表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/472

二十七話 ──雨上がりの小径

午後の日差しが街を柔らかく照らす。

福田朋広は、団地前の小径を原付でゆっくり走っていた。

まだ体の動きは完全ではないが、自然と人助けの心が働く。


小径の角で、荷物を抱えた女性が自転車と絡まりそうになり、倒れそうになる。

「おおっと!」

朋広はとっさに手を差し伸べ、女性を支える。

「……ありがとうございます」

礼を言う女性の瞳に、一瞬だけ昨日の夜の光景を思わせる光が宿る。


その横で、高瀬みのりが傘を片手に見守る。

「福田はん、怪我はしてへん?」

「うん、大丈夫や」

短いやり取りだが、自然な温かさが交わる。


遠く、街灯の影や屋根の上、通りの端には微かなシルエットがちらり。

見守る存在は、今日も静かに息を潜めている。

その視線は、まだ気づかぬ朋広に核の片割れを与えようとしている。


朋広の原付のライトやスマホにも、昨日の夜の余韻のような淡い桜模様が揺れる。

本人にはただの光の反射のようにしか見えない。


通りを渡る子供たちに声をかける。

「気ぃつけや、滑るで!」

子供たちは笑顔で手を振り、雨上がりの小径を無事に渡る。


こうして、街の中で積み重なる小さな善意は、誰も気づかぬうちに世界を少しずつ温めていく。

微かな桜模様と、見守るシルエット。

まだ誰も、その力の本質には気づかない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ