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七十二話 ──夜の桜、静かな期待

夜の伏見区は、街灯に映る桜の影が静かに揺れる時間帯。福田朋広は団地の周囲をゆっくり歩き、夜風に混ざる桜の香りを胸に吸い込む。手足は自由に動かんが、胸の奥には微かな軽さと、日常の中で積み重なった善意の温かみが感じられる。今日は少し身体の調子が良かったような気がする――そんな感覚が、ゆっくり歩く足取りに反映される。


桜並木の奥で桐生さくらの影が見える。風に揺れる花びらがチョーカーや髪飾りに光を反射し、淡く輝く。視線は交わさないが、その微かな光の揺れが朋広の胸の奥に小さな違和感と高揚を生む。読者には「体に変化が蓄積されつつある」と匂わせる瞬間だ。


天音や美琴も歩いており、ブレスレットやペンダントが夜の光を受けて微かに揺れる。朋広は体に軽さや柔らかさを感じ、日常の中で少しずつ蓄積される力が微妙に作用しているのを感じる。まだ変身は意識できず、あくまで「今日は身体が少し楽やったな」と感じる程度だ。


高瀬みのりや水科澄も遠くで姿を見せる。風に舞う桜の花びらやアクセサリーの微かな光が街全体の空気を揺らす。原付やスマホもわずかに光を反応させ、日常の小さな善意や微かな想いが少しずつ力として蓄積されていることを匂わせる。


朋広は立ち止まり、揺れる桜の花びらと光を見上げる。胸の奥で軽さや高揚を感じ、日常の善意や微かな想いが確実に積み重なっていることを体感する。まだ20才姿になったことは自覚できんが、今日一日の体調の良さや歩きやすさに、微かな変化の兆しが滲んでいる。


「…今日は、なんか身体の調子ええ気がするな」

独り言をつぶやき、朋広はゆっくり歩き出す。夜の桜と微かな光の反応が、日常の善意や想いの積み重ねを示し、やがて訪れる変化への布石となっていた。


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