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第十三話 ─雨上がりの街角─

朝の光がまだ柔らかく、向島の街は静かに目を覚ましていた。福田朋広は原付で買い物帰り、団地へ向かう途中。肩や腰にはまだわずかに昨日の痛みが残っているが、動きに支障はない。


「……ほんま、天気ええな。気持ちええわ」

独り言を呟きながら、雨上がりの路面をゆっくりと走る。


遠くの交差点から、女性の悲鳴が聞こえた。

「……またか、しゃあないな」

朋広はスマホに届いた通知をちらりと見る。「5km先、救助必要。桜原付召喚せよ」

――もちろん、通知の文面にツッコミを入れる余裕はあった。

「桜原付って……おいおい、召喚ってなんやねん」と、天然なノリで笑いながらも原付を進める。


現場に着くと、自転車に乗った少年が段差で転倒しそうになっていた。周囲には大人もいるが、反応が遅い。

朋広は迷わず手を差し伸べ、少年を安全に抱き上げる。


その瞬間、原付のライトやスマホ画面に桜模様の微かな光がちらりと揺れる。本人には気づかない程度。だが読者には「蓄積される力」の存在が伝わる。


現場を整理していると、通りすがりの大学生・水科澄(23)が自然に声をかける。

「大丈夫でしたか? 見ていて、安心しました」

朋広は微笑みながら、「せやな、無事でよかったわ」と答える。純粋に助けた相手を見て安心するだけで、核や装具の存在には全く気づかない。


街角を進むと、またもや桔梗が店先で手を振る。さりげない視線のやり取りで桜光がわずかに強まる。本人には無自覚、読者にのみ効果が見える演出。


帰宅時、団地の廊下で高瀬みのりと軽く会話。

「福田はん、今日も忙しそうですね」

「おお、みのりちゃん。ちょっとな。でも、ええ感じやったわ」


部屋に戻ると、原付のミラーに光る桜模様が一層はっきりと見える。

「……何や、光ってるんか?」

本人はぼんやりと見るだけ。桜光はまだ小さく、変身には至らない。しかし確実に力は蓄積され、読者には「次の変化の兆し」として示される。


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