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二百十五話 — 団地・深夜の微光
夜の団地。
廊下には風が通り抜け、街灯の光が床に細長く伸びる。
静かな夜に、朋広の部屋だけが柔らかい灯りを放っていた。
朋広は布団を敷き、ノートを開いて今日の文章をまとめる。
「さて、今日も書き終わったか」
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廊下の向こうから影がすり抜ける。
朝霧こはる が帰宅途中で、リュックの桜チャームが微かに光る。
こはるは装具の反応であることを理解している。
朋広は気づかず、
「……また揺れとるんか。風もないのに」
と独り言で処理。
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階段の踊り場には別の影。
白妙こはく が立ち止まり、ブレスレットの光の揺れを確認する。
こはくも装具の反応を察している。
朋広は「おいおい、誰か電池交換忘れたんか」と軽く笑う。
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ベランダの外、夜空と街灯の間で、微かに桜の粒子が舞う。
朋広は見えず、
「……なんや、風でもないのに舞っとるな」と呟く。
舞う桜は彼の日常行動や人助けに応じた装具の反応であり、
階下や窓際では静かに波紋が広がっていた。
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布団に潜り、残る光をぼんやり眺めながら
「今日も一日、まあまあやったか」と独り言。
夜は更け、静かに桜核が満開に向けて蓄えられていった。




