表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青年  作者: すだちポン酢
5/9

アルバイト

 祖母に言われるがまま始めたバイト。

その初日。

「ねぇねぇ、祭くんって彼女とかいるの?」

「好きな女優は?」

「どこ高校?」

「最近の高校生って休日どこ遊びに行くの?」

…。

僕は質問攻めにあっていた。


 定期テストも終わり、夏休みがいよいよ目前となった7月18日。

「よし。じゃあ今日からお願いします。」

店長、平田さんは頭を下げた。

平田さんは北海道の出身で現在35歳。

明るいおじさん、お兄さんか?

「勤務始めはこのタブレットで自分の名前タッチして、挨拶。」

指示されたとおりにタブレットに表示された

『祭 誠志朗』

をタップし挨拶をする。

「おはようございます。」

勤務時間にかかわらず、勤務始めは

『おはようございます。』

らしい。

「おざっ〜す。」

「うぃ〜。」

中から低い男性の声が2つ返ってきた。

フロアには一人女性が立っていたが、

スタッフは僕を含めて5人なのかな。

「こちら今日から勤務の祭くん。高2。」

平田さんが簡単に僕の紹介をする。

「おお〜。はじめまして。」

キッチンの方からこちらを覗いて一人の店員さんは言った。

「彼、キッチンの曽我くん。大学4年。」

平田さんが紹介してくれた。

「お願いします。祭です。」

こちらも挨拶を返す。

「もう一人は寺島くんって言うんだけど冷蔵庫の方でスタンバイ中みたいだから先フロア案内するね。」

そう言うと店長はフロアへ出て、

「こっから右が1から35番で、出入り口の向こう側が36から80番テーブル。向こうのほうがボックス席が多いから複数人のお客さんはあっちに通すように。逆にお一人様は20番までのテーブルに通してね。」

と軽く説明をした。

「さっきのタブレットの隣にテーブル番号貼ってあるから見て覚えといてね。」

と言いながらまた中へ戻った。

「まぁ説明聞くよりもやってみたほうが早いしお客さん来るの待とうか。」

緊張するな〜。

職業体験以来の仕事だ。


 …。

接客業って、何だ…?

このレストランはモバイルオーダーを導入しているから注文を取るという作業は必要ない。

「お待たせいたしました。こちら〇〇でございます。」

かもしくは、

「こちらのお皿お下げいたします。」

しか言わない。

そして客はほぼ無視。

たまに返ってくる「ありがとう」がここまで嬉しいとは。

「じゃあ祭くん、17時半まで休憩ね。」

店長に言われて時計を見るともう16時。

仕事始めが11時だったからもう5時間働いたということか。

「あ、わかりました。」

タブレットで一時退店してクルールームに戻る。


 「あ、お疲れ様です。」

中には一人女の人が座っていた。

「あ、どうも。今日から入った祭です。」

挨拶をした。

これでいいのかは知らんが。

「あ~、どうも、白野しろのです。大学2年。」

白野さんはスマホを置いてこちらを見た。

「祭くんって高校生?」

「あぁ、はい。高2です。」

そう答えると、白野さんは更衣室のほうへ向いて

「同い年来たぞ~。」

と言った。

すると中から

「うぇーい。」

とハスキーボイスの女子の声がした。

「中にいるの同い年の河瀬凪咲かわせなぎさちゃん。」

と白野さんは紹介した。

「河瀬さんていつからバイトしてるんですか?」

ずいぶん白野さんとは親しげだが。

「半年くらい前?」

白野さんはそう更衣室へ聞く。

「10月からだから8か月前。」

中から答えが返ってきた。

「だって。」

「早いっすね。」

「だよね。私も去年はじめたばっかなのに高1からって早すぎだよね。」

「すね。」

なんて会話をしていると更衣室のカーテンが開いた。

中から出てきた河瀬さんは低めの声から想像されるよりも小柄だった。

「どもっす。」

片手をあげて挨拶をくれた。

「ども。」

こちらも挨拶を返すと、白野さんが隣から

「祭くんって下の名前は?」

と聞いてきた。

「誠志朗です。」

と答える。

「え、四男なの?」

白野さんは驚いて聞いてきた。

この名前を言うと大体その質問が返ってくるが、

「一人っ子です。誠の志をもって朗らかで、誠志朗。」

と、いつも答える。

「へぇ、いい名前。私なんてただ穏やか+海要素だからね。」

と河瀬さんは答えた。

「でもいいじゃん。こっちだユメよ?白野ユメってなんだよマジで。」

と白野さんは言う。

ユメさんっていうのか。

「でも漢字は優しい芽が出るじゃん。かわいい。」

と河瀬さんは答える。

確かに、かわいい名前かもしれない。

「誠志朗も5時から?」

白野さんは思いっきり話をそらしてきた。

「いや、半からっす。」

二人は17時からなのか。

「そっか~。うちら5時組はまともだけど6時組やばいやつらばっかだから気を付けてね。」

白野さんはそう言った。

何それ、怖いんですけど。


 18時。彼女ら二人の言っていた意味が分かった。

「ねぇねぇ、祭くんって彼女とかいるの?」

「好きな女優は?」

「どこ高校?」

「最近の高校生って休日どこ遊びに行くの?」

18時になって入ってきた男性陣は僕を見つけるや否や質問攻めをしてきた。

別にやばいやつだとは思っていないが…。

距離の詰め方は、やばい。

「え~、彼女はいないっす。好きな女優?は~、東泉夏葵で、え~、何でしたっけ。」

囲い込まれているので仕事にも出れない。

質問多すぎて覚えてらんねぇ。

「ほ~い、誠志朗困ってるぞ~。」

白野さんが男性陣をいさめてくれて、どうにか嵐は去った。


 21時。

「高校生組はお疲れさま~。」

店長に言われて、退勤。

1日9時間半労働はきついな。

契約更新までは我慢するか。

「お疲れぃ。」

クルールームで河瀬さんが言ってくれた。

「どもっす。」

席に着くと確かにどっと疲れが来る。

「誠志朗、インポロやってる?」

河瀬さんはロッカーをごそごそしながら聞いてきた。

インポログラフねぇ。

「一応。」

「よし、交換な。」

拒否権なしかぁ。

ロッカーのカギを開けスマホを取り出す。

インポロを開きプロフィールQRを表示する。

「でも僕ぜんぜんあげないよ?」

「わたしがあげっから見て。いいねもしろよ。」

「わかりました。」

河瀬さんは笑って更衣室へ入っていった。

…。緊張していたバイト初日だが、何とかなるかもしれないな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ