幽桜ルート 第8章 第1話「桜色の共鳴」
夜明け前の伏見、桜の花びらが朝霧に溶け込むように街を染める。
20歳姿の朋広は、桜満開装具の微細な振動を手のひらで感じながら、深く呼吸する。
昨夜の戦いで得た覚醒の余韻が、街全体に優しい桜色の光として残っていた。
「朋広さん……今日も一緒にいてくれますか?」
さくらが静かに差し出す手に、朋広は自然な笑顔で応える。
「せやな、さくら。ずっと一緒や」
街を歩くと、ヒロインたちの装具が桜色に微かに光り、彼女たちの想いが桜満開装具に共鳴する。
天音の癒し、伏見美琴の静けさ、如月ほのかの知識、雛菊ゆらの伝統、朝霧みくの温もり、九条つばめの自由――
すべての波長が街全体で重なり合い、微かな光の渦となる。
「ワシらの想いが、装具を通して街に……」
朋広の言葉にさくらは微笑む。ペンダントの桜色は濃く、光の旋律はより力強くなっていた。
突然、空の彼方で微細な振動が走る。黒紫影ではなく、未知の力の気配――
「これは……次の段階への兆しかもしれん」
桜満開装具がさらに輝き、ヒロインたちの想いを吸収して潜在力を強化する。
街角の公園では、子供たちが桜の花びらの中で遊んでいる。
「みんなが笑ってる……これが一番の宝物やな」
朋広は自然と手を広げ、ヒロインたちと手を重ねる。
桜色の光が街全体に波紋のように広がり、幽桜ルートの最高潮の平穏と絆の瞬間が生まれる。
「これで、街も、みんなの想いも守れる……!」
さくらが目を輝かせ、他のヒロインたちも微笑む。桜満開装具の光は渦を描き、夜明け前の伏見を優しい桜色で包んだ。
桜色の共鳴が、幽桜ルートのクライマックスを告げ、ヒロインたちとの絆はさらに深く確かなものとなった。




