遭遇戦⁉︎
「なんとかまにあってくれ…」
遠目に黒煙が見えてから、いそいではいるのだが時間は過ぎていく。
「ハァ、ハァ…」
「…そろそろ村の端についてもよさそうだが…」
もう黒煙は目の前と言っても良いほどだが、村のーー建物の姿は一向に見えない。
「ユーマさん、あれ…」
シキが指さした先には、死後硬直で剣を構えたまま倒れている人の死体。
「何があったんだ?こんなことってあるのか?」
「いえ…私も初めて見たわ。それにしても…」
「私もです。しかし…これは…」
薄っすらと煙が晴れてくると、村の光景がわかってくる。
盗賊か何かいるのかと思っていたが…
視界に入るのは、既に生者の時を終え、静かに倒れ伏す、物となってしまったものたちだ。
ただーーーー。
「おかしいな。これは」
「ええ、なぜこのまま…」
死体はすべて、生きていた時に生活していたままの姿で倒れている。
戦闘があった様子も、人々が逃げようとした様子もない。
道端で談笑していたであろう妙年の女性らは、その笑顔のまま。
駆け回って遊んでいたのか、子供たちは走る姿や地に落書きをしている姿のままなのだ。
「誰も…いないな。どうするか…」
「そうですね。ユーマさん、ここは怪しい気がします。早く場所を動かしたほうが良いかもしれません」
「せやな、胡散臭い。なにか魔術でも使われたんかもしらんな」
「なら、反対側にさっさと抜けよう」
得体の知れぬ恐怖。
これは、見たものしかわからぬだろうが、いつ何が起きるかわからない。
すこし気を引き締めよう。
「くっくっくっ…なかなか面白いものを見つけたなァ、しばらく観察してみるか」