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青年  作者: すだちポン酢
2/9

隠すもの

 学校というのは、実に不思議だ。

何百、何千という人間が一処にまとまっているのに、

完成するグループは仕切られた数十人のうち、さらに小さく仕切られたものなのだから。


 僕はクラスの中で、最も絶妙な立ち位置にいる。

派手なグループとも話すし、あまり目立たないところとも話す。

しかし、それだけである。

家が遠いこともあって遊びに行くなんてことは長期休み中しかできないし、祖母はお小遣いをあまりくれないためご飯にも月に一度行けるかどうか。

そして何より、僕が彼らと対等でいられる気がしないのだ。


 今は机に座ってただぼーっとしているフリをしてクラスの中を見回している。

今度の週末どこどこ行こうとか、今日の放課後ボウリング行こうとか、羨ましい。

話すだけで、誰とも親しくはない。

そんな自分の"ポジション"というのがどうにも気になる。

実は一番浮いているのは僕なのか?


 「誠志朗。」

そんな事を考えていると、派手なグループの方から呼ばれた。

あぁ良かった。自分は排除されていないんだ。

そんなこと、考えるのは僕くらいだ。


 結局僕はただ楽器ができるかどうか聞かれただけだった。

ギターが弾けるので中学の時にバントをした話をするとかなりがっつかれた。

というのも、そのグループのうちのひとりが今年の文化祭でバンドをやりたいらしい。

残念だが、もう僕は楽器は手放してしまった。

メンバーにはなれないと言えば、その話題はそこまで。

また次の話題へと移り変わっていった。

「お前の母さんの名前何?」

なんてどうでもいいことを話しながらキャーキャー騒ぐ。

でも、それが楽しいということは理解できる。

彼らから見て僕がどういう存在なのか。

それを僕はまだ理解していない。

「誠志朗の母さんは?」

皆の話を聞きながら、また変なことを考えていた。

母さんの名前…ね。

「詩織。」

まぁ、母さんなんて今は関係ない。

「へぇ、祭しおり?しおりって本のやつ?」

…。祭ではないけれども。

「違う違う。ポエムの詩に織姫の織。」

わかりやすく例えたつもりだが、

「あぁ。」

と流された。

こういう、グループの中でのバランスみたいなものは僕にはわからない。

まぁ、それでも話題を振ってくれる彼らに感謝しよう。


 学校生活は本当に規則正しく過ぎていく。

これがなくなると生活リズムがボロボロになってしまいそうで怖い。

15時15分。

6時間目が終わり帰りのホームルームが始まる。

明日の時間割の確認と、先生からの連絡。

「起立。気をつけ、礼。」

号令係の挨拶で学校は終わる。

が、実はまだ続きがある。

椅子を机のうえに上げて後ろに一斉に下げる。

掃除の準備だ。

僕は今日は当番ではないのでこれでやっと終わり。


 学校が終っても、派手なグループは駄弁り続け、地味なグループはさっさと教室をあとにする。

僕は先生からの呼び出しを受けていたため、時間になるまで待機する。

が、ぼーっとしていると僕は見つかりやすいらしい。

派手なグループのかくれんぼに参加することになった。


 意外と白熱したかくれんぼによって約束の16時は少し回ってしまったが、楽しかったからいい。

「丸山先生。」

僕を呼び出した担任に声をかける。

「誠志朗。ちょっとこい。」

先生は僕を手招きした。

従って先生のそばへ行く。

丸山帆波。

彼女はまだ30代に入らないくらいの若い女性で、

明るく親しみやすい。

それ故か生徒からの人気は高い。

「誠志朗。三者面談はどうする?」

だが、そんな先生の声の調子も流石に暗い。

そこまで重く捉えなくてもいいのになぁ。

「二者面談にしてもらっていいすか。」

去年からずっとそうだ。

祖母からも、

「学校のことは好きに決めな。将来のことも、自分でね。」

と言われている。

まぁ、受験せずともどうにでもできてしまうからな。

「わかった。」

それだけ。と言って丸山先生は僕を追っ払った。

「うぃ。」

僕もみんなを待たせているので急いで下がる。


 校門の前にかくれんぼの皆は待っていた。

「何の話?」

その質問は当然だよな。

「いや、進路?みたいな。」

けれど、僕はその質問に答えるきにはなれない。

答えようと思うと、隠していたすべてを大っぴらにすることになる。

それが嫌だから、僕はどのグループにも入らなかったんだよ。

「へぇ、誠志朗推薦でも狙ってんの?」

「頭いいしいけるだろ。」

このグループの皆は多分誰よりも優しい。

察しがよい。いろんな人と関わったから、正解の関わり方を知っているのだ。

「まぁ、そうね。」

君たちと対等にかかわるには、僕では少し、隠すものが大きい気がする。

ごめんね。

声にならない声を出して、僕は家路についた。

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