第十一話 ─小さな光、広がる想いー
朝の光が差し込む向島の団地。福田朋広はまだ肩や腰に鈍い痛みを感じながらも、ゆっくりと立ち上がる。
「……今日はええ天気やなぁ」と、自然に呟く。
ベランダから見下ろす路地には、雨上がりの水たまりに空の青が映る。踏み出す一歩ごとに、心が少し軽くなる感覚。昨日の事故の痛みは残るが、体が無理なく動くことに微かな喜びを覚える。
その時、通りの向こうから声がかかる。
「福田はん!」
黒髪を後ろで一つに束ねた女性、朝霧こはる(18)が駆け寄ってくる。通信制高校に通う少女で、向島では少しだけ有名な存在だ。
「おお、こはるちゃん、なんや久しぶりやな」
「そ、そんなこと言うて……昨日のこと、大丈夫ですか?」
無意識に手を差し伸べ、心配そうに見つめるその姿。朋広は自然に頷く。
「おお、ほんなら心配せんでもええわ。こうして歩けるしな」
彼女が振り返ると、遠くの公園の桜の枝に、微かに光る桜色の光が揺れていた。本人には気づかない、しかし読者には「少しずつ、桜の力が世界に反応し始めている」と伝わる瞬間。
その後、団地の通路で、迷子の子供と小さな犬が絡むトラブルが発生。朋広は自然に助けに入り、両者を安全な場所へ誘導する。
(……なんや、この体、昨日より動くな……)
無意識に人助けをするたび、桜模様の光はほんのわずかに強くなる。まだ20才姿には変身できないが、パワー蓄積の兆しが確実に現れる。
午後、向島のコンビニ前で、高瀬みのりが買い物を終えた帰り道に遭遇する。
「福田はん、今日も元気そうやね」
「おお、みのりちゃん、助けてくれるか?」
軽い冗談を交わしながら、朋広の天然さが自然に表れる。
夕方には、白鳥つむぎと桐生さくらも現れ、些細な日常のやり取りを通して、読者には「七人ハーレム要員の存在感」をほのかに匂わせる。だが、主人公はまだ誰が特別か分からないまま。
夜、自宅に戻った朋広が原付とスマホを見ると、昨日より少しだけ桜色の光が強まっている。本人には「ぼんやり光ってるな」程度しか見えないが、読者には「力が確実に蓄積されている」と分かる描写になっている。




