三十四話 ──雨上がりの公園
京都市伏見区、雨が上がったばかりの公園。水たまりに映る街灯の残光が、街の色を柔らかく映す。
福田朋広は杖を使わず、ゆっくりとベンチまで歩み寄る。
「……おや、ここは久しぶりやな」
空気には雨の匂いと土の香りが混ざる。
ベンチの近くには、**桔梗**が優雅に立っていた。
「福田さん、こんな時間にお出かけとは珍しいですわね」
落ち着いた声、洗練された仕草。
朋広は自然に微笑み返す。
「いや、散歩しとるだけや。雨上がりやしな」
その横で、黒瀬あまねが小さな水たまりに目を落としながら、占い用の水晶ブレスレットを手にしている。
「……福田さん、今日は運が良さそうですよ」
軽い冗談のように言うが、微かな光が水晶から漂う。
読者だけが、核の波動がほんの一瞬動くことを認識できる。
朋広本人は何も気づかず、ただ占い師らしい言葉として受け流す。
遠くの滑り台には、まだ小雨が残る中で東雲ましろがスマホを手にしている。
彼女のマイク型アクセが微かに揺れる。
「……福田はん、遊びに来てるん?」
にこやかに声をかけるが、朋広はそれを自然な日常として受け止めるだけ。
公園の風景、雨上がりの水の反射、ベンチに座る朋広の後ろ姿――
読者だけが、ここで起きている微かな核のやり取りや、未来への伏線を静かに感じ取れる。
変身や特別な力はまだ発動していないが、日常の中で積み重なる善意が、物語の核を着実に育てていく。




