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渡り廊下での告白



「ねぇミント、また来てるけど?」

「ああ、ほっとけ。何かあれば向こうから話しかけてくるだろ?」

ここ最近駿と食堂で昼メシを食うときには決まってこの会話をしている。

因みに沙織と詩織は弁当なので教室だ。


で、何が来ているかというと。

俺からちょっと離れた席に文系の女子が3人。

うち2人は知らない顔であと1人は嶺岸有紗。


あのセンター街であってからたまにこっちの食堂に食べに来ていたのだがここ最近は毎日こっちに来ている。

それも日を追うごとにだんだんと近づいてきている気がする。


言葉に聞いてみたら、あなたに気があるんじゃない?と返ってきた。勘弁してくれと言いたい。


「あれだけちらちらと見られてると落ち着かないね」

「全くだな。用があるなら言えばいいのにな」

駿と俺は、少し離れた席にいる3人に聞こえるように話してやった。


「なら明日からは弁当にするか?沙織はどうかわからんけど詩織なら作ってくれるんじゃないか?」

「あはは、そうだね。詩織ちゃんに聞いてみるよ」

俺たちの会話を耳をダンボにして聞いていたであろう嶺岸さんがビクッとなったのが、かなり笑える。


3人は頭を突き合わせて何事か相談しているが、どうせ碌なことじゃあるまい。


「あの・・一ノ瀬くん」

「やっとか?言いたいことがあるならさっさと言えばいいんじゃないか?」

どうやら明日からお弁当を聞いて意を決して話しかけてきた嶺岸さん。


「ちょっと・・あの・・2人でいいかな?」

「ねぇミント?これってきっと告白だよ。うん。僕は先に戻ってるから、頑張ってね」

俺に耳打ちすると駿はにししっと笑って席を立った。


「で、ここでか?なんなら場所変えるか?」

「じゃあ渡り廊下で・・」

俺と嶺岸さんは、2人で食堂を出ていく。

周りの目が、言葉といる時ほどではないが痛い。確かに今年のベスト5の1人だからな、こいつ。

おまけに文系棟からわざわざこっちまで来てるわけだから余計だ。


渡り廊下は相変わらず人はまばらで話をするには丁度いい場所だ。


「で、わざわざ何の用だ?言葉とのことでも聞きたいのか?」

「そんなんじゃない・・こともないです。あの・・柊さんとは・・えと、お付き合いされているわけでは?」

「別に付き合ってるわけじゃない。ただ単に一緒にいるだけだ」

なんだ?初めて屋上で会ったときとえらい違いだな。これは言葉が言う通りなのか?


「じゃあ、お付き合いされている方はいないんですか?」

「まぁそうなるな」

嶺岸さんは、赤い顔で俺ににじり寄る。

「おい?」

「あの!私とお付き合いして・・・」

「断る」

話の途中で、アッサリと俺が断ると嶺岸さんはきょとんとした顔で俺を見ていた。

まさか断られるとは予想してなかった顔だ。


「えっ?あの、私とお付き合い・・」

「だから断るっ」

「あの?聞き間違いですか?私とお付き合いを」

「ああ、だから断ると」

「・・・理由(わけ)を聞いても?」

「好みじゃない。それだけだ」

いくら美人でもそもそも俺の好みから外れているからな。


「好みじゃない・・・」

「ああ、残念だけどな。あんたは確かに綺麗だし美人だと思うけどな」

「でも、好みじゃない?」

「そうだな。っていうか何で俺なんだ?あんたなら他にいくらでも言い寄ってくるヤツいるだろ?」

「何でって・・・そんなこと・・・」

正直全くわからないから嶺岸さんに聞いてみたが真っ赤になってゴニョゴニョ言っている。


「一目惚れってわけじゃないだろ?心当たりが全くないんだが?」

「・・・冷たくされた」

「は?」

「男の人にあんなに冷たくされたの初めてなの!ゾクゾクして夜も眠れなくて、一ノ瀬くんのあの冷たい目が・.・・」

そう言って嶺岸さんは身体を抱きしめてウットリとした表情を浮かべる。

渡り廊下で人がいなくてよかった。本当に良かった。

いや、マジで。


「あ、ああ、そう?」

「また、そんな目で私を・・・」

「おい!正気に戻れ!お前危ないから」

ちょっと目がいっちゃいそうな嶺岸さんの頬をペチペチと叩く。

「あ、ああん。一ノ瀬くんが私を・・・」

駄目だ。コイツ。


もうすぐ昼休みが終わるので渡り廊下にはもう誰もいない。そもそも普段でもほとんどいないのだが。


「おい!もう昼休み終わるぞ!戻らなくていいのか?」

「・・・戻り・・ます」

壁にもたれて上気した顔で俺を見る嶺岸さん。

「お前大丈夫か?戻れるか?」

「お前・・・お前って呼ばれた・・うふふふ」

「はぁ、どうすりゃいいんだよ?ほらトリップしてないで、な?」

「あ、あん。は・・・い。」

トロンとした目にどうにか正気が戻り、俺を見てまた真っ赤になる。


「あ〜まぁなんだ。色々あるからな。人それぞれだな、うん」

「・・・ごめんなさい」

どうやら正気を取り戻したみたいだ。

「もう大丈夫だな?俺はもう行くぞ?」

「はい・・・あの一ノ瀬くん」

「別に気にしなくていいぞ。誰かに言ったりはしないから。それと俺のことはミントでいいから」

「ありがと・・・その、私もアリサって呼んでください。ミ、ミ、ミ」

ミ、ミ、ミって何だよ?

「ははは、変なヤツだな」

「そっそんなことないですっ」

「じゃあまたな、アリサ」

「はっはい!・・・ミ、ミ、ミ・・・ミント」


やれやれ真面目ちゃんだとばかり思ってたけど、まさかドMだったとは・・・

言葉には・・・言えないよなぁ。









お読み頂きありがとうございます(//∇//)

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