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第五話



ぐるぐる、ぐるぐる。


世界が回る。


ああ、ここはどこだろう。真っ暗闇で周りが見えない。でも、回っている。

立っているのも辛くなって、その場に座り込んだ。どうしてか、これは夢だと、そう思う。



『皐月、どうしたの?』



優しい声色が聞こえて思わず振り向むく。しかしその声の主は私の方を向いてはいない。


お母さん…?


そう呟いたつもりだったが、自分から言葉は発せられず、空気が喉を通った感覚だけが残った。


これは、過去の記憶。だって、現実にはお母さんはもういない。殺され、た、んだ。


心なしか少し若い後ろ姿は、かがむようにして少し下の方を向いている。

ああ、その先にいるのは昔の自分なんだと、なんとなくわかった。



『ううん、なんでもないよ!あのねおかあさん、きょうねー』



小さな私は何事もなかったかのように話をはじめた。それはごく普通の内容で、この光景はいつの間にか壊されてしまっていたのだと、そう実感せざるを得なかった。


お母さんが小さい私の手を引いて私に背をむけて歩き出す。私は声をかけようと一瞬口を開きかけたが、すぐに声が出せないと思い出して口をつぐんだ。


悲しいとも寂しいともつかない変な感覚が胸中を占める。何と言い表せればいいのだろうか。私は伝える術なんか知らなくて、やっぱり口をつぐんだまま立ち尽くしていた。



夢だとわかる夢ほど、失望させるものもないだろう。

幸せだった頃の記憶を見ても、ただ辛いだけ。目を覚ましてしまえばまた現実に戻ってしまう。


出来ることならば、一生目覚めなくてもいい。


夢の中の私が、一瞬さみしげな表情でこちらを向いたことには気づかないふりをした。


短くてスミマセン・・・

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