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異世界男女戯れ合い録

異世界男女戯れ合い録  ③ドジっ子エルフ

作者: 稲野 黒茶

おなじく短編の『性的興奮』『メイドは虫嫌い』もどうぞ。

コンコン。


「入るよっ!」


「ん、お疲れ様です。ルナ」


狩りから帰った私が扉を開けると、彼は座ったまま、背を伸ばしこちらに振り返った。

彼はおそらくずっと机作業をしていたのだろう、目にクマができている。


「……終わりそう?」


「そうですね、もうすこし続けさせてもらってもよろしいですか?」


「うん! もちろん!」


 すこし遠慮まじりに笑いながらの彼の提案に、私は嬉しさをもって返した。

 そんな顔しなくてもむしろずっと居てほしいのになあ、だから言わないと今日こそは。


「あの……それならね……うちで晩ご飯どうかなって……っ!」


よしっ! ちゃんと言えた。彼がこの家に通うようになってからはや1年。ようやく次のステップに進めるかも。


「気を使ってくれなくてもいいですよ。ただでさえ半日もルナの家を占拠してしまっているのに、いつも通り『眠りの森』から帰らしてもらいますね」


「そ、そっか!」


そっかじゃないだろ。私。もっと彼とお話がしたかったのに。


ていうか、毎日一人暮らしの女の家に上がっているんだから、少しくらい意識しないのかなあ……。


「まあ、エルフの郷土料理には興味ありますが……」


「えっ! いま興味あるって言ったよね!」


 私は彼がボソッと呟いた言葉を聞き逃さなかった。今回ばかりはエルフの風の加護に感謝しよう。


「あ、いえ」


「いった! ずえったいにいったもん!」


「あはは。じゃあ、お願いします」

やった!


 長い間の夢がかなったことに小躍りしそうになった体は抑えるけども、この顔はどうにもならない……ああ、恥ずかしいくらいにやけちゃってんだろうな。


「じゃあ作るから待っててね!」

 あ、言い忘れた。

「それと料理中は覗いちゃダメだからね! きらいには……絶対にならないけど、切り風のせてビンタするからね」


 問題は狩猟しかしてこなかった私にまともな料理ができるのかということなんだけど。





 大葉と木の実のサラダ。

 ボアのカットステーキ。

 沢山のきのこが入った味噌汁。


「うん完璧っ!」

 かなり手間どったものの、見た目も上々、味だっておいしいはず。エルフの味覚と人間の味覚は違うから何とも言えないけど。


「へえー、できましたか?」


「うひゃああ!! ……みっ見ないでって言ったじゃん!!!」


 背後から聞こえてきた声の正体に気づいた私は恥ずかしさのあまり、左手に魔力をためて彼の方へ向けた。

 この魔力量なら木をなぎ倒せるだろう。


「いい匂いですね。とってもおいしそう」


「あ、あう……」


 彼の微笑みと言葉によって私の魔力は霧散して彼の前髪を揺らすだけのそよ風になった。

 本当に彼のこうゆうとこずるい。


「と、とにかくっ! 食べるよ! ほらほらほら!」


「うん。いただきます」





「うん。とってもおいしいよ。ルナ いい葉っぱを使っていますね」


 まずはサラダを口に入れた彼が優しい微笑みとともに感想を述べた。


「やったあ!!」


 もう私は感情を隠すことを諦めた。こんなにも嬉しい気持ちは久しぶりだったから。彼の微笑みは私を笑顔にさせてくれる。


「そういえば、この地域の植物調査はどれくらい進んだの?」


 彼は世界中の植物や菌類を徹底的に研究することが夢なんだって、少しおかしいけど、そのおかげで彼と出会えているわけだから感謝しないと。


「そうですね折り返しまでは来てると思いますよ」


「折り返し、半分かあ……」


 彼が唐突に『眠りの森』をこえてエルフの集落の離れにある私の家に来たのが1年前である。

 ということはあと1年か……


「ふふ、最初見たときびっくりしたよ。まさかエルフ以外にあの森を踏破できる人がいるなんて」


 少数民族であるエルフを護る不可侵の結界ともいえる眠りの森を武器も持たずに往復して「また来ます」なんて言われた時は私たち全員があんぐりと口を開けたことを思い出す。


「ん、植物さえあれば迷いませんよ。 味噌汁いただきますね」


「うんどうぞ!」


彼は味噌汁が入った器に手を伸ばした。とにかく今はこの幸せな時間を噛みしめよう。


「これは…………沢山のきのこが入ってますね」


「うん。森でとれたおいしそうなきのこだけ入れたの!」


「…………そうですか……ではいただきます」


私は彼が器を傾けるのを真似するように私も味噌汁を啜る。大丈夫、おいしい。きっと彼もおいしいはず。


「おぉ、味噌汁も美味しいです。ずっと飲みたいくらい」


ぶっ!!!

彼の言葉に私は飲んでいた味噌汁を吹き出してしまった


「えほっ、えほっ! ちょ、ちょっと! そそそそれって……っっ!!」


エルフ民族では毎日味噌汁を飲みたいと女性にいうのはプロポーズに等しい言葉である。


「いきなりむせて大丈夫ですか?!」


「…………」


やっぱりそうゆうつもりで言ってたんじゃなかった。分かってたけどね。ふんっ!


「べつに、おかわりならあっちにいくらでもあるから……」


「……あはは。じゃあいただきます」


鈍感な彼でも少しは察してくれたのだろうか。彼の笑顔が少しひきつっている気がしなくもない。

御かわりを取りに席を立った彼は…………崩れ落ちた。


「ちょっと! 大丈夫!?」


「う、意外と早く効いちゃったな」


床に倒れた彼は駆け寄った私に苦しそうに微笑んだ後、目を閉じた。








最低だ。私は。

ベットで横になっている彼の隣で私は自分のことを殺したくなるくらい嫌いになった。

味噌汁をよく調べてみると、今回だけは入れてはいけないキノコが入っているのが分かった。

私たちは基本的にキノコの毒くらいなら効かない体だけども彼はそうではない。

私のせいだ。


「る......ル、ナ?」


「っ! 大丈夫!?」




「う......ん。マヒ茸......だから、しばらく......すれば動けるようになります」


「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさ......」


彼が目を開けた途端私の目から涙が止まらなかった。


「死ぬわけじゃ、ないんだから、もう謝ら、ないでください」


「......ねぇ、どうして何も言わなかったの? 」


彼は植物学者である、そんな彼がキノコの区別がつかないなんてことはあり得ない。

事実、思い出してみると味噌汁を目にした彼はどこかたどたどしかった。


「だって、ルナがせっかく、作ってくれ、たから......」


彼はいつだってそうだ、相手のことだけ考えて、自分のことはどうでもいいように振舞って、それは確かに優しい、すごく優しいけど。


「いやだよぉ......悪いことも私に言ってよ、怒ってよ、命令してよ、要求してよ......辛いよ私ばっかり」


押しても引いても私と彼のとの距離はちっとも変わらない。それが何よりも苦しかった。


「そっか......じゃあ、お願い、を聞いてもらってもいいかな?」


「うん。なんでも聞く......」


「マッサージ、してほしいんだ............麻痺には一番、効くから」






私は彼の胸元を揉み解すように両手でぎゅっと掴んだ。


「こ、こう?」


「ん、もっと強くお願いします」



「ん! こう?」


「......もっと強くしていいですよ」



「んん! これなら!」


「......もしかしてこれが全力?」



「うう......」


「やっぱり、非力ですねエルフは」


「ごめんなさい......」


「きっ気にしないでください。んーと、じゃあ、やってもらえることは..................ありませ......」


「まっまって!!」


ありませんと言う言葉遮って、私ができることを考える。

それにしてもなんで私はこんなにもダメダメなんだろう。本当に死にたくなってくる。


なにかできることは............あった!!



「ふ、服脱がすから!」


「えっ?」


「あっごめん、私から脱いだほうがいいよね」


「えっ? えっ? 」


私は身につけていた服をポンポンと脱いだ。


下着姿になった私は彼の服を脱がせにかかる。


「ちょ、ちょっと!」


「動けないんだから、私に任せて」


上着をはずしてっと、シャツとズボンも脱がせてっと。

うん。これでおっけー。


「知ってる?、エルフの皮膚には病気や怪我を治す粉があるってこと」


「知ってますけど......どうやってそれを僕の体に?」


「そりゃあもちろん。裸で体を擦りつけあって....................うひゃあああ!!! やっぱり今のなし!!! 忘れて!!!」


露わになった胸を隠しつつ彼から急いで飛び去った。

いったい私は何をしていたんだろう。なんとか役に立ちたいという想いが強すぎて我を忘れていたようだ。

恥ずかしい恥ずかしすぎる。痴女だよこんこんなの。顔から火がでちゃいそう。


「ルナ、やっぱり僕一人で......」


「っ! だめ!」


どんなに恥ずかしくても、エッチな女だって思われても、あなたから求められない事だけは絶対にいやだ!!


「......私のせいでこんなに苦しそうになったんだよね、だから私が責任もってちゃんと抜いて楽にしてあげるから!」


「その言い方は......なんでもありません」







私は仰向けになった彼に覆いかぶさった。二人とも下着姿である。


「んっ......どう?」


「......体の疲れが取れていく感じです」


「そっか、じゃあこするからね」


腕は彼の首元に回し、顔を胸板にこすりつけて、心臓の音が近くなるたびに顔が熱くなって彼に気がつかれていないだろうか心配になる。

足もできるだけ根本で絡めて、足先までしごくように動かした。



「んっ、はぁはぁ、どう?」


あついよ、汗ばんだ体はただでさえ引っかかっていた私の胸をさらに滑りを悪くさせる。


「ん、もう少し上にきてもらえますか......その、あんまり下の方は」


「わっわかった! ......んっ! これでいい?」


指示通りに彼の頭の方へ体全体を移動させる。

さっきよりも恥ずかしいよ、これ!

む、胸が彼の顔の近くにって! 吐息が胸に当たってる!


「ひゃあ......っん! あっ......!」

くすぐったいよお!

これ以上はもうだめ!


「しゅっしゅ、しゅーりょうー!! やっぱ、恥ずかしすぎるよこんなの!!」


私は彼の下腹部に腰を乗せたまま上体を勢いよく起こして、ギブアップの意思を示した。


「終わるの?」


「ごめんなさい! 無理です! 」


そして私は彼に謝るとき気がついてしまった。


「ふーん」


彼がとてつもなく悪い笑顔をしていることに。

彼と目があった瞬間、両側から触っていないはずの腕が伸びてきた。


「えっ!? なんで!? 腕はまだ......! ひゃん! んっ!ちょ......そこさわっちゃ......だめぇ......っ!」


私はそのまま彼にすごい力で抱き寄せられてほっぺ同士が当たるほど密着した。


「僕が毒キノコの耐性すらもってないと思いました?」


「そんなっ!じゃあ、いつから??」


「ルナが抱きついてくる前にはもう」


「〜〜っ! ばかばかばかっ!」


けっこう前だよそれ! そしたら体同士を擦りつけることなんてなかったってことじゃん!



「そっそれならもう離してよっ! こっちは恥ずかしすぎて死にそうなの!!」


さっきから駄々っ子のようにぽかぽかと彼の胸板を叩き、体を揺らすが拘束がとけそうにはないのだ。

顔の温度も上がりすぎてクラクラしてきた。





「さっきのプロポーズの返事をくれたらいいですよ」




耳元で囁かれたこの時の私はマグマにも負けない熱さを持っていたと自負している。











おなじく短編の『性的興奮』『メイドは虫嫌い』もどうぞ!


前者はいちゃいちゃ

後者はエロめなお話でございます。

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