祖母様の言う通り
「ただいま〜。」
学校が終わり、帰宅する。
時刻は18時15分。
「お帰りなさい。夕飯は作ってあるからそれ食べなさい。」
祖母の出迎え。
これは2パターン存在していて、
パターン1:「夕飯は好きなもん作りなさい。」
パターン2:「夕飯は作ってあるからそれ食べなさい。」
今日はパターン2だったな。
「うぇ〜い。」
靴を脱ぎながら言う。
「そうだ誠志朗。」
いつもならこれで会話は終わりだったが、珍しく続けるらしい。
「ん?」
振り向きながら聞き返すと、
「あんた、バイトしなさい。」
と祖母は言った。
「え、やだよ。」
突然なんだ。
日々はこんだけ出来上がっているのに。
「日曜は暇でしょう。そこで社会経験を積みな。」
この婆さんは俺をどうしたいんだ…。
「いやいいけどさ、ば先は?家のことはどうすんの?」
まぁ、日曜日は基本暇ですよ。ボッチですから。
「知らないよ。自分で考えな。」
「えぇ〜、厳しい〜。」
祖母は聞こえていないふりを決め込んで自室へ入って行った。
バイトねぇ…。
祖母の言った通りにして後悔したことはそんなに無い。
料理は早いうちからしとけとか、
お小遣いの使い方は考えろとか、
サブスクもお小遣いのうちから払わないといけない。
月3000円のお小遣いのうち1000円は必ずそれで消える。
将来の貯蓄もそこから捻出しろという命令のまま月500円は貯蓄に回している。
1500円で1ヶ月。
ボウリングに行くにも2ヶ月分くらいは貯めなくちゃいけない。
高校生にそれではあまりに足らない。
夕飯を食べながら考える。
バイトかぁ…。
『お電話ありがとうございます。イタリアンレストランフェリシタフォレストウォーク木野店でございます。』
「あ、お忙しい所失礼します。そちらの店舗でアルバイトの募集をしていると聞きまして、高校生なんですけど。」
あ〜あ…。
祖母の言うことにはなぜか反抗する気が起きない。
とりあえず近くのイタリアンレストランに電話をかけてみたが…。
『アルバイト希望ですね、少々お待ちください。』
なんやかんやで、面接の日時を決めてしまった。
学校終わりのため制服だが、バイトの面接のために制服を着てきたなんて思われないよな。
「いらっしゃいませ。」
店に入ると店員さんがきた。
席に案内する係の人に言えばいいのか?
「あ、アルバイトの面接に来た祭です。」
すると店員さんはあぁ。と言って僕をクルールームへ通してくれた。
そのまま席に着くと、
「どうぞ、座ってください。」
あれ?店長さんだったのか。
「失礼します。」
バイトの面接ってなに聞かれるんだろう。
対策したほうが良かったかな。
「それ制服?かっこいいね。」
店長は意外と気さくな人らしい。
「あぁ、ありがとうございます。」
ちょっと待ってねぇ〜。と言いながら、店長は書類をごそごそしている。
「とりあえず、これ書いてね。」
と渡されたのは紙とペン。
どうやら勤務できる曜日と時間を書くらしい。
この店舗はショッピングモールの中にある店舗で営業時間もショッピングモールと同じ。
日曜は朝から入るか。
土曜はなぁ、学校あるし、18時からとかでいいか。
「書けました。」
と言い、店長に紙を渡す。
「おお、日曜は朝から行ける?ありがたいねぇ。」
うんうん。と店長は紙をおいてこちらに向き直った。
「まぁ、とりあえずこっからは面接に入るんだけど、まず何でバイトをしようと思ったのか教えてもらってもいい?」
バイトの面接もこんな感じか。
「はい。まぁ、端的に言ってしまえばお金が欲しかったから、ですね。」
「あはは、そうだよね。じゃあなんでうちの店に来てくれたの?」
正直すぎたかと不安になったが、店長はにこやかに次の質問へ移った。
「そうですね。単純にイタリアン食べるのが好きっていうのと、家から近かったからですね。」
「なるほどお。趣味は何かある?」
「趣味というか日課的に料理はしています。」
「へぇすごい。得意料理は?」
困ったなぁ〜、得意料理とか特に考えてなかった。昨日何食ったっけ…。
「そうですね…。生姜焼き、ですね。」
ラッキー、嘘でもないからセーフ。
「いいねぇ。ちょっと踏み込んで、なんでお金欲しいの?料理だったらあんまりお金使わないと思うんだけど。」
確かになぁ。祖母が変わってるからなぁ〜。
「僕の祖母がですね、結構厳しい人で、自分が将来使うお金は自分で稼げっていうスタイルでして。」
「へぇ〜。えぇと、もしかしておばあさんと2人暮らし?」
そこ触れるか…。
「はい。色々とありまして。」
本当はもう少しゴタゴタしてるけど。
「あぁ、ごめんね。」
「いえ、全然。」
こういう話は友人にはできない。
「よし、ありがとう。合否はまたおいおい連絡するね。って言っても、もうほぼ合格だから、そのつもりでよろしくね。」
ほぼ?
「あぁ、はい。ありがとうございます。」
こっから先の態度も見るってことか…?
高校入試の時の面接ばりにキビキビ動いて退室した。
『あ、祭くん?合格です。』
その連絡は翌日の昼に来た。
…。早いな。




