街の探索という名のお買い物
「ユーマ、おはよう」
「んんっ…ユーマさんおはようございます」
「おは…よう」
朝から死にかけだ。
首を絞められつつ背中に感じる二つの膨らみ。
そして足を固められ。
嬉しいが、死ぬ一歩手前って所だ。
…これでも嬉しいのかDTの哀しき性ってやつだ。
「ユーマ、どうしたん?寝起きなのに死にそうやん」
「そういえば。寝られなかったのですか?」
…ネシアはわかってて言ってるな…
絶対面白がってる。
「寝れたよ…」
自然睡眠じゃなくて、強制睡眠導入されたけどな!
気絶という名の。
「はあ、とりあえずメシでも食おうか」
着替えて階下に降りる。
「おはようございます」
女将さん、顔がニヤついてますよ。
何もしてないですからね。
…朝ごはんは普通に美味しかった。
「今日はどうするんだ?」
いまいち貨幣価値がわからん。
宿代からすると、そこそこありそうなんだが。
やっぱりそーゆーことは知っておきたいし、食材とか気になるし。
「市場にでも行くか?」
「ええなぁ。ウチ髪留めが欲しかったんや」
「私は…んー…とりあえず欲しいです」
シキ、欲しいのはちゃんと決めてから言いなさい。買ってあげるから。
そう思っていた時期がありました。
「ユーマ、これ買って」
「ユーマさんあれ安いですし…まとめ買いを」
「ユーマ、あれが…」
「これかわいくないですか?ユーマさん」
……女子の買い物、舐めてました。
荷物持ち+財布係。
そこそこ宿に泊まれたはずのお金が、今夜の分を残して消えました。
*********
「ねえ、ユーマ。ウチ反省しとる」
「ちょっと買いすぎましたね」
ちょっとじゃねえだろうよ…
恥を飲んで女将さんに聞いたけど、2人が今日買った金額、四人家族が一か月暮らせる金額より多いって。
あれ?じゃあきのうの月光草のクエストそんなに報酬があったのか…。
得したのかよくわからなくなってきたが、成金が一日で全て使ったみたいなもんだ。
そう考えると、江戸っ子みたいでかっこいく聞こえるから不思議だ。
『俺は宵越しの金は持たない主義でね』
…なんてな。明日からどうしよう。