戦力確認 〜先生、知性なしは戦力に入りますか?〜
説明会っぽいです。
「あー、範囲を広げるのなら俺が万全な状態になれば自力でもできそうだから、DPは別のことに使おう。」
〈別のこととは?〉
「連れてきたモンスターとかを、俺の仲間にしたい。特にスライムくん。あ、そういや、今どのくらいのDPがある?」
なぜかスライムくん以外には知性がないような気がする。
他のモンスターが赤ん坊を守っているのはなぜか本能として動いてるように見える。
〈現在保持しているのは5200DPです。マスター。契約は、マスターの体の一部などをモンスターに与えなければいけないので、体の一部をいただきたいのですが、よろしいでしょうか?〉
「あぁ、どうせ痛覚がなくなってるから問題ない…と思う。」
鑑定を使ってみなければ確証は得られないが、俺は再生能力を持っているという確信がなぜかある。
〈わかりました。では、スライムさん。マスターの左足を獲ってきてください。〉
スライムくんは相変わらずズリズリと音を立てながら近寄ってくる。
そして、スライムくんの体の一部が刃に変わる。
ザシュ。
俺の左足が切り落とされた。と、同時に地面の土や砂が集まってきて新しい足ができた。水分を含んでるが、どこから出てきたのかな?空気中?
あ、少し遅れて伝わってきたが、やっぱり痛覚とかなくなってるんだな。喪失感があったくらい?
というか、スライムってこんなこともできるのか。
四足歩行でまともに腕も振れない俺からしたら凄く羨ましい。
…ん?同じ材質の物を切った?おかしくないか?
あ、でも泥団子と泥団子をぶつけたら硬くて、丈夫な方が残るし、そんなものかな?
後から知るのだが、スライムくんは刃の表面の泥(水と砂)に魔力を込めて、小さな刃を作ってから、俺の左足を切ったらしい。
非日常の中、ダンジョンマスターになって、興奮した状態だったからか、謎理論で納得してしまっていたのは、反省している。後悔もしている。が、仕方ないと思う。
それにしても、随分と器用なスライムである。そのうち究極の生命体にでもなるのかもしれない。
「切り取られてから気づいたが、どのくらいDPを、使うんだ?」
〈およそ、5000DPほどですね。〉
「え?殆ど使ってしまうってことか…いや、まぁ、召喚より安いならいいや…あ、確認とかとってなかったけど安いよな?」
〈ええ、もちろんです。〉
「ならいいや。」
〈では、始めますね。〉
そうダミーコアが宣言すると俺の左足がバラバラになってそれぞれの魔物へ飛んでいく。
そして…目に、入った?なぜ?
混乱しているうちに、感覚があると思われる動物系のモンスター達➕αはのたうちまわり始めた。
「え?ちょっ。あれでいいのか?すごく痛そうなんだが。特にあのガーゴイル。」
魔物の言語がわからなくとも、あれは間違いなくムス○と同じようなことを言っているのがわかる。
石像だと思っていたが、意外にも痛覚らしきものがあるらしい。
〈基本的に魔物の核は頭部にありますので、目や耳から入ってなるべく核に近づかないてから発動しないと、成功率が著しく下がってしまうので…次からは額とかにしておきましょうかね。〉
「そうしてやってくれ。」
あれ?これって、客観的に見たら目潰しして、俺に従えって言っているようなものなのでは?
…なんか、すごく悪いことをしているような気がしてきた。
ま、まぁ?考え方を変えれば?今苦痛を味わっているのは大半が何もしなければ餓死するであろうモンスターが大半だし?
それが、労働力の提供と、現在の苦痛を受けることによって防げて?俺は労働力が手に入る、と。まさにwinーwinの関係だよな!!
え?食料とかいらないモンスター?ソンナノシラナイヨ?
…はっきり言って苦痛を受けてもらうとかこっちにとっては一銭の価値もないんだけどね。
「あ、そうだ。ダミーコア、俺の種族の説明とかできる?」
〈ダンジョンマスターとなっている時点で、種族的特性などは残っていても、その種族そのものではなくなってしまっているのでだいぶ大雑把になりますが?〉
「頼む。」
〈泥人形〉
・この個体はダンジョンマスターと化している。
・魔導人形の劣化種。耐久力に難有り。農業用に造られたため、農業だけは優れているらしい。
・基本的に知性は持たないが、長い間持ち主の魔力を供給され続けることで、稀に知性を持つ…ことがあるかもしれないとされているらしい。
・農業関連以外のスキルは習得しにくい。
「なんつーかさ、なんつーかさ…なんつーかさぁ。うん。せっかく痛覚なくなったし、バーサーカーみたいに暴れることができるようになるんじゃね?と思っていたんだけども。無理そうだなこれは。」
〈大丈夫です。マスターには知恵さえあれば。〉
そんなの自信があるわけないじゃないか。
そんなのが普通より多くあれば苦労してない。
「あ、そうだ。他の魔物とかも見せてもらえるか?その中にそういうのが得意な奴がいるかも。」
〈昔、この赤ちゃんをを鑑定したことがあります。それも表示しますか?〉
「あぁ。」
と、俺が前に見たような画面が開いてなんか文字みたいなのがずらっと並んでいるがほとんど読めない。なぜか一部の単語は日本語表記だった。
読めそうにないので、ダミーコアに直接教えてもらった。
「マッドスライム」
・この個体はあなたが生み出した最初の魔物。
・農業用に改良されたスライム。土属性。
・戦闘力は普通のスライムよりは高いが、第二段階のスライムの中では最弱。
・上位スライムには【物理軽減】や、【物理無効】のスキルを持っているものが大半だが、このスライムにはない。
・その代わり、地面に接している状態でという制限付きでの反撃・攻撃・耐性スキルなどが取得しやすくなっている。
が、それらが発動、あるいは習得する前に死ぬのでほとんど知られていない。
「魔人」
・この個体はダンジョンマスター化している。
・平均した戦闘能力が他の種族よりも高い。その代わり、突出する力を持つ可能性が低い種族。魔を支配する種族と呼ばれる。
・高確率で目が黒い。
興奮すると他人には赤く見えるようになる。が、自分に有利になるような幻覚を見せようと無意識に魔眼を発動させている。
ほとんどの個体はそのことを知らずに無意識で使っているため、興奮すると目が赤く見えるというだけだと思われている。
そのため、魔人狩りの際にはあらゆる手段を持って興奮状態にさせられる。
その分意識的に使った場合見破るのは魔人以外にはほぼ不可能。
・他のほとんどの種族と敵対している。
・特に、人間との戦争が多いためほとんどの個体は人間を憎む。
・習慣として、自分の核の半分を番の核の半分と融合させる。これによって、魔人の間では番を作ると弱体化するとされている。
これもほとんどの個体が習慣として行っているだけなので、知られていないが【魔の領域】という魔法を使えるようになる。
効果は技量によって変化するが、敵の魔法軽減・無効。こちらの魔法増幅・変化。などが挙げられる。
が、この魔法は使用者が、自分自身の魂を霧のようにし、それをもう一方がそのもう一方の核と融合した使用者の核を通じて制御することによって成り立つ魔法なので、制御を誤ると使用者が死ぬ。
対策の魔法が作られてしまったため、知るものが少なくなった。
[補足]魔人狩りについて
魔人狩りは勢力争いが原因のことが多いため、魔人は身に覚えがないことで殺されたりすることがある。
例)勢力争いの相手が魔人であるという噂を流す
→暗殺
→本物は、既に魔人によって殺されていて、魔人が人間のふりをしていたから退治したと宣言。
→信じてしまったものは周りに魔人がいないか血眼になって探す
→信じていなかった人たちも巻き込んで疑心暗鬼になる。
→自滅する(殺しあう)
→魔人のせいになる
→討伐隊の設置
→未開の地だろうがなんだろうが無理やり魔人の集落などにやってくる
→魔人殺される
「ガーゴイル」
・現在この個体は知性を失っている。
・寿命の概念はない。
・以外と頑丈。
「土竜」
・現在このモンスターは知性を失っている。
・少し強いモグラ…それだけ。
・ドラゴンだと、地龍。紛らわしいのは土龍。これは、もうただのでかい蛇。
「土喰蟻」
・現在このモンスターは知性を失っている。
・蟻と同じ習性がある巨大な蟻。
・現在いるのは働き蟻と兵隊蟻。羽蟻が三匹。ちなみに雄が二匹の逆ハ状態。
・土から栄養を得る。岩などからも可能。
人間と同じような味覚があり、どちらかというと、土が食べられるというだけで、できれば味が濃いものを好むらしい。
「砂鼠膿」(さそう)
・知性がない。
・鼠…に取り付く膿のようなモンスター。中では毒入り血液ができている。
・鼠の体に薄い膜のようなものを張り、水分を逃がさないようにしている。
・空気中の水分を鼠の体内に直接入れることができる。
・旅人が水を求めて血を飲むと、毒は急速に体から水分を奪い、摂取したものは干からびて死ぬ。
・毒は砂と乾いた空気から作り出される。
よって、都市部ではなかなか生活できないため、砂漠などでしか見られない。
…etc(後はスケルトンや普通のスライムなど定番のモンスター多数とマッド等が名前に入るモンスター少数)
(と、こんな感じになりますね。〉
「ガーゴイルからあと全部に知性なしって……俺だってはわわ軍師レベルは求めてないよ?でもさ…相談相手くらいにはなってくれる魔物がいるかと思ってたのにね…」
〈マスター。僭越ながら、相談相手なら私が担当させていただきますので、気を落とさないでください。〉
「お、おう。ありがとう。」
いいやつではあるんだが、この喋り方とかがな…
主従みたいな関係じゃなくて友人みたいなやつが欲しいって意味だったんだが。
「ちなみになんでこんなことになってるのか理由わかる?」
〈おそらくですが、たいていのモンスター達が失ったのは前マスターの影響かと。そのせいか、私の記憶も曖昧でして…〉
「前のマスターか。どんなやつだったんだろうな?」
〈少し荒いところもありましたが、なかなか頭も切れるいいマスターだった。ような気がします。〉
「ふーん。別にトチ狂ったとかじゃなさそうだな。いや、第三者の干渉があったとか?」
〈少なくとも私が生み出された時には、このようなことにはなっていなかったはずですので。
そこの赤ちゃんはダンジョンのものではないので、影響はなかった。
そして、そこのスライムは、あなたの魔力から生み出された存在のようですので同じく影響がなかった。といったところでしょう。〉
「え?あ、そういえばこのスライム、俺が正式なダンジョンマスターになる前からいたんだが?しかも、俺が生み出したことになってたし。」
〈モンスターは、膨大な魔力を保持しているものが、最大魔力量を超えて自然回復をしようとした時に出る余剰魔力から生まれるそうなので、なんら不思議なことはありませんね。
魔力とは魂の鼓動。だからこそ、前のマスターの魂が変質した時に我々も影響を受けたのでしょう。
しかし、スライムだとしても、そんな簡単にできるものではないので、マスターの魔力量が馬鹿げているのか、質が高いのか。
ちなみに質が高いと強力なモンスターになるようなので、量だと考えられます。〉
「うん。最後のちなみにはいらなかったよね?」
地味に傷つくよ?
「それで、この知性なし治らない?」
〈私達が彼らに逐次命令を下せば大抵のことはさせられると思いますが?〉
「それなら、治療法がわかったらラッキーぐらいに考えておこうかな。」
〈…可能性としてはマスターの体の一部をもっと取り込ませれば…といったところでしょう。〉
「何度も体を切られるって、痛覚がなくても怖いんだが。」
〈魔力でもいいかもしれませんよ?〉
「試してみるか。」
俺は四足歩行で蟻に近づく。
ジャリジャリジャリジャリジャリジャリ
そして、隣に座る。
〈マスター?何をしておられるのです?〉
「いや、魔力の使い方とかわからないし。スライムくんの時に言ってたことを思い出したら、そばにいればいいのかと。」
〈なるほど。マスターは魔力を使えるようになりたいのですか?〉
「そりゃな。」
〈では、私に触れてください。〉
「おう、待ってろ。」
ジャリジャリジャリジャリジャリジャリ
〈私には魔力がないので、流して循環させることはできません。マスターとにかく全てを私にぶつける感じで気合いを入れてください。〉
「?いいけど。」
グググググググッ
「どうだ?なんかわかったか?」
〈ふむ。微弱ですが魔力が感じられますね。今から魔力を回すので覚悟してくださいね?〉
「?ってアバババ。す、スト、ス、ストップ!!」
〈…ダメでしたか?マスターの魔力を回しただけなのですが…〉
「何ていうか、極端に冷たいところから極端に暖かいところに出た時、血管がかなり膨張するだろ?あんな痛みだ。」
〈私には体かないのでわかりませんね。では、少しずつ慣らしていきましょう。では、いきま「ちょっと待って。」はい。〉
「訓練の前にあの蟻達に命令して空間を広げておきたい。」
〈とのことです。わかりましたね?〉
ガチガチガチ
返事も何もなく、周りの岩を食い始めた。
…あの顎の力ヤバイな。
〈では今度こ「あいやちょっとま」そって、あ「アバババ」〉
それから三時間ずっとアバババ言ってた。
それでも全然魔力というものがわからない。
「はぁ、はぁ、まだ、なのか?」
〈はい。〉
いつになったら使えるのか……
ちなみに、空間は三十畳ほどの広さになった。天井は怖くて手をつけさせてはいない。部屋の数も九つほど増やして互いを害さないような組み合わせで待機させることにした。どうせまだ誰も入ってこないし。
〈!マスター!!〉
「どうした!?ようやく俺魔力が使えたのか!?」
〈いえ、そうではなくここから上に10メートルほどに生命反応があります。殺すか捕らえるかして、ポイントを稼ぎましょう。〉
「あ、やっぱりそうやって稼ぐものなんだな。で?相手はどんなやつなんだ?」
〈人型です。モンスターか人類か。〉
「どっちにしろ|面倒くさそう(面白そう)な気がする。よし、ユクゾッ。」
〈?マスター地上へどうやっていくつもりなのですか?〉
あ。
「蟻さん頼みます…」
恥ずかしい…