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青年  作者: すだちポン酢
3/9

幸運少年

 夏休みも近づいてきた6月30日。

水曜日の6時間目はロングホームルーム。

「えぇ〜、みんなもご存知かとは思いますが、10月に修学旅行があります。今日はとりあえずその班と班長だけ決めちゃいま〜す。」

丸山先生は教卓に両手を乗せて言った。

そうか。

夏休みが明けるとすぐに文化祭、体育祭、中間試験、修学旅行がやってくる。

二学期は行事が盛り沢山で個人的にも楽しみではあったが…。

班行動かぁ…。

祭誠志朗(まつりせいしろう)はでかかったため息をのみ込む。

まぁ、誰からも声がかけられなければ、僕の立ち位置はそういうことだったというだけだろう。


 「そんじゃ男子3人グループ5つ、女子4人グループ5つ作れ〜。」

そんな不安をよそに先生の指示でグループ分けは始まった。

あ〜。誰からも声かけられなかったらどうなる?

一人でまわる?

京都と奈良と大阪を?

みんな大好きユニバーサルランドを?

まぁ…いいや…。

「誠志朗。誰かと組んだ?」

動くことを諦めたところ、背中側から声がかかった。

「まだだけど。」

そう返事すると、

「んじゃ、俺らと組もうぜ。」

彼、浅井和輝(あさいかずき)は言った。


 「俺ら」というのは浅井くんと三津家(みついえ)くんだった。

二人してこのクラスの派手グループの中心。

彼らの会話は聞くだけでもう面白い。

どうやったらあんだけ面白くなれるのか、僕には全くわからない。

とにかくすごい2人と組めてしまった。

「女子、誰来んだろうな。」

浅井くんはそっちが気になるらしい。

「いやまぁ、誰でもよくね?」

三津家くんは気にならないタイプなのか。

「誠志朗は誰来たら嬉しい?」

思わぬふりを食らった。

えぇと、女子、女子…。

「あぁ、まだ話したことないから誰にでも一緒だわ。」

ごめんなさい。半分くらい顔と名前が一致しません…。

「確かに、お前自分からはいかないもんな〜。」

浅井くんは笑いながら言う。

「もしかして名前も覚えてない?」

三津家くんも笑っている。

「いや、流石に覚えてる。」

半分くらいはね…。

でも非常識とか思われたくはないし。

「へぇ、じゃああれ誰かわかる?」

三津家くんは一人の女子を指さす。

あれか…。あれはたしか…。

カ行の人、ええと〜。

「加藤さんだろ?」

加納(かのう)さんな?」

三津家くんは呆れ笑いを含んで言う。

間違えたか。

「お〜い、やめろよ。」

浅井くんが後ろから三津家くんを叩く。

「こいつ加納のこと気になってんの。」

三津家くんは浅井くんを指差して言う。

「だって可愛いじゃん!わかるよな?誠志朗。」

浅井くんに言われてもう一度加納さんの顔を見る。

確かに。

「確かに、可愛いね。」

「だろお?」

浅井くんは僕を指さして言う。

僕はやっぱわかってるらしい。

「お前加納の顔も覚えてなかったのかよ。」

三津家くんは耳元で聞いてくる。

「まぁ、席遠かったししゃあない。」


 「決まったら一旦席つけ。グループでまとまってな。」

丸山先生の号令で僕らは席に着く。

声のでかさだけでゴリ押すスタイル変えたほうがいいと思うけど。

「男子グループはこのくじ、女子グループはこのくじひいてな。同じ数字になったグループで一班。わかった?」

うぃ〜。とそこここから声が上がる。

原始的だなぁ。

「あれ、帆波ちゃんの手作りかな?」

浅井くんは身を乗り出してそんな事を聞く。

「たぶんね。」

あの人あれでいて丁寧だからな。

「帆波先生だろ、ちゃん付けやばいって。」

三津家くんは冷静なツッコミを入れる。

ツッコミというより、マジな指摘っぽいか。

「誠志朗くじ行ってきて。」

浅井くんは僕をパシる気みたいだけど

「最後までのこっときゃいいじゃん。」

余り物には福がある。

僕と言うより彼のための選択だが、

「じゃ俺行くぞ。」

浅井くんはとっととくじを引きに行ってしまった。


しかし…。

「よ〜し。修学旅行はその班で行動な。」

すごい幸運なんだな、彼は。

「よろしく〜。」

右を見ると、口元がニヤけた彼がいる。

加納さんと、同じグループだ。

三津家くんと目が合った。

こいつすごいよな。

彼の目はそう言っているようだった。

ええ本当に。

楽しい修学旅行になりそうだ。

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