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その繋いだ手は

宜しくお願い致します!


「結構混んでるな」

「日曜日だから当然ね」


映画館は、かなりの混み合いで、日曜日ということもあって親子の姿も目立つ。


「ああ、そういえば」

子供達に人気の某ポケな映画が今やってるんだっけ。

小さい頃はよく観に連れてきてもらったな。


「何を観るのかしら?それとも何か観たい映画あるの?」

「俺は何でもいいけど、お前は何かあるか?」


言葉は今上映されている映画の名前をじっと見ている。

ただ、何を観るか見ているだけでも周りの視線を集めている。

そうだよな、こいつ、普通に考えたらとんでもない美少女なんだよな。全く気にしてなかったけど。

周りの視線と自分とのギャップがなんだか可笑しくてつい笑ってしまう。


「どうかした?」

「これだけ人がいても視線を集めるくらいお前って美人なんだなと思ってな」

「それが何が可笑しいの?」

「俺がそれを意識してないのが可笑しくてな。周りとのギャップっていうのか」


俺の返事に、言葉は肩をすくめて一つの映画を指差す。

「これにしましょう」

言葉が、選んだのはアメリカの有名な女優が主演している恋愛物だった。たしか戦争に行った恋人を待つ女性の話だったか。


「こういうのが好みなのか?お前?」

「そういうわけじゃないけど、恋人の話をしたから何となくね」

そう言って言葉は、まだ繋いだままの手を上げてみせる。

なるほど。


「よし、じゃあこれにするか」


チケット売り場に並んでチケットを買うと上映までに少し時間があった。

2人で椅子に座ってポップコーンを食べる。

「映画館ていったらやっぱりこれだよな」

「そうかしら。たしかに他に何もないものね」

俺が差し出したポップコーンをつまんで口に運ぶ。


「いやなら食うなよ」

「いやなんて言ってないわよ。ケチ」

ここは、外なので言葉はいちいち表情を作って反応する。その度に周りから溜息やら若干の殺意がこもった視線を向けられる。


「時間ね、いきましょう」

ようやく上映開始みたいだ。俺たちは仲良く?手を繋いで薄暗い映画館に入っていった。




「どうだ?楽しかったか?」

「楽しいかはわからないけど、いい映画だとは思ったわよ」

「そういうことか」

「ええ」

映画帰りに俺たちは、近くのファミレスで夕食を食べている。他に色々選択はあったのだか言葉がファミレスでいいと言うのでここになった。


「恋愛物って俺はあんまり見ないからな、いまいちピンとこないな」

「そうなの?私は良く観てたわよ」

「へ〜意外だな、そういうのに興味なさそうなのにな」

「興味?興味なんてないわよ」

「は?なら何で?」

「表情の研究よ。笑ったり泣いたりが多いでしょ?恋愛物って」

「・・・夢がねーな」

この会話の間も当然、言葉はいつもの笑みを浮かべている。周りからみればさぞ仲睦まじいカップルに見えることだろう。


「まぁそのうちにお前も誰かを好きになったりするんじゃないか?」

「そうかしら?」

「さあ?」

「無責任ね」

話している内容は、殺伐としているのだが。


「あなたはどうなの?好きな人はいないの?」

「俺か?いたらお前とこんなところでメシ食ってるわけないだろ?」

「人のこと言えないじゃない」

「はは、まったくだ」


俺は乾いた笑いをしてテーブルのポテトをつまむ。

「飲み物とってくるけど同じでいいか?」

「ありがとう、何か温かいものでお願い」


はいよ、と返事を返してドリンクバーで飲み物を入れる。温かいものね、ミルクティーくらいか?お茶ってことないよな。


「ほら、ミルクティーで良かったか?」

「ええ、ありがと」

「どういたしまして」


何となく会話が途切れてテーブルのポテトとナゲットをお互いにつまむ。


「ねぇ」

「なんだ?」

「人を好きになるってどうな感じなの?」

「好きになるか・・・そうだな、相手のことを考えると夜も眠れなかったり目があっただけでドキドキしたり、まぁ色々だな」

「あなたはそうだったのね」

「中学の時だぜ、ガキだったしな」

「ほんのちょっと前でしょ?」

「ずっと前だよ」

「・・・・」


言葉はポテトをクルクルと回して何か考えているみたいだ。


「私も、そんな風になれるかしら?」

「さあな」

「そこは、なれるって言わない?」

「言わないな」

「あなたイジワルよね」

「気のせいだ」


ファミレスを出て駅へと向かう間も言葉は俺の手に指を絡めたままだった。

もう人通りも昼ほど多くはないのに、俺は何となくだが繋いだ手を離す気にはなれなかった。













お読み頂きありがとうございます\(//∇//)\

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