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第十五話 ─雨上がりの微光─

朝の雨がすっかり上がり、団地の周囲には春の匂いが漂う。福田朋広はベランダから街を眺め、ぼんやりと深呼吸した。


「……今日はええ天気やな」

独り言のように呟き、ポケットのスマホを確認する。通知は何もない。だが、遠くの交差点で子どもが遊ぶ姿を見つけると、自然と歩みを進める。


「おっと、気をつけや」

転びかけた少年の手をすっと取り、立ち上がらせる。

「ありがとう、おじさん!」

「せやな、気ぃつけや」

短いやり取りだが、読者には微かに光が揺れる描写として映る。主人公は気づかない。


そこへ、声をかけてきたのは近所のコンビニ店員、高瀬みのり。

「福田はん、今日も元気そうやな」

「せやな、まあぼちぼちや」

何気ない会話も、桜光の蓄積に少しだけ作用する。


午後、遠くで「助けて!」と叫ぶ声が響く。スマホの通知に「救助必要、約五キロ先」と表示される。

「ほう、こら大事やな……桜原付、出てもらおか?」

ぽつり呟き、顔は真剣ながらも少しおどけた表情。原付を召喚すると、雨で濡れたアスファルトに反射する光の中、微かに桜模様が揺れる。


現場に到着すると、女性が立ち往生していた。

「大丈夫か?」

「はい、助けてくださって……!」

体を支え、無事に安全な場所まで導く。原付とスマホの桜エフェクトが微かに強く光るが、本人にはぼんやりとしか見えない。


夕暮れ、団地に戻ると白鳥つむぎが本を抱えて声をかける。

「福田さん、今日もお疲れさまです」

「おお、つむぎちゃん、サンキューな」

やり取りの中で、主人公の自然な親切心や善意に触れた人物たちに微かな好意が生まれ、桜光の蓄積が静かに進む。


夜、部屋で窓の外を見ながら、朋広は軽く頬を緩める。

(……ほんま、何気ない日々やけど、ええ一日やったな)

桜模様はまだ羽織や着物には現れない。だが読者には、光が確実に揺れていることがわかる――次の変身の伏線として。


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