5-僕は悪くない
「うーーーーん」
丸二日。
先日の意識外の暴走は、半年ぶりの魔法を見て興奮してしまったということで片付けられた。
事件の後、父上には心配と共に、ちょっぴり叱られた。
病み上がりで無理をするなというもっともな正論を頂き、謹慎という名の安静命令が出た
それとルロリアにもあの騎士、メープリーにも怪我はなかったらしい。
抉られた箇所は大惨事だったらしいが、地属性の魔法で直ぐに直せたらしい。
「むむむむむ.........、ぷはぁーーー無理だ。」
そんな俺が今何をしているかと言うと。
あの日、魔法を使った時に流れた不思議な力。
魔力だと思われるそれをどうにか感じようとしているのだが。
「てんでダメだ。詠唱の仕方が違うのか?」
詠唱してみたがあの日以降魔力の変動は感じられなかった。
黒雷球
ゲームでは記されていなかったが、メルドは父上と一緒の『雷』の固有魔法もちだったのか。
出来ればほかの魔法、四大魔法も使ってみたかったが、固有魔法の方が強いしかっこいいから良しとしよう。
コンコン
「メルド様、アグネスでございます。謹慎明けを伝えにきたと共に、メルド様が希望であれば魔法の指南をしても良いと公爵様から仰せつかっております。」
アグネスか、知らんな。
この感じ、僕とはある程度面識があると見える。
「報告ありがとう!魔法の方は一旦大丈夫!!」
「かしこまりました。何かありましたらいつもの所に居ますのでお気軽にお呼びつけください。」
またも壁にあたる。
元々メルドは一年ほど前に魔法の鍛錬をしていたはず。
なのに今改めて魔法の使い方なぞ聞けるはずがない。
これは使えないのがバレて、怪しまれる前に解決せねば。
それにいつもの所ってどこやねん。
あまりにも知っていて当然の態度に、つい関西弁が出る。
僕が悪いのに。
(さて、今回の解決策自体は多分簡単だ)
図書館。
この館を見て回った時に見つけた書物の貯蔵庫。
その時に司書にそれとなく聞いたが、図書館を利用できるのは、当主とその血族、もしくは当主に許可を得た者のみ。
実質の貸切ができるのだ。
(これで初心者用の本を読もうがバレることは無い)
目当ての本が無いという心配はいらないだろう。
初めは誰もが初心者なのだ。置いてあるに決まってる。
目的地も指針も決めたら動くのみ。
ルロリアを連れ添い、図書館に直行する。
(しっかし広い館だなぁ。)
使用人たちや騎士達が使う部屋があるにしても、絶対に使わないであろう空間が何個もあるように感じる。
その部屋たちを掃除するメイドさんたちには頭が上がらないな。
そんなどうでもいい事を考えているとふと視線を感じる。
いや元々視線は感じていた。
気付かないフリをしていただけだ。
「フロリア、この前はいきなり魔法を使っちゃってごめんなさい。庇ってくれて嬉しかった、です。」
立ち止まり、頭を下げる。
謝りたくなかった訳じゃない。
どんな顔をすればいいのかわからなかったのだ。
いきなり魔法をブッパするようなやつがどんな顔して謝ればいいのだ。
決して故意では無いのだが、そんなもの他者から見れば分からない。
「..................」
この数秒の沈黙がキツイ。
正直ルロリアが何を考えているのか分からない。
メルドが築き上げたものが如何程か分からないが、いきなり魔法を使って地面に叩きつける主人などおおよそマトモでは無い。
なのにまだ専属メイドとして今日も付き添ってくらているのだ。
(ルロリアがどんなキャラだったかなんて、そこまで情報がないんだよな。)
「顔をお上げ下さいメルド様。」
静かに、それでいて力強さを孕んだその声に身体を向ける。
「私は怒っています。」
ごもっとも。
あんな気が触れた行動して怒ってないわけが無い。
「もしメルド様が危険に晒された時。私は自分を盾にしてメルド様をお助けする覚悟ができています。しかしご自身で、危険を侵すのは容認出来ません。お身体が快復し、気分が上がっていたのかもしれませんが、次からはお気をつけください。私はメルド様が本当に大切だから心配するのです。」
故意では無い。
しかし心に響くその言葉に、何も言えなくなる。
大人になり、こんな真正面から叱られたことなど記憶にない。
意気揚々と図書館に向かっていた足は、まるで重りがついたかのようにとても鈍重だった。
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