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1-メルドは救われなかった

処女作なので少し手を加えながら頑張って毎日投稿する所存。

 三キャラの中から主人公を選択し物語を進めるロールプレイングゲーム


【トライアングルストーリー】


  独自システムによりシナリオに深みを、ゲーマーにはやり込み要素を与えた超大作。

 21世紀を代表するこのゲームに僕はどっぷりハマっていた。


 大枠のストーリー以外のシナリオはほぼ自身の選択によって結末を変えることができるという分岐ストーリーシステム。主人公の選択、辿るルートによってサブシナリオのキャラをメインシナリオにすら顔を出させることだって可能だ。それがこのゲームが人気作にまで上り詰めた理由。


 これによりサブシナリオの内容変更、或いはNPC自体の消滅を招く自体になることもある。

 このシステムに僕は今、苦戦していた。


「今回はシナリオ消失か」


 サブシナリオ【早世の天才】

 メルド • ダーリッチに関するシナリオ。

 メインストーリーましてや他のサブシナリオにすら名前が連なることのない自立シナリオである。


「これで影響を与えると考えられる選択肢の組み合わせは全部確認した訳だが」


 PCの横に置いてあるメモにチェックを入れる。

 関係性が考えられる全ての選択肢をメモし、しらみ潰しに可能性を消していった。


「うーん...これ以外の選択肢となるとマークしたサブシナリオ以外にも手を出すことになるんだけど...」


 既に数百というルートを辿り。

 それでも顔も声の特徴すら掴めない。

 分かっているのはどのストーリーを辿っても若くして彼は亡くなっているということ。

 人気キャラでもないこのメルドにここまで執着するのには理由がある。


 それは攻略記事にも載っていない、恐らく僕しか知らない彼の生きた爪痕。


 ーーーー

 《プルルン》

 トライアングルストーリー【公式】

 当ゲームにおいてのサブシナリオ【早世の天才】についての謝罪と……

 ーーーー


 深夜3時。通知オンにしていたトライアングルストーリー公式からのSNS通知。


「こんな真夜中になんとタイムリーな」


 しかしその通知が喜ばしいものだったとは言えなかった。

 内容は簡単。【早世の天才】メルド • ダーリッチはストーリー上の関係から死亡状態は不変であるということ。それを遅ばせながら報告することになった経緯。


「…………………」


 なぜ今なのか。無限の可能性を提示され、やり込めば変わる世界線をいくつも見てきた。

 あるルートならそのキャラたちは生きていた。

 他のルートならそのキャラたちは死んでいた。

 死んだ生きただけじゃない。立場だって変わってる時もあった。様々な可能性を見てきた。

 メルドだってそうだと思ってた。


 いや心の奥底では分かっていたのかもしれない。選択肢の組み合わせは膨大にあるとはいえ、数多くいるゲーマーから生存報告が1度も上がっていない事実。これを無い証明にはならないと目を背け続けた。しかし運営が直々に無いと言うのなら無いのだろう。


 このキャラだけ。

 このメルドだけはそうであって欲しくなかった。


 それは多分運営以外なら僕だけが知ってるであろう彼の死に際の功績。

 最終章のボスである魔帝に届く魔法式の足がかり。母親を殺した仇への幼きメルドが残した小さな刃。幼くても、彼は偉大だった。

 現に、その魔法式には僕だけがわかる小さなカラクリがある。

 それだけじゃない。【早世の天才】ストーリーには彼の届いていない想いが。

 彼に届いていない感情が。こもっていた。


「うぐぅ……」


 泣いた。いつか救って魔帝を殺すところを見せたかった。そして彼が喜ぶ姿が見たかった。

 あわよくば街中を歩く君を、何かに心動かされる君を。君のいる未来を、見たかった

 顔も何も知らない。名前だけしか知らない彼に喜んで欲しかった。

 ここまで肩入れしたNPCなど後にも先にもメルドだけだろう。


「今日は、寝よう」


 大人になり涙腺が脆くなったとは言え、大泣きした気恥ずかしさと、これほどまで感情移入していたものが救えないものだと分かってしまった虚しさがぐちゃぐちゃに混ざり合い気持ちが悪い。


 PCを閉じ、ベッドに体を移す。


 深夜に起きていても誰にも怒られない。

 それは小さい頃から変わっていない。

 不慮の事故だったと聞いた。

 小学校に入学した次の日両親は交通事故で亡くしたらしい。記憶も20年も経てば曖昧だ。



 この境遇もまたメルドが感応した要因なのだろうか。















「連れて行って、僕を先のシナリオへ。

紡いで、君のストーリーを。

託す、僕の未来。



名前も知らない君へ」




 聞いた事のない声。

 だけど親しみを込められたようなそんな声。

 誰もいないはずの部屋に声を響かせた主を確認しようとした時。


 僕の意識はプツンと消えた。

面白いと思ってもらえれば幸いです。

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