっ?」


LUPOのメンバーと楓の素っ頓狂な声が重なる。


「えっと、川原さんが曲を作ってそれを私たちが録音するって聴いてるんだけど・・・」


ベースの渚が今回の作業内容を今一度確認する。


「私もそう聞いてますねぇ・・・」

「なら・・・」

「でも皆さんはそれでいいんですか?」


渚の言葉を遮るように楓は問いかける。


「今回の話をいただいて、皆さんの今まで作った曲と活動はチェックしておきました。ずっとオリジナルでやってきてついにレーベルと契約するところまで来て出す最初の曲が人が作った曲なんてぶっちゃけ萎えませんか?」

「そりゃぁまぁ・・・」

「そうだけど・・・」


楓の率直な問いに正直に首を縦に振る莉子と渚。


「で、でも大丈夫なの?だって今回の楓ちゃんへの依頼って楓ちゃんが曲を作ることなんでしょう?」

「まぁ、まずいでしょうねぇ・・・」

「えぇ・・・」


楓のつかみどころの無い回答に困惑する唯花。


「一つだけ皆さんに言っておきたいことがあります。それは私に作曲を依頼したマネージャーさんも、皆さんも気持ちは同じだということです」

「・・・どういうこと?それなら私たちに曲を作らせてくれたら良いじゃん」


ボーカルの莉子が楓の言葉に反論する。


「依頼をいただいた際、色々と詳しい話をしたかったので皆さんのマネージャーの鳥山さんとオンラインで通話させてもらいました。その時に鳥山さんはLUPOを絶対成功させたい、その為にはどうしても一発目の曲をヒットさせたい、自分たちのやりたい曲をやるのはその後からでも遅くはない、だから今話題の私に頼んだと言っていました。ちなみに私は人に曲を作るのがあんまり好きじゃないですし、ぶっちゃけ仕事が来なくて事務所をクビになっても良いと思っているので1曲のギャラはぼったくりもいいところの値段を提示してます。それでも構わないと鳥山さんは言っていました。よっぽど皆さんに幸せをつかんでほしいみたいですねぇ・・・」


LUPOのメンバーが自分たちの知らなかった話を聞かされ各々の顔を見合う。


「・・・でも、そこまで鳥山さんに言われたんならそれこそ川原さんが作らなきゃダメじゃないの?」


至極当然の疑問を莉子が楓に問いかける。


「それが一番LUPOっていうバンドにとってプラスならいいですけど、私は違うと思うんですよね」

「違う?」

「はい。だって、まず皆さんが納得してませんよね?提供する側が納得していないモノを世に出すのは私はやめた方がいいと思います」

「例えばだけど、こっちが納得してなくても世間でウケたらそれで構わないんじゃない?」


楓の考えに対して反論を返す渚。


「これは私の考えですけど、作品を発信する側も受け取る側もハッピーじゃないとダメだと思うんですよね。だって発信する側が作品を作るのがつらくてやめちゃったら結果的に受け取る側も作品をもう見れなくなっちゃうし、何より自分がしんどかったらそもそもそれをやっている意味がわからないじゃないですか?私は何よりもまずLUPOの皆さんにハッピーになって欲しいんですよね。なんでプロとしての1曲目に自分たちで考えた自信作をドーン!と発表してドーン!と周囲の期待に応えて欲しいなぁって私は思ってるんです。今日は私はそれをサポート出来たらって思ってます」

「でも、それバレたらまずくない?」

「私が責任をもって説得しますから大丈夫ですって。それに今から世紀の名曲を爆誕させれば鳥山さんも黙ってオッケー出しますよ多分。さぁ、というわけで曲作っていきましょう!」


ドラムの唯花の心配をよそに1人手を上げて「さぁやるぞ!」と伸びをする楓。


「・・・なんか13歳なのにインストでユニット組んでレーベルと契約できる理由がわかった気がする」

「・・・私も」

「図太いなぁ・・・」

「むしろこれぐらい破天荒だからできたのかもね・・・」


そんな楓を見て各々の感想を呟くLUPOメンバーであった。



こうして始まったスタジオワークだったが、作業が進めば進むほどLUPOのメンバーは楓のスキルに驚きを隠せなかった。


まず、ギターの演奏技術。


思いつくフレーズの幅広さとそれを実際に弾ける技術。そして何より1音聴けばすぐに楓だと分かる圧倒的な個性。


ギターボーカルの莉子とリードギターの奈緒はギターを始めて今年で3年になるが自分たちと楓ではまるで大人と子供くらいの差があると感じた。それぐらいにレベルが違うのだ。


次にエンジニアとしての能力の高さ。


結果としてLUPOのメンバーで作曲することになった今回、本当はこの曲で行きたかったという曲を楓がまず聴くところから始まった。


楓はすぐにその曲を「これ、めっちゃいいですね!」と言いデータを取り込んでカットアップし、あっという間にその曲の展開を数種類も作ってしまった。


またメンバーが上手く言葉にできないことを呑み込む力が非常に速く、返ってくる結果も的確で迅速だ。どこで身に着けたのか録音した音を処理する知識もとても豊富で、プロの現場であれば複数人のエンジニアが録音後に行う作業を1人でしかも曲の製作と同時に進行させている。


気付けばLUPOのメンバーはすっかり楓を信頼するようになっており、お互い名前で呼び合うほどの距離感になっていた。


作業が一段落したところで一旦休憩することにし、それぞれが昼食を買いに行こうとする。


「あれ、楓ちゃんはお昼買いに行かないの?」


LUPOのメンバーがお昼を買いに行こうとする中、自分のバッグにゴソゴソと手を突っ込んでいる楓を見て疑問に思う莉子。


「私は自分でお昼作ってきたので、皆さんは私にお構いなく外で食べるなり買ってきて事務所で食べるなり好きにしてオッケーですよ」

「えっ!楓ちゃんってお弁当自分で作ってるの!?」


奈緒が驚いたように声を上げる。


「まぁ、健康に気を配ろうと思ってなるべく体にいいものを自分で調理して食べるようにしてますね・・・」

「マジで!?」

「見せて見せて!」

「えぇ・・・そんな見せるほどの物でもないですけど」


楓が渋々、といった感じで弁当箱のふたを開ける。


「こ、これは・・・・!」


そこに広がっていたのはふりかけのかかったご飯に、から揚げと半分に切られたゆで卵、ほうれん草とニンジンの和え物の隣にプチトマトが添えてあるという素朴な感じのお弁当であった。


決して派手さはないがこなれた感じの弁当は逆に楓が日常的に料理をしていることをLUPOのメンバーに感じさせた。


「すごい、楓ちゃんって料理も出来るんだ・・・」

「いや、すごいって言ってもから揚げとか昨日の残り物ですし、他も料理って言えるようなレベルの物じゃないと思いますけど・・・」


不摂生で死んだ前世を反省し楓が母親である由紀に料理の弟子入りをしてから1年が経とうとしており、最初は野菜の皮すらまともに剥けなかった楓であったが今では由紀から毎日交代で料理を任せてもらえるまでに成長したのであった。もともとやり始めるとのめり込むタイプなのだ。


「いやーすごいって。全部冷凍だったとしてもお弁当に詰めるだけでも正直偉いと思っちゃうもん」

「わかるー!大学入って実家出てからさ、毎日働きながら弁当も夕飯も作ってくれてたお母さんマジですごいなって思ったもん」


ベースの渚とボーカルの莉子は大学に入るにあたり1人暮らしを始めており2人は何もしなくてもお弁当やご飯を作ってくれる親のありがたみが改めてわかってきた頃なのであった。


「にしても楓ちゃん、それだけギターも弾けて料理も出来たら学校でモテモテなんじゃない?」

「なー。しかもめっちゃ美少女だし・・・」


唯花と奈緒が唐突にそう問いかけてくる。


「モテてるかどうかはわかりませんが、周りからは姉御って呼ばれてますねぇ・・・」

「あっ(何かを察する)」

「一体何をしたら姉御呼びになるんだ・・・(困惑)」

「不良のリーダーの方かな?」


そんなこんなで4人がお昼を買ってきた後も5人のガールズトーク(?)は続くのであった。



「「「「「お疲れ様でしたー!」」」」」


夕方を過ぎる頃には無事に曲が完成し、解散となった。


「いや〜本当楓ちゃんのおかげで何とかなったね!」

「別に私は作業をサポートしただけですよ。すごいのは曲を作った皆さんですから」

「そんなに謙遜しなくていいでしょ。実際楓ちゃんがいなかったら今日一日で完成してないと思うし」

「・・・莉子も渚も来る前は『テンション下がるわ〜』とか言ってたのにな」


奈緒がジト目で莉子と渚を見ながら来る前のやりとりをバラす。


「あ、あの時はほらこうなるとは知らなかったし・・・」

「そ、そうだよ」

「そりゃ不満があったのは当然だと思いますから私は全然気にして無いですよ。それにまだマネージャーの鳥山さんのチェックっていう大仕事が残ってますからね。本番はむしろここからですし、今日は早く帰ってゆっくり休んでください」

「うん!じゃあまたね!」

「お疲れさんでーす」

「お疲れ様〜」

「今日はありがとな!」

「はいはい皆さんお気をつけて〜」


LUPOの全員を見送り事務所に戻る。賑やかだったさっきまでが嘘のような静けさだ。


「おっ、お疲れ。作業終わったのかい?」

「えぇ。(とどこお)りなく終了しましたよ」


デスクで作業をしていた澤村が楓に声を掛ける。


「初めに聞いた時はどうなることかと思ったよ。作曲の依頼なのに作曲しないなんてさ」

「アハハ。そこはうまく行く確信があったので」


実は楓は始めからわざと相手方には作曲を引き受けると伝えておき当日になって自分は作曲をしないことをLUPOのメンバーに伝えるという手段を取った。


あらかじめ身内であるマネージャーの澤村にはその意向と何故やるのかを伝えておいたというわけだ。


当日になってもしLUPOが自分達で曲を作ることを投げるようなバンドであれば楓がもとより用意しておいた曲をパパッとレコーディングし提出してハイ終わり、というプランであり、どう転んでも何とかなるようにした上での策であった。


「でも何で上手く行く確信があったんだい?今日の作業でいい曲が出来なかったら終わりじゃないか」

「それは『抑圧(よくあつ)』と今まさに澤村さんの言った『時間制限』があったからですよ」

「抑圧と時間制限?」


楓の言葉の意味を分かりかね首を捻る澤村。


「抑圧っていうのは本当は私たちで曲を作りたいのにっていう気持ちに対する抑圧です。自分達で作りたいのに他の人が作るのかよ、っていう気持ちですね」

「でもそれが何か関係あるのかい?」

「実は大アリなんですよ。抑圧が強ければ強いほど反発――つまり彼女たちのアウトプットのエネルギーも大きくなるんです」


先日帆夏にも伝えたことを再び澤村に説明する楓。


「2つ目の時間制限ですが、今日中に完成させないといけないという気持ちが迷いを無くし、作業の質が上がるんですよね。それに『これだっ!』っていう曲ができる時はパパッとできるもんなんです。逆にどうしようどうしようって作るのに悩むような曲はそれもう魅力ないですから」


とあるミュージシャンが時間をかけて練った曲がウケず、代案を出せと言われトイレで5分で考えた曲が採用されたという話を楓は聞いたことがある。


時間に制限があればあるほど一点突破で壁を突き破る力がアップする。それは視野が狭まることにも繋がるが今回はいい影響をバンドに与えたようだ。


「なるほどなぁ・・・そこまで考えて計算してたわけだ」

「計算ってほどでもないですけどね。上手く収まったんで結果オーライくらいの気持ちです」


インスタントコーヒーを作りながら楓は今日の感想を口にする。


「にしても複数人で作業するのは嫌いなのかなって思ってたけど結構楽しそうにやってたね」

「・・・別に人とやるのは嫌いじゃないですよ。1人の方が楽ってだけです」

「いや、楓ちゃんもあんな風に女の子同士で話して笑うんだなぁと思って・・・」

「・・・まぁ仕事としてLUPOの皆さんと円滑にコミュニケーションを取る必要がありましたからね。雰囲気を良くするためですよ、雰囲気を」


楓は顔を隠すようにマグカップに入ったコーヒーに口を付ける。


「ふ〜ん?」

「な、なんですかその『ふ〜ん?』は」

「別に〜?」

「ぐぬぬ・・・」


(・・・でも良かったな。楓ちゃんがあんな風に笑うところを見れて)


澤村には楓がその多岐にわたる才能ゆえに周囲に理解者がおらず、孤独を抱えているのではないかという懸念があった。


そして何でも1人でこなせる故に人を頼らなかったり、周囲も彼女なら1人で大丈夫だと任せっきりにしてしまう傾向がある。


しかしその先に待っているのは一体何なのだろうと澤村は思うのだ。


(それをケアするのも俺の仕事か。いや、ケアなんてレベルじゃなくて彼女の横に並び立つくらいの気持ちじゃなきゃダメなんだろうな)


ホットコーヒーで舌を火傷しヒーヒー言っている1人の少女を眺めながら、ひっそりとそんな決意をする澤村であった。



それから数日後、楓は澤村と共にLUPOの所属するレーベルを訪れていた。


理由はもちろん完成した音源の提出の為であり、会議室には現在LUPOのマネージャーである鳥山とLUPOのメンバー、そして楓と澤村の7人が集まっていた。


お互いの挨拶もそこそこに早速会議が始まった。


「すいません、先に断っておきますが途中経過でお渡しした曲とは最終的に違う曲になりました」


そう言いながら楓はヘッドフォンを鳥山に渡す。


元からLUPOのメンバーに曲を作ってもらう予定だったので途中経過は楓が作った曲を数曲渡してある。


当然今回聴いてもらう完成版は途中経過で渡した物とは全く違うものである。はっきり言って博打もいいところの仕事の進め方であった。良い子はマネしちゃダメ、ゼッタイ。


博打みたいとは言え楓はあまり緊張していなかった。というのも出来上がった曲が素晴らしかったのでこれでNG出すなら逆にセンス疑いますよ!?と思っているくらいの気持ちだ。


6人が見守る中、鳥山は曲を聴き終わり静かにヘッドフォンを外した。


「・・・参りましたね、これは。めちゃめちゃ良いです」


鳥山の言葉にLUPOのメンバーは「よっしゃー!!」と言いながら喜び合っている。楓も小さくガッツポーズした。


「・・・ただ1つ気になることがあるんですが」

「なんでしょうか?」

「ひょっとして、曲を作ったのはLUPOの皆じゃありませんか?」


鳥山の言葉に目を見開くLUPOのメンバー達。


「わかりますか?」

「わかりますよ。まだ共に過ごした時間は短いですが彼女たちの曲は誰よりも聴いてきたつもりですからね」

「怒らないんですか?」

「何故です?むしろ感謝したいくらいですよ、結果的に彼女たちの素晴らしい曲を聴けることになったのですから。私は上層部を納得させるために数字や知名度を重視して川原さんにお願いしてしまった。むしろLUPOというバンドの可能性を自分で閉ざしてしまったことを謝りたいぐらいですよ」


そういうと「本当にいい曲ですね、これ」と言いながら静かに笑う鳥山を見て楓は彼が本当にLUPOというバンドに誠実に向き合っているのだなと感じた。


「・・・私たちも、鳥山さんとちゃんと話し合うってことあんまりしてこなかったし、鳥山さんだけの責任じゃないよ」

「そうだね。今回の件で思ったけどバンドのメンバーだけが上手く行ってたら良いわけじゃないんだなって・・・」

「鳥山さんも上からの要望と私たちからの要望の板挟みだもんね・・・」

「これからはちゃんと腹割って話そうぜ。5人でさ」

「皆さん・・・」


LUPOのメンバーも鳥山の本心に触れ、歩み寄る意思を見せる。


(・・・これで安心かな。この5人なら何があっても何とかなりそう)


楓が心の中でそう思い安堵していると、1つ疑問が浮かんできたので質問する。


「ところで、作曲を頼むにしても何で私だったんでしょうか?他にこういうのに向いてそうな人っていっぱいいそうですけど・・・」


確実にヒットさせたいのであればもっと他にいい作曲家がいると楓は思っており、なぜわざわざ楓なのかずっと疑問だったのだ。


「まず作曲家としてやっている人でアーティスト並みにフォロワーが付いてる人というのは日本じゃ少ないんです。ミュージシャンの名前は言えても作曲家の名前を言える人は少ないですよね?もちろん作曲した人にもLUPOへ楽曲提供したことをファンへ拡散してもらいLUPOの知名度を上げたかったのでその時点で作曲家の人に曲を作ってもらうことは除外しました」


アーティスト名は言えてもそのアーティストの曲を作っている人の名前を言える人は意外と少ない。


特に日本は裏方の人の名前が表に出てくることは少なく、日本人なら誰でも知っている曲を作ったとしてもその曲を作った人の名前を知っている人はほぼいない、なんてこともある。となるとネットでの宣伝力もその分弱くなってしまうわけだ。


「となると影響力のあるアーティストでかつ作曲のできる人に絞られます。川原さんは日本での知名度だったらもっと上を行くミュージシャンもいますが、海外での知名度は圧倒的なのでワールドワイドにLUPOをPRしてもらえると思いました。しかもギターリストということはLUPOのようなバンドサウンドも任せられるという確証もありました」

「なるほど・・・」

「・・・というのが上層部を説得する時に使った建前で、実はもっと単純な理由だったりします」

「えっ、そうなんですか?」


非常に実利的な理由だと思っていた楓であったが実は違うらしい。


「ネットでインタビューなどを拝見して、考え方が私の尊敬している人に似ていたのでこの人だったら任せられるなと思ったから、というのが正直な理由です」

「えっ、そんなことなんですか?」

「私にとっては十分な理由です。実際、今回任せて良かったと思っています。その人がよく言ってたんですが、『頼まれた仕事からその人自身もまだ気づいていないその人が求めてるものをよく考えろ』と。今回川原さんが取った行動は正しくその通りのことである意味では私の想像通りでした」

「そうなんですね・・・」


となるとある意味では全て鳥山さんの手のひらの上だったということだろう。この人もこの人で中々の策士だな、と楓は思った。


「じゃあその人が鳥山さんの師匠ってこと?」


莉子が鳥山に尋ねる。


「師弟関係ではないけど、未だにその人が僕の目標・・・かな」

「へぇ~。何してる人なの?」

「何でもやれる人だったから、これっていうのは僕もよく分からない。それに大分前に亡くなったんだ。だから僕は彼の遺志を受け継いで仕事をして、それを後世に伝えていくのが役目だと思っているよ」

「そうなんだ・・・」

「・・・そうだ!」


奈緒が何かを思いついたのか手をポンと叩く。


「今度5人で親睦会でもやらないか?今の鳥山さんの話もそうだけど私たちあんまり鳥山さんのこと知らない気がするし・・・」

「いいじゃん!」

「さんせー!」

「異議なし」

「・・・僕も異議なしで。ちょっとスケジュール確認しとくよ」


そういうとLUPOと鳥山の5人でワイワイとどういうことをするか話し始めてしまった。


「・・・この感じだと、私たちはもうお役御免ですかね」

「そうだね。ぼちぼちお(いとま)させてもらおうか」


楓と澤村はその様子を眺めながら呟いた。楽しそうに話す5人を見て楓と澤村はLUPOのこれからに何も心配はいらないと感じるのであった。


ちなみに今回作った曲は楓の知名度もあってネット上で話題になりLUPOはプロとして好スタートを切ることが出来た。


立て込んでいた仕事がLUPOの件を最後に一段落した楓はようやく一息つけるなと思っていたのだが、LUPOのレーベル内で楓の噂が広がってしまいスタジオワークの依頼が沢山舞い込んでくることになってしまうのだがそれはまた別のお話。

ギタリスト少女の奮闘記みたいになってきてしまってすいません(汗)

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱ腹を割って話すのが大事ですよね。 腹を割って話す為に夜中ホテルの部屋に突撃するのも致し方ないな。
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