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四十六話 ──夜明け前の桜色の誓い

まだ夜明け前の空は、淡い紺色に包まれとった。福田朋広は団地の屋上に立ち、街の灯りと濡れたアスファルトを見下ろす。手足は自由に動かんけど、心はほんのりと軽かった。


「朝焼け前の空も、悪ないなぁ…」

口に出して独り言ちると、原付のキーが微かに桜色に光った。スマホも同じく、ほんのりと光を帯びる。本人は気づかんが、善意と偶然の出会いでパワーが少しずつ蓄積されとる証拠や。


屋上の端で、四十四話・四十五話で見かけた少女が立っていた。夜の影から朝の光へと移る微妙な時間帯で、彼女の輪郭が淡く光る。互いに目が合うけれど、言葉は交わさず、ただ見つめ合うだけ。


「…約束やな。気づく日が、きっと来る」

朋広は小さく呟いた。心の奥で、善意の力が桜色の光に混ざって膨らんでいくような感覚を覚える。


少女はそっと笑みを浮かべ、桜の花びらを手に取った。その指先が光るのを、屋上からぼんやりと感じる。何も言わんでも、気持ちは届いている――読者にだけ、その瞬間、監視者の視線が二人の間を見守っていることがほのめかされる。


風が舞い、桜の花びらが夜明け前の空に揺れる。その光景が、二人の心に静かに、しかし確実に橋を架ける。まだ言葉にはできんが、この夜明け前の時間が、未来の何かを告げているようやった。



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