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百五十三話 団地の廊下、午後の光
午後の団地廊下。
朋広は自室に向かってゆっくり歩いていた。
角で荷物を抱える朝霧みくがつまずきそうになる。
朋広が自然に手を差し伸べると――
桜核が反応し、短時間20才姿が発動。
手足が滑らかに動き、荷物を支えて転倒を防ぐことができた。
体感の軽さを感じながら、「助かったな……」と呟く。
階段側では、九条つばめが資料を整理している。
冥の気配が微かに漂い、空間の一角に暗い揺らぎを作る。
廊下奥では、朝霧こはるが郵便物を整えていた。
桜舞いがわずかに反応し、光が静かに揺れる。
団地の廊下は桜舞いと短時間20才姿の体感、冥の揺らぎで満たされ、午後の静かなひとときが柔らかく流れていた。




