二百十話 — 月待庵・深夜のさざ波
夜の《月待庵》。
閉店間際、ランプの光がテーブルを柔らかく包む。
朋広はいつもの隅の席に座り、
ノートを広げて文章をまとめる。
「さて……今日もどんな話にしよか」
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カウンターでは 天音ルカ がグラスを磨く。
胸元のタイバーが微かに光り、揺れた。
ルカはその反応を理解して、静かに見守る。
朋広は気づかず、
「なんや、この光、グラスのせいやろか?」
と独り言で処理する。
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奥のテーブルでは 伏見美琴 が資料を整理している。
和服の帯飾りが柔らかく光り、反応を察した美琴は軽く頷く。
朋広は視線を向けず、
「おい、帯まで光るんか。新しい照明やろか」と呟く。
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入り口付近には 朝霧こはる が友人と話す。
スマホケースの桜チャームがわずかに脈打つ。
こはるは装具の反応を理解している。
朋広は「また揺れとるんか? ほんま夜の花粉か?」と軽く笑う。
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奥の薄暗い席、星野こよみ の星型ピアスが、ページをめくるたび淡く光る。
こよみも反応を察し、静かに作業を続ける。
朋広は気づかず、
「おいおい、夜空の星も便乗して光ってるんか?」
と独り言。
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店内に漂う光は、まるでさざ波のように、
朋広の存在と行動に応じて静かに揺れていた。
階下や窓際では、装具が静かに桜核を蓄え、
満開に向けて少しずつ波紋を広げていく。




