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三十二話 ──雨上がりの散歩道
午前十時、京都市伏見区の小道には、雨の余韻がまだ残る。
福田朋広は原付を停め、ゆっくりと歩きながら街の景色を眺める。
手足の鈍さはあるが、自然に歩くことができ、街の匂いに心が安らぐ。
角を曲がると、朝霧こはるが通信制高校の制服姿で、荷物を抱えて立ち止まっていた。
「お、おはようございます……」
雨に濡れた髪が顔にかかる。朋広は咄嗟に傘を差し出す。
「せやな、濡れたらあかんわ」
自然な優しさに、こはるは少しだけ笑みを浮かべ、歩き出す。
その背後で、原付やスマホの桜模様が微かに光る。
朋広には気づかれず、読者だけがその光の意味を匂わせて理解できる。
監視者は静かに影から見守りつつ、核の分配が正しく行われていることを確認する。
さらに先に進むと、葵月すみれがピアノの練習帰りに通りかかる。
「うわっ、危な……」
朋広は無意識に手を差し伸べ、すみれの転倒を防ぐ。
「おお、大丈夫か?」
すみれは小さく頭を下げ、安心した表情を見せる。
自然に人助けをする朋広の姿に、核が微かに反応し、世界の善意の輪が広がる。
まだ変身はしていないが、パワー蓄積の伏線は静かに進行している。




