表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

175/472

百七十五話 — 団地10階・夜の階段室 —

深夜の団地10階、階段室は静けさに包まれていた。

朋広は郵便物を片手に、自室へ向かう。


「さて…今日ももう終わりやな」


踊り場の角で、かすかに光が揺れた。

桐生さくらの首元の桜装飾が淡桜色で、小さく弾む。


朋広が落ちていた封筒を拾い手渡すと、光がわずかに跳ねた。

さくらはうなずき、静かに奥の廊下へ歩いていく。



踊り場の反対側では、花房るりが本を抱えて立ち止まる。

扇子ストラップが白桃色に揺れ、朋広が掲示板を整えると光が小さく弾んだ。


「落とさんようにな」


るりは小さくうなずき、また書類に視線を戻す。

光は揺れ続ける。



さらに奥では、雛菊ゆらが指輪を握りしめ立つ。

薄紅色の桜が波打つように光る。


朋広が階段の扉を閉めると、光が小さく揺れ、廊下全体に微かに広がった。



三色の桜の光——淡桜、白桃、薄紅——が階段室に漂い、

中心に沿って静かに揺れ続ける。


朋広は手すりを握り、独り言をつぶやく。


「……なんや、身体が軽い気ぃするなぁ」


誰も気づかない。

ただ桜の光と揺らぎだけが、深夜の階段室に静かに残った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ