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青年  作者: すだちポン酢
6/9

好きな人

 1学期の登校最終日、7月24日。

今日は成績表が返された後、終業式がある。

が、そんなことはどうでもいい。

今日の放課後、修学旅行の班のメンバーで遊びに行くことになっている。

そう。

僕はワクワクしているのだ。

友達と遊ぶなんてGW以来だし、浅井くんや三津家くんと遊ぶのは初めてだ。

修学旅行のことを考えると、女子とも仲良くなったほうがいいんだろうな。


 なぜか毎度異様な盛り上がりを見せる成績返却と長ったらしい終業式を終え、一学期は終了した。

「誠志朗、金持ってる?」

三津家くんは早々に僕の席に来た。

「もちろん、貴輝は持ってる?貸さないよ?」

三津家貴輝(みついえたかき)

かっこいい名前だ。

「和輝見てみ。すげぇぞ。」

そう言って三津家は教室のちょうど反対側を指差した。

浅井(あさい)くんは加納(かのう)さんとおしゃべり中だ。

「積極的なのはいいことだ。」

長くなりそうなので校長の話でたまった眠気を発散しようとうずくまる。

「俺にはさ、あれが両片思いに見えるんだが。」

しかし三津家くんがそんな面白いことを言うので眠る必要はなくなる。

確かに、加納さんの表情に嫌悪は全く見られない。

まぁ、17にもなれば感情は隠せて当然か。

でも確かに、

「ありうる。」

三津家くんはいやな笑みを浮かべた。

何を考えてんだか…。

「それで正解だよ。」

後ろから声がした。

沙織(さおり)、浅井のこと好きなんだってさ。」

そこにいたのは同じ班の…、女子だ。名前わからん。

「まじで?」

そう言う三津家くんの顔はどんどんワルになる。

「何考えてんだよ?」

余計なことはしちゃいかんぞ。

「いや、ピュアだな〜って。」

ニヤついてただけかよ。

「ていうか予約何時から?」

女子Aさんは言う。

「12:00じゃないの?」

「まだしてないよ?」

三津家くんと女子Bさんが返す。

「誠志朗やった?」

「加納さんやるって言ってなかった?」

グループチャットではそういう流れだったはず。

「ていうか祭くんと話すの初めてだよね?」

女子Aさんは正面にきて言う。

話題が春の天気くらい変わる。

「そうね。」

名前もわからんくらいだし。

「私も初めて。」

女子Bさんも正面にきた。

顔は2人して綺麗なんだな。

加納さんも可愛かったし、3人ともモテるタイプか。

名前を聞きたい。

「祭くんって木野の方住んでるんだよね?遠くない?」

女子A…なぜ知っている?

「まぁ、2時間くらい。遠いね。」

登下校で寝れば睡眠不足にならないのだから。

「え、じゃあ万座派?」

学校の最寄り駅は万座林(まんざばやし)本汐見(ほんしおみ)

僕は万座林、通称万座派だ。

「うん。」

このクラスの男子はほぼ全員万座派のはず。

女子は知らん。

「私大正神宮で乗り換えてんだ。一緒だね。」

女子Aさんはそう言う。

大正神宮ってことは、

「貴輝と一緒だ。」

名前のとおり、ゴージャスなところに住んでいる。

何回か一緒に帰ったこともあった。

「俺は乗り換えないけどね。蘇我(そが)はどこ乗り換え?」

なるほど女子Aは蘇我さんか。

そう言えばいたな。

蘇我さんは三津家くんに任せた。

残るはBさん。

「私、聖学園最寄り。」

蘇我さんとは違って落ち着いた声でBさんは言った。

聖学園だと大正神宮よりかはこちらより。

Bさんは近所だったのか。

「結構ここから遠いよね。」

聖学園までは大体40分くらいのはず。

学校までは1時間半はかかるはずだ。

「まあね。帰り見かけたら話しかけてもいいかな?」

Bさんはいい人らしい。

名前をすぐに調べなければ。

「もちろん。」


 調べた結果、Bさんは田沼優羽(たぬまゆう)というらしい。ちなみにAさんは蘇我三玲(そがみれい)。三津家くんに聞いた。

田沼さんは男子の派手グループでは加納さんよりも人気だったはずだ。

加納さんが予約を取っていなかったので、適当な昼メシを済ませてボウリングを楽しんだ。

「お疲れ〜。」

「じゃあな。」

…。問題はここからだった。

浅井くんは逆方向、三津家くんと蘇我さんは違う電車。

そして、加納さんと僕と田沼さんで同じ電車。


 「田沼さんは聖学園で、加納さんは?」

僕と田沼さんは次で乗り換えだが。

「私は馬場下原。」

あ〜。もれなく万座派。

「じゃ次で換えるのか。」

…。

何を話そう。

ブーッブーッ。

スマホのバイブが鳴った。

祖母様からだ。

『お盆には家に帰りなさい。』

…。

この人もこの人で色々あったんやろな〜。

『了解』

ただあの家はな〜。

「浅井くん?」

加納さんはそうきいてきた。

そっか、一人でいるわけじゃないんだ。

「違う、婆ちゃん。」

そう答えると加納さんは耳まで赤くして

「そっか。」

と言った。なんだ?

ー沙織、浅井のこと好きなんだってさ。

…。

「祭くん。浅井くんの好きなタイプとか、知らない?」

彼女は思ったよりも踏み込んできた。

どうする?

彼の恋心を暴露するような真似はしたくないし、

彼女の恋路の行く手を阻むようなこともしたくない。

むずいぞ。

浅井の印象を下げない、加納さんのいいところ。

嘘もつきたくはない…。

思い出せ。

男子グループで長々聞かされた彼の好みを…。

「あ〜、どうなんだろう。聞いてないから、わかんねぇや。」

嘘をついた…。

彼は言っていたのだ…。

ー俺の好きなタイプは加納さんみたいな人。


「気になるなら聞いちゃえよ〜。」

横から田沼さんがからかう。

一瞬横目でこちらを見た気がするが、

こちらに気を使ってということなのか。

…。

好きな人、かぁ…。

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