7話:ダイエット、健康器具を買おう!
ダイエットの心得! を春香から聞いた後、あたしたちはヤマダ電機へ来てる。
「みさき、あんたの体重計って体脂肪率測れないのね。体脂肪率も測れるやつを買いに行きましょう!」
という春香の一言で、いやいやするあたしを引っ張って無理やりここまで来ることになっちゃった。
「春香あ、別にあたし、体脂肪率なんてわかんなくてもどっちでもいいんだけど……」
「ダメダメ! 体脂肪率を知ることは大事だよ。どれだけやせたって、体脂肪率が高かったら何の意味もないんだから」
うう……やせればあたし、どっちでもいいよう。
ヤマダ電機の中に入って体重計を目の前にして、体重だけが分かる体重計……1180円、体脂肪率も分かる体重計……11800円。
この価格差を見て、わざわざ体脂肪率も分かる体重計を買う必要がどこにあるかが分かんない。ってあたし、今10000円もお金持ってたっけ。
慌ててポケットから財布を取り出して、財布の中身を確認してみる。ひぃ、ふぅ、みぃ……3000円しか入ってないや。
ど、どうしよう……今月後3日。3000円で生活しなきゃいけないのに。体重計なんて買ってる場合じゃないよお。
「ね、ねえ、春香? ちょっと相談があるんだけど……」
「んー? 何?」
「あ、あたしね。ちょ、ちょっとお酒飲みすぎたみたいで、お金がないみたいなんだよねえ……だ、だから、体重計買うのまた今度にしない?」
「あん?」
は、春香ってばにらまないでよお。『あん?』なんて、睨みつけられながら言われたら、すっごく怖いよお。
「大丈夫大丈夫、私がお金出したげるから。おごりおごり。気にしない気にしない」
「えええ? そ、そんな悪いよう。お金、来月になったら払うから」
これ、11800円もするんだよ? なじみのお店だったら、飲みに4回は行けちゃうよ。
そ、それに春香ってまだ働いてないよね。働いてない人に働いてる人がおごられるってちょっと……って思っちゃう。
「いいのいいの。私、家庭教師のバイトで結構稼いでるんだから。ただし、頑張って痩せなさいよね」
うっ、そんなこと言われてしまったら、頑張るとしか言えない。
けど、あたしの為にそんなに払ってくれるなんて……。
「さっすが春香。太っ腹だねえ」
「太っ腹なのはみさき。頑張ってやせてね」
……地味にひどいことを言ってる気がするよ、春香。
「体重計はオムロンのでいいよね。なんか、セールやっててタニタより安いし」
タニタとオムロンってどう違うんだろう……聞きたいけど、なんとなく今の春香に聞いちゃいけないような雰囲気があって聞けない。
「あ。あとは万歩計も買わないとね」
「万歩計? いいよお、そんなの。別に体重さえ減れば、特にそんなに気にしないしい……」
「だからダメだって! さっきも言ったけど、どれだけやせたって、体脂肪率が高かったら何の意味もないんだから。みさき、体重落として、脂肪を落とさず筋肉なくすとどうなると思う?」
「さ、さあ? 脂肪の方が筋肉よりもやわらかそうだから……全身がふにゃふにゃになる、とかかなあ?」
突然の質問に、ちょっとびっくりしながらも適当に答えた。
そんなのあたしにわかるわけないじゃんかあ。
「ぶぶー。はずれ。確かにおなかは今よりももっと柔らかくなるかもしれないけど、筋肉ってね、脂肪よりカロリーを消費してくれるんだよ。基礎代謝量って言うんだけど……細かいところはどうでもいいよね。つまり、筋肉をしっかりつけてるの人の方が、たくさん食べても太らないってこと」
へええ……そんなの全然知らなかった。
じゃああたしって、ほとんど運動してないからきっと今、体のお肉って脂肪だらけだよね。きそたいしゃりょうっていうの、全然高くないのかなあ。
「筋肉つけないと、せっかくやせてもすぐにリバウンドしちゃうよ? ダイエットに一番大事なのは、太らない体づくり! これが一番大事なんだから。これは日々体を動かさないとどうにもならないからね。という訳で、運動不足のみさきは、万歩計を買うこと」
えええ……やだなあ。バスケットしてるときは別に我慢できたけど、バスケットやめてからは、もう2度とあんな辛い思いなんてしたくないって思ってるのに。またあんな辛い思い、しないといけないなんて言い出さないよね。
「えっと、万歩計も……ちょうど古いの在庫処分しようとしてて安いし、オムロンのでいいね。別に去年のモデルのだって今年のモデルのだって、そうそう変わらないし。あ、そうそう。万歩計って言うぐらいなんだから、明日からしっかり10000歩ぐらい歩きなさいよね」
「えええ!? そんなのむりだよお! あたしの仕事、デスクワークだよお!? そんな仕事場で10000歩も歩くなんて、どれだけ頑張ればいいと思ってるのさあ!」
「家帰ってからがんばって。そういう積み重ねが、ダイエットの第一歩だよ。みさき」
そう言って、販売価格2180円のオムロンの万歩計と、11800円のオムロンの体重計を手に、春香はレジに並んだ。
はぁあ……これから毎日10000歩だなんて、気が重すぎるよお。
ダイエットって大変だなあって……お金を払ってる春香を見て、心の中でつぶやいた。