乙女ゲームみたい(笑)ホスト教師の場合
勢いです!
夏休みになる前の終業式を終えて、会沢ひまり達は意気揚々と廊下を歩いて教室に戻っていた。
「あーなんだ、常識をもって夏休みを、すごせよー」
耳に入ってきた、とある教師の終礼の言葉にひまりは眉宇を潜め
「てめぇがな」
思わず、言ってしまった。
「って口が悪かったわ~」
おっと、失敬などと言いながら、口元を抑えた。
そんな様子に、友達たちは
「どうした~?」
不思議そうに尋ねてきた。
「いや、ね、校長と同じことを、このクラスの教師が言ってたからねえ~」
「ああ、ここね」
「この教室ね~」
納得したように教室の中の教師を、冷めた目で見た。
「それに、さっきの校長の話、『節度ある理性っじゃなく!常識をもって夏休みを過ごしてください』あれやっぱりさあー・・・だよね~」
「うん、うん、うん、そうだよね~」
「しかも!思わず『理性』って言っちゃった感が否めないよね~」
「だね~」
「しかもあれ、一部の人達に切実に当てたものも多く含まれてたよね~」
「だね~、てかもう、愉快な仲間達(笑)でしかないけどねえ~」
「ほぼ、切実に、言ってたよねえ~本人たち、何をうんうん、納得してるんだか。てめーらに言ってるんだけど!って、校長内心思ってるよ~」
時々、校長頭のテカリに青筋立ってたもんね~などと、校長の頭のザビエルを思い出しながら話す。
「ほぼ、全校生徒が、愉快な仲間達(笑)の方見てたよねえ~」
「何とも言えない表情で見てた・・・」
「なんだか、泣けてくるねえー、本当に気づいてないのかよ!って」
「それに、教師たちもなんだか、ある教師に視線を向けてたけどねー。てか、本人気づいてるよね?あの大多数の視線。まさか、気づいてない何てことさすがに、あの教師ないよね~?本当、馬鹿なの?あほなの?間抜けなの?死ぬの?って感じ~」
「自分が愉快な仲間達(笑)中に含まれているって、わかってるのかねえ~」
「いや、分かってないでしょう!分かってたら、生徒に手出さないって!」
「てか、ロリコンにも程があるよね~」
「本当に、ロリコンがいけないなんてことじゃないんだけど、まあ、ロリコンだろうがシャタコンだろうがババコンだろうがジジコンだろうが、それは他人の趣味だから他人がとやかく言う筋合いなんてないけどさあ、それ以前にあんたは教師だろうが!と、一応教育者だろうが!と、趣味や趣向、恋愛感情は、生徒に分からないようにしてもらいたいよ。垣間見えた瞬間なんだか、一気に不信感が増えるしさあー」
「そうそうそう!乙女ゲームや二次元だったら、ロリコン萌え~やホスト教師乙、なんだけどさあ、なんだか、現実は気持ち悪いよねえ~。まあ、実際に手を出されるかって聞かれたら、向こうから、ごめんなさい言われるの分かってるけどさあ、そういう目で、生徒見てるってわかるとねえ~。特に、思春期真っ只中な感覚の子だったら特に」
「そこらへん、教師なら察してくれなくちゃねえ~」
「もう少し常識持ってもらわないと、本当に、教師かって、生徒に、説教こく前にてめえーが常識持てよって大声で、言いたいよ!」
「他の教師たちもはらわた煮えくり返ってるんじゃない~?あのホスト教師のせいで、他の教師までも威厳が地の底に落ちてるし。教師信用できないって、生徒思いだしてるしね。顔いいからって何でも許されるわけじゃないの、そろそろ気づいた方がいいと思うんだけどーねえ」
「いい歳した教師が、何してんだよって、普通に教育員会に訴えられるって。あんなあからさまじゃ、教員免許、剥奪されるの時間の問題じゃない?」
「世の中世知辛いからねえ~」
「次はないでしょう」
「乙女ゲームだったら、そんなことないけど、むしろ容認されているけど、現実はきついって!」
「そうだね、乙女ゲームだったら、胸トキメクけど、現実はときめくどころか、ドン引き通り越して、心底、気色悪って、眉潜めるよねえ」
「その内、どこどこの教師が淫行を働いたって、テレビに出るんじゃない?」
「うわー、最悪、何やらかしてるんだが」
「名門学校の名も評判ガタ落ちだろうけど、その学校出身っていうのも卒業生白い眼で見られるよ。もしかしたらそれだけじゃなくて、就職なんかに影響してくるかも」
「最悪ー」
「右に同じ」
「本当に、」
「てめえーが、常識持てよっていいたいけどねえー」
といいながら、再度、教室の窓からホスト教師を見る。
「ホスト教師の担当のクラスの生徒もかわいそうだよね~」
「ほんとだよねー」
「うげぇ、ロリコンー」
「いやいや、ロリコンがダメなんじゃなくあれが、ダメなんだよ。小さい子やかわいい子は正義だよ!」
「そうだね、あれがダメなんだよね」
「ほんと、ダメ教師だよねえ~」
「・・・。・・・。・・・」
思わず、ホスト教師はその生徒達を探すために、教室の扉を開けた。
けれど、それと同時に入ってくる視線。廊下にはかなりの生徒がいた。にもかかわらず、聞こえてきた声。視線・・・。
そして、改めて教室の生徒からの視線。
この冷えるような棘のある視線。
一気に覚めていくような感覚。
思春期特有の侮蔑の視線。
『その内、どこどこの教師が淫行を働いたって、テレビに出るんじゃない?』
ぞくりと全身の血の気が引く。
やばい。心底やばい。
全校生徒が、自分をそんなふうに認識していたなんて。
普通に考えればわかる事。
恋愛とは恐ろしい。常識も理性もふっとばして。
思い出せ、生徒の視線そして、教師たちの視線。
もうどうしようもない。
どう否定しようとも・・・。
いまさら、自分が教師だったことを再認識してももう遅い。
今日も今日とて会沢ひまりたちは愉快な仲間達(笑)の一人を現実に戻したのだった(笑)
現実とはまさに残酷である。
けれど、残酷でもそれでも現実は存在していて。
今日も今日とて会沢ひまりたちは絶好調に日常を謳歌している。
オタクな毎日を前世もそして今生も変わることなく生きている。
乙女ゲームの世界だろうとなかろうと、知らなければそれは、それは現実の普通の世界。
たとえ、ホスト教師を、なんだか現実の世知辛い世界へと叩き落としちゃったりなんかしても(笑)