家を買う…つもりが
ツユナの初陣から数日後。
「そろそろ宿屋暮らしも飽きてきたな」
なんせこの町に来てから…ずっと同じ宿の同じ部屋。
慣れ親しんだとはいえ所詮宿。
やることもできないし…
「よし、家買うか」
確か前に町の立て札で見た限りでは、そんなに高くなかったはずだ。
ちなみにだが、立て札ってのはこの町の色んな情報が書いてあるものだ。ギルドの横に立っている。
「ユーマ、家ってどんな?」
「ネシアさんの実家みたいなやつですか?」
おうふ…そんな金があるとでも…
まずあんなに広くても使い道ないしな。
身の丈に合うものがいいんだよ、こーゆーのは。
「ツユナ、家って買うときどうすりゃいいんだ?」
「…さあ?」
一番知ってそうなツユナ、あっさり撃沈。
「とりあえずギルドに行くといいんじゃないかなーって思うな」
「シキ、おもろないそれ」
うん、シキが正解だから。
面白さを求めていたわけじゃない。
「ギルドに行くか」
「やな」
「「はい」」
ここのところ、毎日のようにギルドを訪ねてるからな。
道は完璧に覚えた。
宿からおよそ10分で着くからな。
間違えるはずもないレベルだ。
*********
「ここは…どこだ?」
「さあ?」
「治安が悪そうやなぁ」
「どこでしょう…」
絶賛迷子中。
まさか道が工事中だとは思わなんだ。
迂回路の地図の通りに行ったはずなのに、彷徨い始めてすでに60分。
宿にもたどり着けないし…
こりゃ家を買うどころじゃないな。
たぶん家に帰れなくなる。




