第六話 ――初めての変身の兆し
午前、街の外れ。
朋広はいつものように59才姿で原付に乗り、困っている人々を助けて回る。
> 「おっと、こら大変やな……」
小さな子供が川に落ちかけた玩具を拾おうとした瞬間、自然に手が伸びる。
咄嗟に助け、胸の蕾がかすかに桜色に揺れる。
その瞬間、スマホに通知。
> 「5km先、救助必要。変身を推奨、桜原付召喚せよ」
朋広は天然ボケで
> 「ほな原付出すんか? おおきにな、桜号!」
とノリで返す。
桜原付が光を帯び、ほんの一瞬だけ鮮やかな桜色の光が周囲に広がる。
読者には「何かが起きる」と示されるが、朋広本人は何も意識していない。
初めて体感する変化――手や足の動きがわずかに軽く、普段より俊敏に動ける感覚。
しかし、変身していない59才姿の意識と見た目はそのまま。
> 「……今日は体調ええんかな?」
街で小さなトラブルを助ける朋広を見て、人々は自然に感謝の表情。
その微かな好意や安堵が、桜の蕾を少しずつ開かせる伏線になる。
夕方、帰路の街灯の下。
桜原付の光が淡く揺れ、胸の蕾も少し膨らむ。
誰も異変には気づかないが、読者には「初めての力が少しずつ反応している」と伝わる。




