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百六十六話 — 月待庵・深夜の書き物 —

深夜、月待庵の灯りは暖かく、窓の外は静まり返っていた。

朋広はいつもの席に座り、ノートPCを広げて執筆を始める。


「さて…今日はどこまで書こか」


背後でわずかな光の揺れ。

桐生さくらの首元の桜装飾が、淡桜色で小さく弾んだ。


朋広が椅子を少し引いただけで、装飾の光がふわりと揺れる。



窓際の席では、朝霧こはるが資料を広げている。

スマホチャームの桜が薄桃色に光り、指先で少し揺れる。


朋広が資料を手渡すと、チャームの光が小さく跳ねた。

こはるは無言で資料に視線を戻す。



奥のカウンターには鴉谷りつがカップを手に座る。

首元のピック型ペンダントが濃桃桜色に光り、微かに脈打つ。


朋広が椅子を戻すと、ペンダントの光が小さく弾んだまま揺れる。



店内に漂う三色の桜の光は、淡桜、薄桃、濃桃桜。

揺れはわずかに重なり合い、空気全体に静かに広がる。


朋広は手元の文字に目を落とし、つぶやいた。


「……なんや今日は、身体が軽い気ぃするなぁ」


誰も気づかない。

ただ桜の光と揺らぎだけが、深夜の店内に静かに残った。



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