二百八話 — 図書館・夜の残照と微かな光
閉館間際の図書館。
創作ラウンジには、朋広と数名の利用者だけが残っていた。
朋広はノートを開き、静かに文章をまとめる。
周囲には薄暗い照明と、ページをめくる微かな音だけが響く。
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隣の席には 如月ほのか。
眼鏡越しに資料を読みながら、髪留めの桜装飾が微かに光る。
ほのかはその光が装具の反応だと気づき、軽く微笑む。
朋広は気づかず、
「……なんや、光っとるな。新種の花粉か?」
と独り言で処理する。
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奥のテーブルには 白鳥つむぎ。
ヘッドホン型のアクセサリーが微かに揺れ、朋広のページめくりに合わせて光を放つ。
つむぎも光の意味を理解しているが、何も言わず静かに作業を続ける。
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窓際の席には 星野こよみ。
星型ピアスが、ページをめくる動きに反応して淡く脈打つ。
こよみも反応を察している。
朋広は気にせず、
「おい、夜空の星も反応してるんか?」
と冗談交じりに呟く。
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ラウンジの隅には、名前も装具も明かされない影。
光はわずかに揺れ、朋広がペンを置くと微かに強まる。
誰の装具か、桜か冥かも不明。
読者は、静かに揺れる光の波紋を追う。
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閉館アナウンスが流れ、利用者たちは退室。
朋広はノートを閉じ、
「さて、今日も終わりやな」と呟く。
階下や窓際の装具は、静かに桜核を蓄え、
満開に向けて少しずつ波紋を広げていった。




