最後の皇帝(私が見た夢3)
こんな夢を見た。
私は一人の男だった。
皇帝の弟だった。
「お前は皇帝にはなれない」
兄は私に向かってそう言った。
さあ、早く私を殺すがいい!
お前にその勇気があるのなら!
私を見下しながら、兄は叫んだ。
月の見えない夜だった。
私は反逆を起こした。
闇夜に紛れ、兄を殺した。
そうして私は皇帝になった。
兄は憧れだった。
自分も兄のようになりたかった。
兄のような皇帝になりたかった。
でも、なれなかった。
国はだんだんと滅びていった。
豊かだった国が、貧困にあえいだ。
「あの男は皇帝などではない。殺せ!」
「「「殺せ!」」」
そうして私は殺された。
この国に暮らす民によって殺された。
なんて儚い夢だったのか。
私は兄が言ったとおり皇帝にはなれなかった。
民が私を認めなかったから。
月が照らす夜、民は国を捨てた。
家を、王宮を、国を捨てた。
そうして国は埋もれていった。
皇帝を夢見た私と共に埋もれていった。
やがて人々は忘れるだろう。
ここに小さな国が存在し、滅亡したことを。
それはとても栄えた国だったのだ。