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クリエイター少女の奮闘記  作者: 前川
中学生編
11/41

11 文化祭

結果として、ライブは上手く行ったと楓は思う。


トップバッターとして舞台に上がった楓と由愛だったが観客からのリアクションは正直楓が思う以上の物だった。歌の無い、いわゆるインストと呼ばれる曲だったのでもっと冷めた反応かと内心思っていたのだ。


盛り上がった雰囲気を上手く引き継いだ状態でその後のバンドも演奏でき、ライブ全体の盛り上がりに貢献出来て良かったと思う。共演したバンドのギタリストたちからなぜか「姉御!!」と呼ばれるようになったのはよく分からないが。


ライブ後、客席で出演者だけの打ち上げが行われたのだが、その時に沢山の音楽関係者らしき人達から契約の話を持ち掛けられたのには驚いた。まぁ一番驚いていたのは楓と由愛の家族だったが。


打ち上げの場だし、重要なことなのでどこと契約するのか、そもそも契約するのかというのはまた由愛と2人で話し合って決めたかったのでその場での回答は控えることにした。


ちなみに一緒に出演したバンドであるblue saltとアークの2組も関係者の目に留まり、目をかけて貰えることになったらしい。良かった良かった。


「それもこれも全部楓姉御と由愛ちゃんのおかげですよ!本当にありがとうございます!」


そう言いながらblue saltのリーダーでありボーカルである圭吾が楓と由愛に頭を下げる。


どうやら今日やたらと音楽関係者が来ていたのは楓と由愛がお目当てだったようで、圭吾たちもまさかそんな人たちが観客で来ているとは思いもしなかったからだ。


「いやそれはいいんですけど、姉御ってなんですか!姉御って!」

「それはもちろん、圧倒的な演奏、観客を惹き込むステージング力を持った楓姉御に敬意を払ってですね・・・」

「払うなら姉御呼びはやめて普通に名前で呼んでくださいよ!不良を束ねる(ヘッド)ですか私は!」

「「「「分かりました姉御!!!」」」」

「うん、君たちが話を聞いてないのはよーく分かったわ」

「楓あねごー」

「由愛ちゃんも便乗しない!ライブ前ガチガチだったくせに!」


才能に年齢は関係ない。今回のライブに参加した彼らは完全に楓の才能に心酔してしまっていた。


人は才能に嫉妬するものだが、あまりに大きすぎると嫉妬すら覚えない。彼らは音楽を真剣にやっているからこそ楓のすごさがよく分かっているのだ。


収拾が付かなくなりつつある打ち上げの場に楓は頭を抱えつつ、不摂生で死んだ前世を反省し普段は飲むことを禁止しているコーラを飲みながらなんだかんだでその場を楽しんだのであった。



ライブから1ヶ月後、楓と由愛は2人で話し合った結果Raspberry(ラズベリー)としてソルダーノ・レコーズと契約しプロとしてデビューした。


プロとしてデビュー、と言っても特段2人がやることは変わらない。というよりも楓がそういう風にソルダーノレコーズ側に要求したのだが。


楓が要求したことは大きく3つ。


1つは学業優先であること。あくまで学業を優先し、空いた時間での活動で出来ることしか提供しない。

日常の中で感じる色々なことを自分なりの形で表現することが創作の面白い所なのにその日常自体を奪わないようにしてね、という由愛のことを考えての楓の要求だった。


由愛はまだ小学3年生であり、その状態で学校に行かず仕事ばかりこなすのは由愛の将来に大きく影響するだろうと楓は思うのだ。むしろ子供の内は何かをアウトプットするよりもずっとインプットするだけでいいとすら思う。


しかし学生の間にプロとして活動する、という経験自体も必ずプラスになるだろうし、楓自身も学生の内からプロとしてやっていくというのは体験したことが無かったので由愛がやってみたいならやってみようということになった次第である。


2つ目は積極的な顔出しをしない、ということである。


楓も由愛も普段は学校に通うわけだし、世間に顔を知られると生活しにくくなる恐れがあるからだ。

別に自分が被害を被るだけならいいが周囲の人間に迷惑をかけることになるかもしれないので慎重に越したことはないというわけだ。


最後がRaspberryとしての活動は2年間に限る、というもの。


理由は話さなかったが、恐らく学生生活に重きを置いているであろう楓にとって人生の中でも1度しかない学生生活すべてを犠牲にしてもこのユニットを続けていくことはしないということなのだろう。真意は分からないが。


ともかくソルダーノレコーズ側はそれらを全て飲む形で契約は結ばれた。


「にしても、ウチと契約してくれてほんとに良かったですね」

「いや本当だよ。金とかコネとかそういう意味での待遇で言ったら大手には絶対ウチじゃ勝てないんだからさ」


ソルダーノレコーズの代表である二階堂拓(にかいどうたく)澤村歩(さわむらあゆむ)は事務所で先日の契約時の面談のことを話していた。


色々な所で話題になり、現在Raspberryの各ミュージックビデオは結成から2ヵ月ちょっとしか経っていないにも関わらずどれも何百万回再生というレベルになっている。レーベル間での取り合いになり、最終的に2人が選んだのは二階堂率いるソルダーノ・レコーズだった。その理由は謎だが。


「にしても由愛ちゃんの方はともかく、楓ちゃんは面白い子でしたねぇ。お金にも名誉にも全然興味がないというか」

「興味がないわけじゃないと思うが、それよりも自分の中で大事にしている『核』がちゃんとあるんだろう。()()を持って生きている人間なんて大人でも意外といないもんだが・・・。とにかく誰かから指示されて駒の様に動く人間じゃないってことは確かだな。由愛ちゃんに対する気遣いも彼女なりの矜持(きょうじ)からくるものなんだろうな」


楓のことを音楽の才能がすごいだけで他はまだ年相応の女の子だろう、と踏んでいた2人の予想は全く外れていた。


楓は自分なりの考え方をすでに持っており、契約時の家族を交えての話はむしろ楓が条件や要求などをリードしているぐらいだった。その様子は大人が子供に説明するようなものではなく対等な者同士の対等な取引だった。本当に子ども離れした少女である。


「ま、とにかくこれから忙しくなるぞ。気合い入れてけよ、澤村。お前にあの2人のサポートやってもらうつもりだし」

「うわぁ、色々疲れそうっすね・・・・」

「と言いつつ顔がニヤけてんぞ」


澤村は省エネ主義を主張しているが実は心の中に熱い思いがあることを二階堂は知っている。周囲に見せる態度とは裏腹に仕事に対する真摯な態度を二階堂は信頼しており、今まで数々のアーティストのサポートを任せてきた。恐らくまたとない逸材を任され心の中ではきっとあれこれ考え燃えていることだろう。


二階堂は全く想像のつかないあの2人の2年間をこれから見ることが出来ることを幸せに思いつつ、コーヒーを口に含んだ。



「文化祭かー」


前世の(?)記憶が覚醒した春から季節は移ろい秋が訪れようとしていた。


(そんなに色々やるつもりはなかったのに何だかすごい色々やらかしているような・・・)


ここ数か月で色々なことがあった。


平井靴屋の協力から始まって噂が噂を呼び今では商店街内で「デジタル関係で困ったら楓ちゃんに相談しよう」ということになってしまっている。今や商店街を歩けばお店の人たちから挨拶されたり、割引券を貰ったり、余ったおやつなんかを貰ったりという具合だ。まぁ商店街の皆が助かっているならそれに越したことはないし、何より自分の力で他人を笑顔にできるのが楓には嬉しかった。


そして音楽でプロになってしまった。なんだか当初の方針とあまりにも離れている気がしてもはや笑うしかない。とはいえ目の前で困っている人達を放っておくのは嫌だったし、それを自分なりにサポートした結果なのでどれも後悔していない。だって困ってたんだもん。しょうがないじゃん?(謎の開き直り)


そうこうしているうちに楓の通う中学校では2ヶ月後に文化祭が迫っているらしく、先ほどの授業は文化祭の出し物を考える特別時間割になった。


話し合いの結果、楓のクラスは2択のクイズに答えてゴールを目指すゲームを出し物にするようだ。初めて会う来場者同士で2択の答えどちらかを選び、全問正解すればゴールまでたどり着けるような内容らしい。確かに面白そうだ。


「そういえば史織(しおり)(あおい)は図書委員と読書部だよね?何か出し物とかするの?」


授業も終わり下駄箱に向かうまでの道を楓は史織と葵の3人で歩きながら話していた。


史織と葵はそれぞれ委員会と部活動に参加しており、史織が図書委員、葵は読書部に入っているらしい。

と言っても運動部でもないので週に2、3回くらいの活動頻度らしい。委員会も毎日集まって作業するわけでもないので今日は3人で下校しているというわけである。


ちなみに楓はなんの委員会にも入っていないし、部活動もしていない清く正しい帰宅部である。


「図書委員は本の(しおり)づくり体験らしいよ」

「なるほど~史織だけに栞つくりって感じか~」

「はい?」

「あ、イヤナンデモナイデス・・・」


軽い気持ちで言った激寒ギャグは史織のお気に召さなかったようだ。というか顔がめちゃ怖いのでやめて欲しい。悪かったから。


「あ、葵の方は何をやるの?」


史織から逃げるように話を葵に逸らす。


「読書部は読書カフェを毎年やってるから今年もそれだって」

「お~何か青春って感じだねぇ・・・」

「楓ちゃん、おっさんみたい・・・」


ついついこぼしてしまった言葉を葵に突っ込まれる。実際おっさんなので正解である。何だか葵ちゃんも出会った頃から突っ込みに遠慮がなくなってる気がする。


そんなことを話しながら廊下を歩いていると近くの教室からバンドの演奏が耳に入ってきた。


「あれ?ウチの学校って軽音部あったっけ?」

「あるよ。というか4月の部活動紹介に出てたじゃない・・・・って楓その時寝てたっけ」

「・・・いやーあの時は色々ありまして寝不足でして、ハイ」


確かその時は前世の記憶が覚醒してめちゃめちゃ寝不足だった日な気がする。人類は睡眠に勝てないのだ。仕方ないね。


「それにしても、何だか伴奏の音ばかりが目立ってあまり歌が聴こえてこないような・・・」

「・・・うん、確かに。もっと楽器の音量を下げたらいいのにね」


史織と葵が感想を口にする。2人の指摘は素人ゆえにズバッとしたもので的確だ。


・・・とはいえ演奏しているのは中学生。これぐらいのレベルでも上出来だろうと楓は思い、一応2人に解説をすることにした。


「下げないんじゃなくて、下げれないんだよ。ドラムっていう楽器は小さい音で演奏するのが結構難しい楽器なんだ。難しくて速いフレーズなんかは経験が浅いうちは力まなきゃ叩けないしね。力んだら自然大きな音になっちゃう。で、そうすると他の楽器もドラムの音量に自分の音が聞こえるように合わせちゃう。そうするとボーカルの声が聴こえなくなっちゃうってわけ」

「じゃあ、ボーカルの音量を上げればいいんじゃないの?」


史織がもっともな疑問を口にする。


「プロが使うようなステージについてる音響設備ならいいんだけど、軽音部にあるレベルの音響機材だとボーカルマイクの音量を上げてくとハウリングしちゃうの。たまにマイクをもって話してる時に『キーン!』って大きな音が鳴る時あるでしょ?音量を上げれば上げるほどそれが起きちゃうんだよね。だから軽音部の機材でそれなりの演奏をするにはドラマーが上手いかボーカルの声量がめちゃめちゃあるかのどっちかが最低限クリアしてないとこんな感じでゴッチャゴチャの演奏になっちゃうんだよね」

「なるほど、参考になったわ。是非ともあなたの演奏も聴かせて欲しいわね」

「・・・・ん?」


史織でも葵でもない声が返ってきたことに驚き、楓は後ろを振り向く。


するとそこには額に青筋を浮かべた女生徒がいた。リボンの色からして2年生だろう。


横にいる葵と史織をみると「あっちゃー」という顔をしている。


「私は高橋美姫(たかはしみき)。2年生で、軽音部の副部長をしているわ。そこまで言うからには、さぞかし素晴らしい演奏が出来るのよね?良かったら、私にも聴かせてほしいわね。()()()

「Oh・・・」


久々に予定のない平和な楓の放課後は突然の暴風により悪天候となりそうだった。もっとも暴風の責任は半分ぐらい楓自身にあるので自業自得ではあるが・・・。



高橋美姫(たかはしみき)は軽音部副部長の2年生だ。担当楽器はギターで、もう弾き始めて3年以上が経つ。


父親のギターが趣味という環境もあり、美姫はギターのスキルを父親から教わることが出来た。身近に経験者がいるというのは大きなアドバンテージだ。色々なテクニックや機材のセッティング方法、アドリブの仕方まで父親から教わった。


自分の技術に自信が付けば自然人に見せたくなるもの。そんな美姫が軽音部に入るのは当然の流れと言えよう。バンド組みたさにわざわざ軽音部がある中学を探したくらいだ。


軽音部には色々な人がいる。全員音楽が好きなのは間違いないが、接点は人それぞれだ。ゲームやアニメからバンドに興味を持った人もいれば憧れたアーティストのようになりたいという人もいる。


当然、全員が全員上手というわけではない。だが彼らは「やってみたい」から「実際にやってみる」へ一歩踏み出した人たちだ。その一歩はとても大きく、そこに上手い下手は関係ないと美姫は思う。


だからこそ廊下で演奏をちょろっと聴いただけで知ったようなことを話す少女を美姫は許せなかった。


軽くお灸をすえてやろう、ぐらいの気持ちで少女に注意しその少女がその場で謝って話は終わるだろう、と美姫は思っていたのだがその少女が美姫の「演奏して見せろ」という言葉に引っ込みがつかなくなったのか引かなかったので、結局こうして軽音部の部員が見守る中でその少女が演奏することになってしまった。ここまで大事にする気はなかったが、引かなかったのは彼女だし、しょうがないと思う。


「あなた、楽器は何が弾けるの?」

「ギターです」

「あら奇遇ね。私もギターなの。それなら2人でアドリブでジャムとかどうかしら?」

「構いませんよ。キーは?」

「・・・それは演奏が始まってからのお楽しみでいいんじゃないかしら」


曲にはキーというものがある。キーを先に聴いておけば、ギターの指板のどこを押さえれば音が合うか始まる前から分かる。しかしあえて美姫はそれを教えなかった。それなりの力量があれば音を聴くだけで合わせられるはずだ。・・・まぁちょっと意地悪だとは思うが。


「それじゃ、行くわよ――!」


美姫は相手の準備ができたのを確認し、演奏を開始する。


――その瞬間、信じられないことが起きる。


美姫が演奏を開始すると同時に相手の少女も音を被せてきたのだ。しかもキーにあった正しい音で。


「なっ――!?」


彼女にキーは伝えていない。にも関わらず一音目から彼女は音を合わせてきた。


(どういうこと!?一か八かに賭けて適当なところを押さえた?)


美姫が相手の方を見ると、相手の少女はこちらを見ながらニコリと笑っている。その瞬間、美姫は一つの可能性に思い当たる。


(――まさかあの子、私の手元を見て押さえるコードを先読みしたの!?)


確かにそれなら1音目から反応できたのも頷ける。


(――なら、これはどう!?)


美姫は演奏中にキーを変更する。いわゆる転調というやつだ。しかし相手の少女は追従してくる。しかもフレーズは自然に(つな)げたままで。


美姫が色々と仕掛けるも、どれもあっさりと(かわ)される。それどころか相手の少女の引き出しの多さにむしろ美姫が舌を巻いているぐらいだ。ロックからジャズ、カントリーを織り交ぜたフレーズまで何でもござれ。煌びやかなメロディで聴かせたり派手なテクニックを誇示したり自由自在だ。


一体どうなってるんだ、と美姫は思いながら相手の少女を見る。


――すると、そこには退屈そうに窓の外を眺めながら片手でギターを弾く少女の姿があった。


(――なっ!?)


あまりにも予想外な光景に美姫は口をあんぐりと開けてしまう。


手元を見ていないのはまだ分かる。これだけのプレイができる熟練者なら手元を見なくても演奏できるだろう。


しかし片手で、しかもほぼアンプにつないだだけのクリーンな生音でこんなにはっきり音が出るのは正直異常だ。


とんでもないのを相手にしてしまった、と思うが時すでに遅しの美姫であった。



思ったより時間のかかることになってしまったのもあり楓が今日の夕飯の献立を考えながらアドリブを弾いていると、いつの間にか演奏が終わる雰囲気だったので、相手とアイコンタクトを取り演奏を終了した。


演奏が終わると、場を沈黙が支配する。何とも言えない雰囲気だ。


いきなり知らない生徒が部室に来てアドリブでジャムを始めたらそりゃ「えぇ・・・」って雰囲気にもなるだろう。用も済んだし早々に離脱するのが吉だと楓は判断し離脱の態勢を取る。


「と、いうわけで拙者これにて失礼・・・」

「待って」


様子を見守ってくれていた史織と葵と一緒に教室を出ようとするも、美姫に肩をつかまれてしまう。逃亡失敗である。


「あなたに頼みがあるの。勝手だとは思うけど話だけでも聞いてほしい」

「いやいや、頭を上げてくださいよ!私も悪かったですし全然気にしてませんから・・・」


頭を下げる美姫に慌てる楓。確かに傍から見たら勝手に見えるかもしれないが楓は全く気にしていないし、頭を下げられるとなんだか申し訳ないのですぐに止めるよう促す。偉そうなことを言ったのは事実だし楓にも罪悪感があったというのもある。


「だけど・・・」

「本当に全然気にしてませんから。それより頼みって何ですか?」

「単刀直入に言うと、あなたにギタリストとしてあるバンドに入って欲しいの」

「ワーオ(ネイティブ)」


何だか大事になってきたぞ、と思う楓であった。



美姫の話を要約すると、今度の文化祭で行われる軽音部のライブは受験を控えている3年生の引退ライブでもあるらしい。


その引退ライブでとあるバンドの3年生がどうしてもやりたい曲があるらしい。しかしその曲のギターが余りにも難しく、部員で誰も弾ける人が1人もいないので泣く泣くあきらめたという。


そこに現れたのが楓である。楓がそのバンドにサポートギタリストとして文化祭の間だけ加入してほしいというのが美姫のお願いであった。


「にしても、楓ってあんなにギター上手かったんだね。驚いたよ」


帰り道、史織が楓のギターの腕前に触れる。


「まぁ、こっそり練習しててね・・・」

「こっそりってレベルじゃなかったけど・・・。それで、楓ちゃんは文化祭でライブに出るの?」


葵が尋ねてくる。


「う~ん、出たいのは山々なんだけど・・・」

「だけど?」

「あんまり目立ちたくないんだよね。ギターが弾けるってこともあんまり周囲にはバレたくないし」

「なるほど・・・。誰かに演奏してもらうフリをして楓ちゃんがこっそり舞台袖で弾くとかは?」

「それだとその子がギター上手いって周囲に勘違いされて、色々大変そうじゃない?」

「あ、確かに・・・」


その後も3人で悩み続けるもなかなかいい案が出てこない。


その時、葵が何かを閃いたように顔を上げる。


「要は、楓ちゃんの正体がバレなきゃいいんだよね?」

「まぁ、要約するとそうなるかな」


言質を取った、というような感じで葵ちゃんがニコリと笑う。あれ、この子こんなに悪役っぽく笑う子だったっけ。


「楓ちゃん、私に良い考えがあります」

「いや、それ大抵やばくなる奴やん!」


嫌な予感がする楓をよそに自分の考えを話し始める葵であった。

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