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百八十九話 — 団地10階・深夜の踊り場 —

深夜、団地10階の踊り場は静まり返っていた。

朋広は郵便物を片手に、自室へ向かう。


「さて…今日も終わりやな」


踊り場の角で、かすかな光が揺れた。

桐生さくらの首元の桜装飾が淡桜色で、小さく弾む。


朋広が落ちていた封筒を拾って渡すと、光はわずかに跳ねた。

さくらはうなずき、静かに奥の廊下へ歩いていく。



踊り場の反対側では、花房るりが書類を整理している。

扇子ストラップが白桃色に揺れ、朋広が掲示板を整えると光が小さく弾む。


「落とさんようにな」


るりはうなずき、書類に視線を戻す。

光は揺れ続ける。



奥の角では、雛菊ゆらが指輪を握りしめ立つ。

薄紅色の桜が波打つように光った。


朋広が階段の扉を閉めると、光が小さく揺れ、廊下全体に微かに広がる。



三色の桜の光——淡桜、白桃、薄紅——が踊り場に漂い、

中心に沿って静かに揺れ続ける。


朋広は手すりを握り、独り言をつぶやく。


「……なんや、身体が軽い気ぃするなぁ」


誰も気づかない。

ただ桜の光と揺らぎだけが、深夜の廊下に静かに残った。


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